宿題をやってこない生徒への対応

宿題をやってこない生徒への対応に頭を悩ませている先生方は少なくないと思います。何の指導もしなければ、生徒の行動を改めさせることもできません。かといって、その場で叱ってみたところで貴重な授業時間を費やす割りに効果は限定的。クラスの空気が重たくなるだけかも…。

こうしたジレンマを打ち破るカギは、宿題を、その日の授業を進める上で必要な準備として課したものと、それ以外の目的(既に学んだことの深化や知識の拡張を図ることなど)で課したものに大別した上で、やってこなかった生徒への対処を変えることにあるのではないでしょうか。

問題の切り分けもせずに、やってこない生徒とそれを叱る先生のイタチごっごが続いては、次第に指導も厳しいものになっていきがち。それに対して生徒が反抗的な態度を取り始めたら、出口が見えなくなります。

2014/10/22 公開の記事をアップデートしました。

❏ 授業準備として課した宿題をやってきてくれない

宿題が次の授業の準備として課されている場合、生徒がきちんと宿題をやってきてくれないことには、その日の授業進行に支障が出ます。

こうした事態を生じさせないためには、宿題に取り組めるだけの前提知識などを生徒がきちんと備えているか、調べたりまとめたりする方法が身についているかを前もって十分に確かめておくことが肝要です。課題解決の場を整えたら、挑ませる前に理解の確認を取るのと同じです。

もし、個々の生徒/グループが割り当てられた課題の成果を教室で持ち寄って全体の学びに展開することを想定していたとしたら、宿題をやってこない生徒がいたことの影響はクラス全体に及んでしまいます。

この場合、自分がサボる/下手を打つと、他の生徒にも迷惑が及ぶことは生徒も十分にわかっていますので、「面倒くさいから、気分が乗らないから」という理由で宿題に手を付けないようなことはないはず。

もし、やってこなかったとしたら、宿題を課すまでの段階で、それに取り組めるだけの状態に導いていなかった/前提要件を整えていなかったことを、先生方の側で反省しなければならないのではないでしょうか。

なお、どれだけ準備を整えさせたとしても、急な用事や体調不良などで宿題どころではなくなることもあるはず。欠席だってあり得ます。

生徒が宿題をできなかった場合を想定し、どのように対処して授業計画を崩さないようにするかを予め考えておくのは指導者側の責任です。

・予習や前提理解が不十分な生徒に対する導入フェイズでのケア

本時の授業を進めていく上で必要となる前提理解(既習単元の内容などを含みます)を整えさせることを目的として与えた宿題(授業準備課題/平たく言えば「予習」)をやってきてくれなかったり、きちんと取り組んでくれなかったりする生徒もいますが、言うまでもなく、その場で叱ってみたところで、本時の学びへの準備が整うわけではありません。

この状態のまま授業に入っては、前提理解が欠けているだけに、授業理解も不十分になるでしょうし、学びも深まりにくくなります。ただし、宿題をやってきた生徒でも十分な前提を得ている保証はありません。

やってきた生徒もやってこなかった生徒もひっくるめ、クラス全体に対して、本時の学びへの備えが整っているかは確かめる必要があります。

別稿「既習内容の確認は、問い掛けで」でご紹介した方法などで本時の学びへの準備が整っているかを確かめ、必要な手当てを施しましょう。

まずは、予習がきちんとできていたら答えられる簡単な問いをクラス全体に投げかけ、生徒一人ひとりに答えを考えさせましょう。

答えがわからなくても、教科書などを読めば、そこに答えやヒントがあるはず。さっとページを開けた生徒に「何ページ?」と尋ねれば、他の生徒も該当箇所を見つけられます。

その後、隣同士などで答え合わせをさせれば、本時の学びへの準備はだいぶ進んだことになるのではないでしょうか。

なお、やってこなかった生徒には、後段のように改めて提出を求め、遅れてでもきちんとやり切らす必要があります。やってこなかったことをその場で叱るのに余計な時間は使いたくありませんし、叱るだけで結局は宿題を完遂させなければ、学びの成果は積み上がりません。


❏ 後に延ばせる宿題なら、提出日を生徒に約束させる

前段のような対処で授業への準備を整えさせることができたなら、あるいは冒頭の分類で後者に当たる「その日の授業の準備以外の目的で与えた宿題」であるなら、最終的にきちんと仕上げてさえくれれば、宿題の提出期限を後日に伸ばしたところで大きな実害はないはずです。

そう割り切ってしまえば、宿題をやってこなかった生徒に対して、これまでと違った対処もできそうです。例えば、教えることの復権(ちくま新書)─大村はま、苅谷夏子、苅谷剛彦の序章には、こんな場面が描かれています。少々長いですが、引用します。

「約束の宿題がありましたね。今日が提出日でした。ここに全部そろっているという人が多いでしょうが、中には、これとこれは今日提出するけれども、これは少し遅れる、というような人もいるかもしれません。

この紙に、何々を提出するという事情や予定を書いて、宿題に添えて出しなさい。中学は大人になる練習をするところなんだから、友達どうしで『どう書いたらいいの』なんておしゃべりしないで、黙ってなさい。さあ、どうぞ」

てきぱきと明るい、それでも毅然とした調子だった。おしゃべりしないで、と言われて、確かに同級生たちは黙って小さな紙に向かっている。私の前にもその紙はあったが、どうしたらいいのだろう。前日に転入したばかりで、この先生にはあいさつもしていない。宿題のことなど、まったく知らない。私に落ち度はないけれど、でも心細い。特別扱いしてほしいくらい、心細い。といって自分だけ騒ぎ立てたくもない。

私は考えた末に「転校してきたばかりなので何も提出できません」とだけ書き、名前を添えて、みんなに交じってその紙を出した。

全員が提出を終えると、もう宿題の話はおしまいだった。期日に全部そろわないのはいけないというようなお説教はない。叱られた生徒もない。事情を書いた紙のやりとりが行なわれただけだ。その空気は、スマートで大人っぽい感じがして、私は少し圧倒された。

生徒は、落ち度があれば先生にがみがみと叱られるもの、そんな感覚しか持っていなかったから、この光景は新鮮だった。

宿題をやってこなかった生徒にも、それが客観的には認めがたいものであったとしても、それなりの理由や事情があります。まずは、それに耳を傾けてあげることはとても大切だと思います。

また、いつまでに提出するという約束を生徒自身にさせることには、とても大きな意味があります。課題が与えられた段階では、課題を選んだのも、期限を決めたのも先生ですが、如上の約束をした時点で「決めたのは自分」になり、その約束を守ることに自分の理由が生まれます。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


教えることの復権 (ちくま新書) - はま, 大村, 夏子, 苅谷, 剛彦, 苅谷
教えることの復権 (ちくま新書)
大村はま、苅谷夏子、苅谷剛彦

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