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zoom RSS 卒業生の成果展示が、在校生の学びを刺激

<<   作成日時 : 2014/05/21 18:55   >>

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東京都の進学指導重点校の一つである立川高校をお訪ねしてきました。先生方の授業実践からも生徒の皆さんの様子からも様々なヒントと刺激をいただきましたが、強く印象に残ったのは理科教室前の廊下に掲示されていた「課題学習の成果展示」です。

もちろん、その出来栄えや完成度の高さにも目を引かれましたが、最も着目すべきと感じたのは、過年度卒業生の成果が、在校生のものと並んで数年前までさかのぼって掲示に残されていたことです。


言うまでもありませんが、外すのを忘れているのではありません。残すべきものを意図的に選んで掲示がレイアウトされています。

生徒の学びは、教室の中で教師から与えられるものだけではありません。

生徒が教室の内外で相互に刺激し合う中で得るものが非常に大きな意味を持ちます。優れた学びの場ほど後者が大きな比重を占めると言えます。


教師が示した模範解答を覚えるだけの場合と、同級生が導いた解を土台に自分の考えを新たに作り、討論の中で新たな視点を得る場合とでは、「学びの総量」も「学びの質」も格段に違うのは容易に想像できるところだと思います。

課題研究の成果掲示にも、これと同じ「相互刺激(啓発)」 という機能が期待できるのではないでしょうか。

同級生の優れた発表に触れれば「よし自分も」と発奮が促されますが、競うことだけがポイントではありません。

同じ学校に通う、自分とそう変わらないはずの仲間が成し得たものに触れることは、「自分にも到達できる領域、自分の可能性」に対するイメージを大きく広げることにつながります。


出来上がった、完成度の高いものだけを見せられては、自分の手には届かない「遠い」ものと感じてしまうかもしれませんが、掲示の中には、実験がうまくいかなかったことを素直に伝えるもの、次へのリベンジを誓うものも含まれています。

理科の先生方がレポートを書かせる際になさった指導の賜物と拝察します。

そうしたものを目にする中で、「失敗してもよい」「失敗から学び、次の手立てを考えられれば良い」というメッセージを在校生は受け取ってくれているのではないでしょうか。


課題研究や論文など、生徒の成果を冊子にまとめるのは予算執行の都合もあり、どうしても年度ごとに学年単位で行われます。

図書室などに過年度分の冊子を並べて閲覧できるようにしておくことは可能ですが、典型的なPULL型の情報入手であり、きっかけや必要のある場合を除けば、在校生がそれらを手に取ることは稀です。

これに対して、校内の掲示に残す方法であれば、年度をまたいだ世代の成果を並べることも簡単ですし、何よりも日々の学校生活を送る中で自然に目に入ります。


また、同一学年だけで閉じて発表までの一連の活動が行われる場合には、致命的な問題があります。

発表が行われたということは、生徒の活動は既に次の段階に進んでいるということであり、もう一度同じ課題に挑む機会は用意されていません。

同級生の優れた成果に触れても、自分なりの工夫を加えて再度チャレンジするのは忙しい学校生活の中では難しいはずです。

ここで活きるのが「先輩の成果を通じた間接先行体験」です。


学校は様々な世代が脈々と時を引き継いで作られるものです。

単一年度に閉じて行うよりも、複数の年代を跨いだほうが、優れた成果も教訓にあふれる成果を抽出・蓄積するうえでもはるかに容易です。

3年分を集めれば3倍の、5年分なら5倍の材料から、在校生に触れさせるべき成果・足跡を見つけることができるのですから、その利点を生かさないのではもったいないのではないでしょうか。

毎年、同じスタートラインから各学年が進めていくのでなく、先輩たちの足跡を知ったうえでその先に進むという発想も大切です。


学問の世界も、社会の営みも、すべては先人の業績に乗っかりその先に進むことで行われています。

学校の中でもそうした経験を用意するべきです。

大学生の卒論を見ても、先行論文もろくに読まないで書いたようなものが多いのは、こうした経験の不足も一つの原因だと思います。

「過去の失敗を間接的に経験することで、より適切な方法や新しい考え方に至ること」 の大切さを、高校のうちから学ばせるようにしたいものです。


課題研究のテーマを決めるときも、先輩たちの成果展示は大いにヒントになるはずです。

先輩たちの失敗を糧に、先輩に代わってリベンジを果たすこともできます。

こうした情報を隠すことは「同じ轍」 を繰り返すだけのことにもなりかねません。理科の課題学習に限らず、総合的な学習、キャリア教育の成果にも同じ手法が取れそうです。


さらに一歩進めてみると、もっと面白いこともできそうです。

進路指導などの一環でOB講演会や卒業生との座談会などは、多くの学校で行われていますが、課題研究の場でも同じような場を持つことで得られる大きな成果を想像します。

掲示を通じて先輩たちの様々な成果に触れておき、その上で実体験を先行した先輩から「生の声」を対面で聞いたら、これから自分が取り組むことへのイメージも大きく広がるように感じます。

想像してみただけでわくわくするものを感じます。

今後、各地の学校を巡る中で、似たような取り組みやさらに進んだ取り組みがないか、意識的に探してみたいと思った一日でした。新しい発見がありしだい、続報をお届けしたいと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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