わかりやすい話し方(その4)

生徒の理解度に合わせようとしているのか、ゆっくり丁寧にという方向に心を砕いている授業も見られますが、その思惑とは裏腹に、やることがなくなって生徒が集中を欠いたり、教室がざわめき出したりすることも少なくありません。

ざわめきの中で話をしても届きようがありませんし、学ぶ態勢を解いてしまっているときに大事な情報を与えても受け取ってくれません。

ゆっくり話すことで理解を高めようとする方策だけでは、「集中して先生の話を聞けない」「大事なところを聞き落してしまう」 というリスクを招いてしまいます。


❏ テンポよく進めることが、集中力を維持させる

生徒でなくとも、やるべきことがなければ、意識はほかに向かいます。

生徒が集中していない様子が見られると、つい注意したくなりますが、それでは、せっかくそこまで意欲的に学んでいた生徒の気持ちに水を差します。

注意しなくて済む状態に教室を保つことに知恵を絞りましょう。

話し方とは直接関係ないように思われるかもしれませんが、「できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない」 ことが、生徒の集中を高く維持させ、伝えたことを着実に拾わせる(=話を分かりやすくする) ことに繋がります。

テンポよく活動を切り替えることで、「やることをなくさせない」 ことが何より大切です。却って集中も高まり、理解力を最大限に発揮させます。

聞いている場面が続いたら、話し合いをさせたり、考えたことを文字に起こさせたりすることで、落ちかけた集中力をリフレッシュさせることができます。途中で小テストを挟む という手だってあります。

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これ以外にも、生徒がやるべきことを失って「待つだけの時間」 を過ごす局面もありますよね。他の生徒が指名されてまごついているときや、先生が一方的に説明をしているときなどです。


❏ 指名する生徒は、席順などによらず観察で決める

前者の場合、指名した生徒の発言を待っている間、他の生徒はさしあたってやることがありません。

次の問題での指名に備えて、今、扱おうとしていることから意識が離れるか、居眠りや手いたずらが始まります。

そんなときに大事な情報を前触れなく口頭で伝えられても、受け止めることはできませんよね。

生徒を指名するときは、机間指導や課題点検で予め状況をつかんでおくことが重要です。

不完全ながら準備ができている生徒を選んで指名すれば、その発言をステップとして、学びを展開していくことができるはずです。

 ■ 生徒を指名して発言させるとき


❏ 頻繁な問い掛けで、「問われる態勢」を解かせない

後者の「先生が一方的に説明しているとき」 も、少なからず見かける光景です。

既に理解できて先に進める状態なのにGOサインが出ないので仕方なく待っていたら、やがて退屈しだして、学びに向かう姿勢(=情報を受け取る構え)を解いてしまいます。

絶え間なく問い掛けを重ねることで、生徒に「問われる態勢」 を解かせないようにしましょう。

問い掛けは、「生徒が理解を共有していること」 を前提にして行うのが鉄則。

ほかの生徒の発言をベースに理解や発想の拡充を図ろうとする場面では、発言のエッセンスを板書したり、他の生徒に言い直させたりすることで、共通理解という前提を整えてから行うことが大切です。

聞き取れていないことを前提にされても、混乱するばかりで、わかりやすいとは思えるはずもありません。


❏ 聞き手の理解力を引き出すことで、わかりやすさを高める

考えなければならない問題、集めなければならない情報を意識してこそ、注意深く話に耳を傾けますし、断片的な情報を整理してまとまった概念に編もうという姿勢も生まれるはずです。

「理解しよう」「情報を拾い上げよう」 とする生徒の意識と姿勢を高めることは、話し手の発話技術以上に、話の分かりやすさを左右します。


❏ 話して聞かせるばかりでなく、読ませて理解させる場面も

また、話を聞かせるよりも、生徒自身に教科書や副教材を読ませた方が、わかりやすいこともあります。

 ■ 教科書をきちんと読ませる

文字ならば必要に応じて返り読みや書き込みもできますよね。また、読むスピードは自分で調整できますが、聞く速さは相手任せです。

話して理解させることを効率で勝る手段(ここでは「読ませる」)があるなら、それを積極的に活用したいものです。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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