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zoom RSS 校種間連携でできること(その5)

<<   作成日時 : 2014/05/20 07:32   >>

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高大連携、中高連携などの異校種間連携について考えてきたこのシリーズも最終回です。今回ご紹介するのは「考査問題の作成(=到達目標の設定)における協働」 と「数年後の状態と照らした分析(コホート研究)」 です。どちらも少々負担が大きい方法ですが、指導主眼を連続性をもって正しく配列するという本来の目的に直接近づける上で「切り札」 となる取り組みであると考えます。


❏ 考査問題の作成(=到達目標の設定)における協働

一つ目は、小中学校のテスト問題作りに高校の先生も参加するというものです。定常的に行うのはさすがに無理がありますが、アドホックなイベントとしては実施の可能性はゼロではないはずです。

テスト問題作りのスタートは、測定項目の配置などの「考査問題仕様」 の作成です。どんな学力をどんなバランスで測るのかを議論する中で、どこに重点を置き、どう教えてほしいかを伝えることもできます。

先に述べた通り、何を測るかは何を教えるかと同義です。テスト問題が好ましい設計を持つことは、日ごろの指導における主眼の置き所を最適化することにほかなりません。採点基準も重要な意味を持ちます。

それまでに教えた内容をもとに、その成果をどう測ろうかという視点だけで作られた問題と、次の段階に進んだ後の学習での前提が正しく作られているかどうかを見ようとする問題とでは、問い方、材料、解答方式、採点基準など様々な部分で食い違いがあります。

前者はパフォーマンスモデルでの学習観を、後者はコンピテンシーモデルの学習観を反映したものと言えます。後者タイプへの転換はPISA以降、大きな課題の一つです。

前述の通り、生徒は段階的に学びを重ね成長していきます。校種間で学びの接合がうまくいくことは何よりも生徒の利益になることではないでしょうか。


❏ 数年後の状態と照らした分析(コホート研究)

高校からの求めをそのまま伝えても、小中学校の先生がそのまま得心してくださるとは限りません。

どのような問いに正しい解を導けた生徒が上級学校での学業で高いパフォーマンスを示しているかをデータで示すことが説得の材料になります。

生徒一人ひとりを追跡する仕組みを作り、ある設問への正誤や大問の得点率と、上級学校での成績や評定との相関を取るなどの方法が整備されていることが前提条件となりそうです。

同様に、小中学校での学習実態調査などの結果も、その時点での学力と結びつけて解析するだけでなく、数年後の状態と照らした分析(コホート研究)が必要と思われます。

ノートの取り方や予習復習の方法、わからないことがあったときの行動などが、先行きの学習にどのような影響を及ぼすかがわかっていれば、小中学校の先生も自信をもって生徒の指導に当たれます。


❏ キャリア教育や探求型学習の成果についても

また、職場体験やフィールドワークなどで、どんな取り組みをし、どんな気づきを得たかによって、先行きの学習活動が影響を受けているかもしれません。

進路意識の形成状況を学年を追って継続的に調査しておけば、ベースになるデータも取れます。

キャリア教育や進路指導における主要行事に参加した生徒からとったアンケートやリフレクションシートも重要なデータになり得ます。

期待した成果を得られた生徒、参加して良かったとの捉え方をした生徒とそれ以外の生徒とで、事後の行動にどのような相違が生じるかを明らかにすることもできそうです。

生徒が提出した感想文やレポートで好適な記述やキーワードの出現頻度をカウントするだけでも、生徒の成長や意識の変化を探る資料になり得ます。

小中校連携など、校種間での教員のコミュニケーションが活発になりさえすれば、こうした観点で生徒の学びを継続的の見守っていく態勢を整えることができるのではないでしょうか。

小学校から高校まで、あるいは大学までを揃えて設置している学校法人なら、十分に可能性がありそうです。高校と近隣の中学校、小学校が組んでも面白いことができるかも。



様々な可能性があるこれらの取り組みですが、拙速に実施に進んでは、過重な負担が発生するとともに、利害の不一致などで企画そのものが破たんすることも容易に想像できます。

最初の一歩は、異校種の教科書、関連の深い科目の教科書に目を通して、担当している科目の内容が、校種を跨いだ生徒の学び全体の中でどんな位置を占めるか、すべての立場にある先生方がきちんと把握するところでしょうか。

その中で意義を見出してから、大きな計画を立てることに進んでも十分かと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一



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