分業で行う出題研究のフィルタリング(その2)

生徒が進路希望を抱く先の大学群から引いた出題例を授業内外の課題とすることには、前稿 で書いたように様々な効果が期待できますが、ただ持ち込んでも弊害ばかりが大きくなるリスクもあります。課題として教室に持ち込む前に、綿密な出題研究と授業準備とが必要です。


❏ 課題を与える以上、達成させるのが責任

単元が合っているし、希望する生徒も多い大学の出題だからといって意図的な準備/授業設計なしに生徒に挑ませるのはやめましょう。

問題が求めているものをしっかり把握しないまま教科書を一通り教えただけでは、課題に正解を導くのに必要な知識、発想、思考などが揃わず、課題の達成可能性が担保できないからです。

課題は与えた以上、達成させるのが教える側の責任です。

真面目に授業を聞いて、言われるがままに問題/課題に挑んだのに、「解けない」 という事実を突きつけられるばかりでは、生徒としても面白くありませんし、やる気も失いかねません。


❏ 問題を解いておかないと授業の設計はできない

教科書に記載されているものと、志望校群の出題が要求しているものとは、互いにはみ出す部分を持ちます。

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ベン図にある赤い円と青い円の差分(A~C)を把握したうえで、はみだしをどうやって解消するかが、授業設計上の重要なポイントです。

Aの「知識や処理ルーチン」 であれば、教える、調べさせる、練習させるといった学習活動で埋めることができますが、Bの「着眼点、選択の根拠、表現」 は教えるというアプローチでは身につきそうもありません。

Cの「情報の整理、評価、加工」 についても、先生が肩代わりして事前に済ませてしまっては、生徒が方法を学ぶ機会を奪ってしまいますよね。


❏ 補うべき学力のタイプにより、選ぶべき学習活動が違う

必要な知識を与えるにしても、一から十まで先生が教えるのでは、時間がいくらあっても足りません。

教科書をきちんと読ませることや、参照型教材を徹底して使い倒すことで、必要な知識・情報を生徒自身に獲得させることも学ばせたいところです。

着眼点や思考法、表現力は、先生からの問い掛けや生徒同士のディスカッションなどの「対話的な学び」 の中で、生徒が自ら気づいて行かないことには、いくら教えても獲得は進みません。

情報の整理や評価、加工についても、問いかけながら生徒自身がその工程を経験しないことには、その方法を学ばせることは難しい…。職員室で先生が予め整理してきた結果だけ伝えても、足りないものが大きく残ります。


❏ 出題研究はどのタイミングで行うか

授業のデザイン/設計の前には、年間を通じた指導計画があり、その立案の土台は出題研究にあります。

ということは、次の授業を控えて、その単元を扱った問題を探し、その出題内容を点線するのでは、後手を踏んでいるということになります。

その場で焦って探し始めたところで、良問に行き当たる保証はありません。

また、その日の授業だけで、カバーできるもの/生徒に体験させることができるものは限られます。

年間の指導計画を作るときに、「この部分は、あの単元を扱うときに」、「これはこの時期に集中的に」 など先を見越した指導をイメージし、ひとつひとつの指導の成果を重ねていく必要があります。

入試が行われたらできるだけ早く出題に目を通すのが理想的。もし、良問を見つけたら、その場で指導カレンダーの上に配置してしまえば、計画的な指導を無理なく重ねることができるはずです。


❏ 進路希望に照らし、効率的に出題研究を進める

いざ過去問に挑もうとしたときに、補っていない「はみだし(A~C)」 が大きくなり過ぎては手遅れです。

受験直前期になり、生徒が過去問を解いて質問や添削を頼みにやってきたときに初めて、「えっ、こんな問い方をするんだ?」 という事態はなんとしても避けたいところですよね。

すべての入試問題に目を通せれば理想的かもしれませんが、多忙の中で現実的ではありません。模試で生徒が書いた志望校や、進路希望調査の結果に照らして、優先順位を決めていくことも重要です。

生徒の志望を知れば、無関心ではいられませんので、出題研究にも力が入るというものです。進路指導部と各教科が連携し、情報の共有を進めておく必要はこんなところからも生じます。

その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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