ポートフォリオに何を記録し、どう活用するか

本シリーズの#1 作成・保存されているデータの"たな卸し"から で書いた通り、校内で蓄積されているデータのうち、生徒の指導やその改善に活用されていないものは、集めるのを止めて無駄を減らすべきです。

その一方で、高大接続改革や新学習指導要領でポートフォリオの作成と運用が始まると、これまでレコードに残してこなかったデータも新たに取集・蓄積していく必要が生じます。

集めて残したデータをどう使うのか、目的をはっきり見極めることで、収集と蓄積が自己目的化しないようにしたいところです。


❏ ポートフォリオを作成する目的に立ち戻って

高大接続改革では、一般入試でも志望理由書や学習計画書を選考材料に含めることが大学に求められています。

志望理由や学習計画は、熱意だけを伝えてもその要件は満たしません。

それまでに取り組んできた活動やその成果の中から、適切な材料を選び出して「進路先が求める人物像にマッチするストーリー」を書き上げる必要があります。

その材料を蓄積していくのが、「ラーニング・ログ」(学習成果記録)と「プラクティス・ログ」(実践体験記録)です。


❏ 探究活動の成果と過程を進路先での学びに関連づけて

ボランティア活動や海外留学経験、取得した資格や検定を列挙するのも大事でしょうが、大学に進んでからの学びの目的と姿勢を伝えるには、探究活動に関する記録の方がはるかに大きな意味を持ちます。

成果を端的に示す出来上がった論文やプレゼンテーションは言うまでもなく、活動そのものの記録も欠かせません。

それに絡んだ大学研究室訪問の記録や各種コンテストへの参加記録や結果なども、志望理由の強さを伝える材料になります。

また、活動を振り返って、そこで自分が何を感じ、どのような課題を見つけたか、「リフレクション・ログ」(省察記録)に整理しておかなければ、志望理由の形成過程を相手に伝えきれません。


❏ ストーリーの構成要素になりえるものは欠かさず記録

どんなストーリーを構成するかは、「進路先が求める人物像」に適合させるものなので、進路希望が具体化するまで、ストーリーの構成要素として何を残しておくべきか判断がつきません。

構成要素になりえるものはすべて残しておくべきです。

後になって思い出そうとしてもきちんと復元できるものばかりではなく、エビデンスとなる資料が紛失していては手詰まりです。

その一方で、形の上だけで取り組んだ結果、中途半端に終わった活動には、如上の要件を満たすものはなさそうです。

レコードを残すことを自己目的化して、そんなものまで記録に残させても、手間と無駄が増えるばかりではないでしょうか。


❏ 探究成果に加えて、進路指導や学校行事の振り返りも

探究活動や課題研究は、評定が数字に残る各教科の学習とは違い、成果品そのもの(論文や発表会資料など)を残す必要があります。

先生からの講評や生徒同士での相互評価の結果も添えて、それらを受けての自評も書き込んでおくと、そこで見出した課題に取り組む場としての「大学での自分の学び」を描きやすくなるはずです。

紙で残しておいても保管が面倒ですし、使い勝手も今一つです。PDFなど電子データにしておくのがお奨めです。

進路行事や体験型学校行事でも、何に参加したというレコードだけでは不十分ですよね。そこでの体験を通して得た気づきや反省、将来に向けた決意なども言語化してデータに残しておきたいところです。


❏ より良い学習者になるための「学びのPDCA」

前段までは、高大接続改革を機とする大学入試への対応からデータを残す必要性を考えましたが、ポートフォリオを作成する本来の目的は、より良い学習者になるためのメタ認知の形成です。

学んだこと、気づいたことを記録し、それを振り返って次のステップを考えることは「学びのPDCAサイクル」を確立するのに不可欠です。

振り返りの中での"気づきの言語化"は省察を深めることに役立ちます。頭の中だけで反省するときより、合理的な思考もできるはずです。

他人から教えられたもの、伝えられたものは、たとえ中身を忘れてしまっても、ソースに立ち戻って学び直せますが、自分で考えて気づいたことはそうはいきません。


❏ レコードを生徒自身が入力する/書き込むことのメリット

成績データや各種調査の結果は学校が保管してくれるものと考えている生徒が多いかもしれませんが、記録と管理を他人任せにしては「自分ごと」として向き合う機会になりません。

eポートフォリオや学習・進路カルテ/ファイリング形式に改めた進路の手引きに綴じ込むワークシートを用意して、データの入力/記入は生徒自ら行わせることが「教育的」ではないでしょうか。

メモを取らせる指導手帳を用いたタスク管理やスケジューリングとも通底しますが、「やるべきこと」「やったこと」「やって感じたこと」を文字に起こしてみることで自ら気づくことも多いはずです。

蛇足ながら、行事や活動への取り組み方についても、自己採点を行った上でリフレクションをログに残させれば、別稿にも書いたように、指導の効果測定を行うときに「集計を切り分けるパラメータ」に利用することもできます。

その4に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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