学校評価アンケートをどう活用するか(その1)

学校評価アンケートは、生徒、保護者、教職員、地域といったステークホルダーから教育活動への理解と共感・支持が得られているかどうかを確かめるためのものであり、その機能をほかで代替するのは困難です。

個々の教育活動の成果を検証する方法はそれぞれですが、「学校が取り組んでいることが正しく理解され、共感を得ているかどうか」は相手に訊いてみなければわかりません。

どれほど効果的な取り組みであっても、意図するところが理解されていなければ、正しい評価も得られませんし、誤解すら生じ得ます。

現場の先生方は十分な成果を挙げていると評価していても、生徒や保護者、あるいは地域が不満を感じていることもあります。そのギャップに気づかないまま教育活動を推し進めてはリスクを抱えるばかりです。

2014/07/11 公開の記事をアップデートしました。

❏ 教育活動に込めた意図は、理解と共感を得ているか

生活・学習・進路の各領域での指導には、それぞれに込めた意図があるはずですが、生徒、保護者に正しく理解されているかどうかは定期的に訊いて確かめてみる必要があります。

  • 学校の教育目標はわかりやすく説明されている
  • 生徒指導の方針は明確で、納得のいくものだ
  • 学校行事に込められた教育意図は十分に理解できる

といった質問に答えてもらったとしたら、肯定的な回答はどのくらいの割合になるでしょうか。先生方の事前の予測が「肯定率9割前後」だったのに、蓋を開けてみたら7割にも届かないこともありました。

校内(教職員間)での意思共有は十分と想像していたのに、同じ質問をしてみたら4割近くの教員の回答が否定的だったケースもあります。


❏ 意図の共有を改めて図ったら、その効果も検証

目的とするところをしっかり理解してもらうことは、その実現を目指して取り組んでいる個々の指導に対する評価も改善します。

教育目標や指導方針をちゃんと伝えることが大切です。

意図の理解が不十分であることがアンケートの結果で判明したら、より良く理解してもらうための具体策を行動に起こす必要があります。

指導の方針を見直し、指導に当たる先生方の目線合わせを行い、意図を丁寧に伝え直すことになりますが、これもやりっぱなしでは改善成果を挙げたかどうかわかりません。

伝える内容や伝え方の改善を図ったら、きちんと伝わったのか、それ以前の集計値と比較を行い、改善成果を確かめる必要があるはずです。


❏ それぞれの立場での捉え方/評価の違いを確かめる

様々な指導方針や教育意図をもって当たっている教育活動や指導の成果についても、生徒や保護者と先生方の間に評価の違いが生じていないか定期的に確かめる必要があろうかと思います。

特色ある教育活動などについても、意欲的に取り組めているか/充足感を得て自分の成長を実感できているかを生徒に訊いてみたら、先生方の見立てとは違う結果が出るかもしれません。

規律ある生活やマナーを守った行動などでも、先生方は「改めるべき問題が多い」と思っていても、生徒や保護者が違う捉え方をしていることがあります。それを見落としては「独り相撲」にならないでしょうか。

同じものを同じ主観でみていないところには、共感も生まれず、どこかに不満がくすぶります。先生方の指導や生徒の行動について、教職員、生徒、保護者がそれぞれどう感じているのか確かめることは、すべての当事者が納得し、満足できる教育活動の実現に繋がっていくはずです。

評価する立場による違いが生じていないかを把握するには、アンケートが最も手軽で効果的な方法であるのは申し上げるまでもありません。


❏ 生活・学習・進路の各領域での行動や姿勢を質す

様々な場面での指導目標には、テストなどで成果を検証できるものもありますが、それ以外のものにも評価の方法を確立しないと、達成検証ができず、その結果に基づく改善に向けた課題形成もできません。

生活・学習・進路の各領域での行動や姿勢について、生徒の自己認識や保護者の目での評価をアンケートを通じて確かめていきましょう。

  • 日々の生活を自律的・計画的に送れるようになった
  • 課題意識をもって学びに取り組むようになった
  • 自分の未来を拓くために今何をすべきか分かるようになった

こうした問いに「そう思う~そう思わない」などで答えてもらえば、回答の分布の変化から生徒側での意識変化の様子が把握できます。

ここで得られたデータと、先生方がルーブリック(観点別の段階的な評価規準)などを用いた評価結果を突き合わせてみると、双方のズレからこれまでの指導のあり方や評価方法の見直しができることもあります。


❏ 集計結果で改善成果の確認&優良実践の共有

下図は、ある学校でのクラス別集計値(如上の質問の3番目)の分布の変化を箱ひげ図で追跡したものです。(データが古くてすみません)

画像
グラフを見れば、回を重ねるごとに改善が進んだ様子は一目瞭然です。

アンケートに答えることで、生徒に振り返りの機会を与えたことが、改善の一因になった部分(「質す」は「正す」に通じます)はあっても、指導に当たる先生方の具体的な行動がなければ、これだけの改善が積みあがるわけもありません。

この学校では、毎回の集計結果で箱ひげ図を描き、上側のひげに含まれる「高い評価を得たクラス」を特定し、そこでの実践を学年内外で共有した上で、それをベースに先生方の協働で指導法にブラッシュアップを図り続けたことが、この「成果」に繋がりました。


❏ 教育の成果を正しく伝え、理解者と協力者を増やす

このようなデータを用意できれば、学校が取り組んでいることの成果を校内外に示すことができます。

不断の努力でより良い教育を実現できている姿に、各ステークホルダーからの好意的な評価も得られ、理解者や協力者も増えていきます。

以前の記事「学校広報の充実に"校内記者"」でも書いたことですが、施設の更新や新しいシステムの導入などの場合に比べ、教育活動の成果や進捗を伝えるのは、多くの学校が苦手にしているように感じます。

教育活動の改善を図ってから、進学実績などの「目に見える効果」が数字に現れるのには、当然のことながら一定のタイムラグが生じます。

それを待たず、学校の取り組みに理解を得て、目指す学校像への共感をもって学びのコミュニティに参加してもらうには、今まさに進行している取り組みとその成果をエビデンスを持って示すことが重要です。

その2に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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