校内に蓄積されてきたデータを生徒IDで関連付ける

校内のデータは様々なところに散在しています。模試などの成績に加えて、生徒が自ら入力したものもあれば、アンケート調査の結果など特定の分掌・組織が作成し所持してきたデータもあります。

これらをeポートフォリオなどのひとつのシステムに組み込もうとすると膨大な手間が掛かりますし、すでに組み上がったデータベースシステムの仕様を後で変更しようとすると改修には大きなコストが生じます。

新たな調査を行いデータを管理する必要が生じたとき、それに対応していないシステムに組み入れることに拘るあまり、業務が滞り身動きが取れなくなってしまうのでは、本末転倒です。

教育活動の創造性と円滑な業務進行のためにも、データの作り方と蓄積の方法には柔軟な発想と姿勢をもって取り組みたいものです。


❏ 無理なデータの一元化より、必要に応じた組み合わせ

eポートフォリオの導入で多くの情報を一括で管理できるようになりますが、アンケートなどOMRで読み取ったデータまでやみくもにポートフォリオ内にインポートしては仕事が増えるばかりです。

要は、必要なデータがきちんと保管され、必要に応じて組み合わせることができれば良いはずです。

ポートフォリオの仕様やデータベース構造によっては、インポートそのものができないこともあるでしょうし、生徒がアクセスできるデータベース内に置くのが好ましくないデータもあるはずです。

個々のデータの使途や内容に見合った方法で保管した上で、教育活動の必要に応じて抽出と関連付けができる仕組みを考えていきましょう。


❏ データの関連付けに欠かせないのが生徒ID

必要に応じてデータを組み合わせるときに欠かせないのが、ルックアップのキーとなるデータです。

学校事務で通常使われているクラスと出席番号では、年度が切り替わったり、入学年度を跨ごうとするだけで問題が生じます。

入学から卒業まで変わらない、過年度生を含めてもユニーク(=他と重複しない)なIDを与えておくことが大前提です。

ID生成の仕組みは様々ですが、ある学校では、入学年度の末尾2桁、初年度在籍クラス2桁、同出席番号2桁にチェックデジット1桁を加えた7桁のIDを入学時に与えて管理していました。

ちなみに、チェックデジットの生成にはモジュラス11などを用います。


❏ これまでに蓄積したデータ資産もきちんと使う

これまでも校内に蓄積してきた様々なデータに、生徒IDを加えるだけなので、これまでに蓄積してきたデータを作り直す必要もありません。

従来の使い方も継続しながら、新たな必要に応じたデータの活用もできるようになります。

日頃の進路指導・学習指導でも、Excelを使って異なるブックやシートに収納されたデータをVLOOKUP関数で引っ張ってくるシーンは多いと思います。

わざわざAccessなどのリレーショナル型のデータベースソフトを使わずとも、日頃の業務でも使い慣れているExcelでも、校務の必要性を満たすことは十分に可能です。

VBAでマクロが組める先生やサポートスタッフがいれば、処理の自動化もできますし、少し凝れば使いやすいインターフェイスが実装でき、ソフトの知識が不足する先生でも使いこなせるようになります。


❏ 各組織に閉じていた資産を結び付けることで

いつでもアクセスできる場所にまとめておき必要に応じて活用したいデータは、模試や考査の成績だけではありません。

進路希望や家庭学習時間の調査、オープンキャンパスの訪問先、補習・講習の受講歴、校外での活動状況、生徒会や学校行事での役員歴、部活動の所属先など、多岐に亘るデータがその対象です。

これまでは、分掌・学年・教科といった組織ごとに独自のフォーマットで保存してきたものを、組織を跨いで活用することが、生徒一人ひとりを多角的に把握することに繋がるのではないでしょうか。

現状において、ある組織(分掌・学年・教科)が作成・保管しているデータを他の組織が利用していないようであれば、このあたりの整備に遅れが生じているのかもしれません。

先生方の仕事を増やすことが目的ではありません。いかに既存の資源を追加の手間を小さく上手に使っていくかに知恵を使いましょう。


❏ 技術の進歩で手間がかからなくなるまでの対処

技術の進歩が現状を超えて大きく進化していけば、AI技術の利用によりユーザー側(教員や生徒)がいちいちデータ管理をしなくても良い時代が来るかもしれませんが、今日明日の話ではありません。

これから先は、データを関連づける範囲を校務の境界を越えて拡張しようとするケースも多くなると予想されますので、情報の活用スキルを校内にどうやって確保するかは大きな課題です。

 ■ ご参考記事:
向こう10年くらいを視野に、「目指すべき教育」「教育を取り巻く環境の変化」を見越した上で、データの管理法・使用法とそれを実現するためのスキルの形成を、特定の教員に仕事が集中しない形でどう実現するか、しっかりと考えていくべき局面だと思います。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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