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zoom RSS 宿題をやってこない生徒への対応

<<   作成日時 : 2014/10/22 06:54   >>

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宿題・課題の未履行者への対応は、難しい問題です。

やってこないことに何の指導もせず許してしまっては、本人のためにならないだけなく、その後の指導を徹底する前提(互いの約束)が成立しなくなります。

かといって、やってこないことをその場で責めてみても、・・・。その生徒を指導している間、ちゃんとやってきた生徒は待っているだけ。

手空き時間を上手に使うすべを身につけている生徒以外は、何の積み上げもできない時間になってしまいます。

副教材準拠の小テストや週末課題なども、提出物の体裁を整えるだけで精いっぱいになりがちです。与えるだけ与え、「やってくるのは君たちの責任」 と投げ出すのも、ためらいを覚えます。

仕上げず放置するという悪習慣を「学習」させないためにも、まずは未履行者を出さないようにして、その上でなお、仕上げられなかった生徒への対応を考えるのが正しい順序ではないでしょうか。


❏ やってこなかったことを責めてみても・・・

宿題をやってこなかった生徒に対して、先生方はどのような対応を取られているでしょうか。

ある学校の授業を見学していたときに目にしたのは、宿題をやってこない生徒を起立させるという光景でした。

おそらくは、やるべきことをやらなかったことに(同級生の視線も通じて)向き合わせる、という意図によるものと拝察しましたが、実際の効果がどのくらいあったか、つまり、次の機会にやってくるようになった生徒がどのくらいいたかは疑問です。

次に向けて行動を改めようというモチベーションを考えてみると、如上の方法は、「恥ずかしい思いはしたくない」 というネガティブなものになるか、やってこないと叱られるという外的な動機づけに偏るように思われます。

やろうと思ったのにできなかった、という状態で「なぜやらなかったのか」 と質されても、答えに窮するばかりです。

いずれにせよ、ここには、いわゆる“別腹”は働いていません。


❏ 快体験につながるような宿題/課題を

別腹というのは、ご存じのとおり、食事を終えて満腹なはずなのに、出てきたデザートに手を伸ばす、あれです。

「それが美味しいものである」「食べると幸せな気分になれる」といった、過去の快体験が作る肯定的認識によって生み出される欲求であると考えられます。

宿題についても、履行したことで満足感や達成感を得た、あるいは自分自身の進歩を実感できたという、快体験と結びつかない限り、内発的なモチベーションにはつながらないようです。

授業内で学んだものを使って、始めて出会う課題に正解を導き出せた経験などは、こうした快体験の一つです。

あるいは、授業準備で調べてきたこと、作ってきたメモをもとに、グループのメンバーと充実したディスカッションができたり、自分でも納得のできる発表ができたりといったことも、同じ働きを持ちそうですよね。

まずは、生徒に課した宿題・課題が、学習者としての快体験になり得るものであるかどうか、教える側で確かめておく必要がありそうです。


❏ いつまでに提出するかを、生徒自身に決めさせる

『教えることの復権』 大村はま/刈谷剛彦・夏子著(ちくま新書)の序章には、こんな描写があります。少々長いですが、引用させていただきます。

「約束の宿題がありましたね。今日が提出日でした。ここに全部そろっているという人が多いでしょうが、中には、これとこれは今日提出するけれども、これは少し遅れる、というような人もいるかもしれません。

この紙に、何々を提出するという事情や予定を書いて、宿題に添えて出しなさい。中学は大人になる練習をするところなんだから、友達どうしで 『どう書いたらいいの』 なんておしゃべりしないで、黙ってなさい。さあ、どうぞ」

てきぱきと明るい、それでも毅然とした調子だった。おしゃべりしないで、と言われて、確かに同級生たちは黙って小さな紙に向かっている。私の前にもその紙はあったが、どうしたらいいのだろう。前日に転入したばかりで、この先生にはあいさつもしていない。宿題のことなど、まったく知らない。私に落ち度はないけれど、でも心細い。特別扱いしてほしいくらい、心細い。といって自分だけ騒ぎ立てたくもない。

私は考えた末に「転校してきたばかりなので、何も提出できません」とだけ書き、名前を添えて、みんなに交じってその紙を出した。

全員が提出を終えると、もう宿題の話はおしまいだった。期日に全部そろわないのはいけないというようなお説教はない。叱られた生徒もない。事情を書いた紙のやりとりが行なわれただけだ。その空気は、スマートで大人っぽい感じがして、私は少し圧倒された。

生徒は、落ち度があれば先生にがみがみと叱られるもの、そんな感覚しか持っていなかったから、この光景は新鮮だった。


宿題をやってこない生徒にも、客観的には認めがたいものであったとしても、それなりの理由や事情があります。

まずは、それに耳を傾けることはとても大切だと思いますし、それ以上に、いつまでに提出するという約束を、生徒自身に作らせることそのものに、大きな意味がありそうです。

課題が指定された段階では、それを決めたのは先生。でも、改めて約束した以上、決めたのは自分です。

どんな場合にも通じるわけではないかも知れませんが、倣ってみたい方法の一つではないでしょうか。


その2に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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