学校評価アンケートをどう活用するか(その4)

学校に向けられた期待がどこに向いているかは、ステークホルダーの声に耳を傾けてみる以外に知るすべがありません。生徒、保護者、地域などの意見を効率よく、広く募れるのは「学校評価アンケート」です。

学校が目指すところにすべてのステークホルダーの理解と共感が得られているか、しっかり耳を傾ける年一度の貴重な機会です。回答率も高く保たなければ、漏れる意見が増えるばかりです。

また、回答を集計してみると、クラス間、学年間、年度間でも差があるのが普通です。高い評価を得ていたところには倣うべき実践があるはずであり、それらを抽出・共有する好機を逃さないようにしましょう。

2014/07/16 公開の記事をアップデートしました。

❏ 立場の違いによる評価の違いをきちんと把握

学校が力を入れて取り組んでいることと、生徒や保護者、地域の方々が期待していることの間にずれが生じるのは珍しいことではありません。

取り組みの成果にしても、学校は十分と考えているのに、他のステークホルダーがそう評価していないこともあれば、逆のケースもあります。

校内においても、分掌などの立場の違いにより、先生方の「学校の現状に対する捉え方」が異なっているのもしばしばです。

こうしたギャップに気づかずにいては、学校が目指す教育への理解者や協力者が増えるどころか、不信感が芽生えたり、対立を生んでしまったりすることすら懸念されます。

すべての立場の声を訊き、きちんと応える/対話を通じて正しい相互理解を作り上げるための起点として学校評価アンケートを捉えましょう。


❏ 独りよがりにならず、自校の教育を客観化

例えば、学校の教育活動や生徒が学ぶ環境について「今後の充実が必要なもの」を生徒、保護者、教職員に訊いてみると、回答の分布が予想と大きく異なることが少なくありません。

  1. 学校側は、取り組みは十分で環境も整っていると考えていたのに、生徒や保護者は想定を大きく超える不満を抱いていた。

  2. 多くの生徒が行事や部活の充実を期待して入学していると思い込んでいたが、その割合は予想を大きく下回っていた。

  3. 生活指導や進路指導では方針をしっかり伝えて指導に臨んだつもりなのに、生徒や保護者には意図がほとんど伝わっていなかった。

これらは学校評価アンケートのデータを解析して判明した事柄であり、いずれも訊いてみないことにはわからなかったことです。


❏ 認識のかい離を知り、対話を重ねて解消を図る

学校の現状に対し、生徒が不満を感じ、保護者が拡充を期待しているとしたら、「何らか」の対応が必要であるのは言うまでもありません。

教育目標とも合致し、他の教育活動とも競合しない(整合性を保てる)要望であれば、実現を図るべく、リソースを割り当て、計画を起こして実行するのみですが、そうしたケースばかりではありません。

要望に応えることが学校全体の教育目標の達成を遠ざけかねないケースでは、「なぜ現状のようになっているか」を合理的に説明し、納得してもらうように努める必要があります。

要望自体は至極尤もなものでありながら、実現するのに物理的な条件がどうしても揃わないようなら、代替案を示したり、別の解決法を一緒に考えてもらったり、というアプローチもあるはずです。

寄せられた意見に、言葉や行動できちんと応えることは「ステークホルダーとの双方向のコミュニケーション」を図ることにほかなりません。

学校の教育活動に理解と共感が得られると同時に、教育活動そのものも改善されますし、「学校は届けた声にきちんと向き合ってくれる」との認識が広く持たれれば、学校作りへの一層の協力も期待できます。


❏ 見えている風景が違っては、指導の目線も揃わない

冒頭にも書きましたが、分掌などの「立場の違い」で、個々の教育活動への評価や価値の見出し方は教職員間でも異なっているのが普通です。

教職員の回答を、分掌などの属性でクロス集計してみると、進路指導部では大きな課題意識を抱えているのに、教務部や生徒部の先生はあまり問題を感じていないといったケースなどがしばしば見られます。

特色ある教育活動への評価には、担当する先生とそれ以外の先生で受け止め方がまったく違うことも少なくありません。意欲的に取り組まないと活動の価値を正しく理解できないということもあるでしょうし、逆に思い入れが強すぎて価値を大きく見込み過ぎていることもあり得ます。

各学年の指導には、それぞれの立場の先生方が関わりますが、如上の意識ギャップを解消しないまま/存在していることにすら気づかないまま指導場面に臨んでは、「目線合わせができていない」ことになります。

学校評価アンケートのデータを使って、どこに改善課題を見出しているか互いに知ることは、学校の現状や自分が関わっていることを多角的・俯瞰的に捉え直すことに繋がるはずです。


❏ 好適実践の所在を特定し、ノウハウを共有する

校内に既に存在している「好適実践」の所在も、学校評価アンケートの集計結果から特定する/あたりをつけることができます。

このメリットを十分に活用するかどうかは、教育改善・学校改革を推し進めるときのスピードと確実性を大きく変えます。

一つの目標に向かってそれぞれの先生が最善と思う方法で取り組んだとしても、着眼点の違いや指導法の巧拙によって得られる効果はそれぞれ異なり、それがクラスや学年の集計値に現れます。

他と比べて高い評価を得たことには、それなりの理由があるはずです。優良実践の所在を特定して、そこでの取り組みを共有しましょう。初期状態で存在していた、指導知見におけるギャップの解消が図れます。

共有したものをベースに、先生方の協働でさらにブラッシュアップを図っていけば、校内に存在する指導知見はさらに良いものになります。

効果的なやり方を知れば、それまでうまくいかない/遅れをとったと感じることがあった先生方も、「なるほど、ひとつ試してみるか」と意欲を新たにできるのではないでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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