5教科7科目に挑ませることの意味

面白いと思ったものを追究する先には、実現したいことが見えてきて、その中にやがて進路希望が作られて行きます。その一方で、興味を持てないものが増えるにしたがって選択の幅は小さくなり、生徒が自らの資質や志向に合致する将来に出会う可能性が損なわれていきます。


❏ 高校は、全教科を体系的に学べる最後の期間

進路学習や新聞・テレビの報道などを通じても、また高校を卒業した後でも、自らの進路を考えるきっかけとなる情報との出会う機会は、様々な形で訪れます。

しかしながら、人の脳は、知っていることしか認識しません。

そのような情報に触れても、それまでの学びがカバーしていない(=「認知の網」が形成されていない)領域では、情報そのものが素通りしてしまいます。

高校までの教科学習指導は、すべての領域を体系的に(加えて、一定の強制力を持って)学ばせられる最後の機会です。

様々な情報に敏感に反応し、受け取った情報に基づいて正しい選択ができる土台を作る、すなわち「認知の網」をしっかりと張らせておくのは、高校までの教科学習指導に期待される大きな役割の一つです。


❏ 国公立大の受験を前提に科目を絞らせない

「認知の網」をこれまで以上に広く張らせるには、国公立大学への進路希望を抱かせて、センター試験での5教科7科目の受験を想定した学びに挑ませ続けることが有効な方策の一つです。

最終的に国公立大学への合格者を増やしましょう、という話ではありません。受験科目を早いうちから絞らせないことが、ここで目指しているところです。

進路希望を堅持する生徒たちが同じ目標に向けて頑張る教室は、相互の刺激が生徒の学びに大きな支えになります。

教科担当の先生だけでなく、学年団として「志望を維持させる」という意図を共有しておくことが肝要ではないでしょうか。


❏ 受験を意識させることは真剣さを引き出す手段

受験を意識して臨む勉強は、自ずと生徒の側での真剣な取り組みを引き出しますし、「問われ方/使う場面」を意識した学習は学力向上感も得やすく、結果的に興味関心の喚起にも繋がります。

センター試験で5教科以上を受験するつもりでいる生徒の割合を高くキープしておけば、センター試験の過去問を授業内に取り入れたときの反応も良くなります。

これは、早いうちから受験対策に特化することを意味しませんが、実現したいと思える自らの進路希望との繋がりを感じられた方が、意欲も取り組みも良くなり、より大きな成果が期待できるのも事実です。

目標とする大学群の出題例を利用しながら「獲得した知識を活用する機会」を整えることは、学習目標のより明確な認知、より強固な達成感に繋がります。


❏ 過去問への挑戦は受験期を待たずに

改めて申し上げるまでもありませんが、センター試験の受験科目には高校1年で履修する科目も少なくありません。

授業内で、実際のセンター試験での出題例を見せ、生徒自らが正解を導けるような授業設計がなされることで、「授業をきちんと受けていれば何とかなりそうだ」という感覚を持たせるようにしましょう。

授業態度の更なる改善や、積極的な学びの姿勢を引き出すという「副産物」も期待できますが、それ以上に大切なのは、「一つ先、2つ先に進んだときの学びをイメージさせる」ことによる効果です。

言うまでもありませんが、入試問題を授業の教材に使うときにで書いた通り、目標大学群の出題研究の充実度に指導の成否が左右されます。


 ■ご参考記事: 
教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場
認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ぶ
教科固有の知識・技能を学ぶ中で


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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