分業で行う出題研究のフィルタリング(その3)

高大接続改革に向けて、新しい学力観に沿った「思考・判断・表現」 の要素を備えた問題をストックできているかどうかは、今後、指導の成否を大きくわける可能性があります。自前で作問することもできますが、想像以上に手間がかかります。入試過去問の中に見つけた良問は積極的に活用していきましょう。

しかしながら、大学入試に限ったことではありませんが、出題はまさに“玉石混交”です。不用意に教室に持ち込んでは、「百害あって一利なし」 ということもあり得ます。教室に持ち込む前のフィルタリングが大切です。


❏ 最初のフィルタリングは分業で効率化

大学入試問題の中にも、残念ながら、わざわざ時間を割いて生徒に解かせるまでもない問題もありますし、中には、生徒に挑ませては好ましくない影響がでる問題(いわゆる悪問)も含まれます。

教材としての適否を判断するには、問題をしっかり読み込み、評価する必要があります。論述の解答例を作り直してみたり、採点基準(通例、公開されていない)を想定しなければ、適否判断ができないこともあります。

手間暇をかける価値のない問題まで手を広げて、過去問すべてをじっくり解いていては先生方の負担があっという間に限界を超えます。

本気で解く問題は、ある程度まで絞り込んでこそ、有意な出題研究が可能になるとお考え下さい。

但し、絞り込むと言っても、ひと通りは解いてみないことには始まりません。勘に頼って絞ってしまうと、埋もれている良問を見逃してしまうリスクもあります。

そこで、採り入れたいのが、先生方の協働による、出題研究の分業です。

ここで “ダメ問題”を排除してしまいましょう。

分業によって、使い道が想定できない問題を解く作業の無駄と重複を、できるだけ回避することが、限られた時間を有効に利用することに繋がります。


❏ 良問に絞り込んで、授業設計に時間をかける

例えば、のべ100学部の入試問題を点検・研究しなければならないとして、10人の先生がそれぞれ単独で(=協働も分業もなしに)、100学部の問題を解くのはあまり効率的ではなさそうです。

しかも、その中には、教材として持ち込むほどの価値がない問題も含まれます。そんなところで無駄を重ねることは不幸以外の何物でもありません。

じっくり解く必要のない問題を除外する(=フィルタ―で振り落とす)工程だけでも分業にできたら、作業効率はぐんと上がります。

まずは、腰を据えて研究すべき問題を絞り込んで、その上で、指導計画や授業設計に向かう前の準備に時間をかけるべきだと思います。
  • 教科書がカバーしない情報を、どこで入手し、どう生徒に提示するか、
  • 答案を仕上げさせたら、どんな採点基準に照らして評価を行うか、
  • 他の単元や科目の学習とどう関連付けるか
など、授業設計や指導計画の立案にこそ、持てる時間を効率的に投じるべきではないでしょうか。


❏ それでも入手できる問題にはできるだけ自分で目を通す

教材としての適否を判断しながら、しっかり解こうと思うと結構な時間がかかりますが、大学入試問題正解を一冊用意して、ページをめくっていくだけなら、それほど大きな負担にはならないはずです。

生徒が受験する可能性がある大学については、やはり自分の目で、問題をひと通り見ておく必要がありますよね。他人任せにはできないところです。

それまであまり関心を持っていなかった大学の出題例のなかに、思わぬお宝(=教室で使える良問)が隠れていることもあります。

他の設問はあまり魅力がなかったとしても、ある小問だけはきらりと光る良問であることも珍しくありませんし、設問はともかく、リード文や添付された資料などに教材としての利用価値があるかもしれません。


❏ どこまで出題研究の対象を広げるか

出題研究はできるだけ広く、深く行うに越したことはありませんが、投じることができる時間は有限です。

前稿では、「進路希望調査の結果に照らして、優先順位を決めていくことも重要」 と書きましたが、こなせる量を見越して、研究の範囲を絞りましょう。

例えば、入試シーズンの2月から、新学期が始まるまでの2か月ほどを、出題研究の重点期間とするなら、週に2~3学部のペースで進めるとして、一人当たり20学部ほどが目安になりそうです。

有志5名でチームを組めば、のべ100学部。10人なら200学部くらいまで、対象を広げることができます。

「科目担当が自分しかいない」 という学校では、SNSを利用して、出題研究をチームで進めておられるケースもありました。

また、単年度で無理がかかるようなら、「経年的に良問のストックを蓄積していく」 という発想に切り替えたほうがよさそうです。

この手の取り組みは継続性が大切です。全力で走って息切れしてしまうことがない方法を優先しましょう。


❏ 過年度の指導経験を活かし、初期のストックを増やす

入試問題研究は以前からも行われていたはずですし、実際に授業で使ってみて指導効果が大きかった問題もあるはずです。

まずはそれらを集め直して、「教材として好適な出題例」 の初期ストックを大きくすることが大切です。

出題研究をしっかり行うことのメリットや、授業に利用することで得られる効果を再認識できますので、協働での取組を始動・継続させるモチベーションも高まるはずです。

また、過去の経験に照らしてみると、良問の出題が多い大学もいくつか浮かんでくるはずです。それらの大学は、生徒の進路希望の分布とは別に、毎年欠かさずチェックする対象に加えておきましょう。

その4に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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