知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

蛍光ペンでマークアップやサブノート式のプリントに頼る手法が抱える問題点とその悪影響を抑えるための工夫について考えた前稿、前々稿に引き続き、今回は「問い掛けで気づきを促しつつ、黒板上で情報を構造化していく」ことを軸にした、別のアプローチをご提案いたします。


❏ 板書しながら、情報整理のプロセスを学ばせる

問い掛けで生徒の気づきを促し、確認したことを黒板に描きだしていくことは、「情報整理の過程を生徒自身に経験させる」ということでもあります。

教科書に記載されている事柄を、一つひとつ問いながら、重要な情報を拾い上げ、それを全体の流れに組み込んでいくプロセスを、生徒の眼前で展開してみせることが大切です。

「耳で聞いて」「目で追って」「手を動かして固定する」中で、生徒に情報整理のプロセスを共時的に体験させていくことが、そのやり方を身につける起点になります。


❏ 対話をしながら、ポイントをピックアップ

まずは、教科書に書かれたことを一文ずつ読んでいきましょう。教科書をきちんと読ませることも大切です。

前稿、前々稿で使ったのと同じ例なら、最初の問い掛けはこんな感じでしょうか。
 「配置から大別すると、・・・何と何があるって?」
 「そう、骨格筋と内臓筋って書いてあるね」
 「でも、これって『便宜的な分類』なんだって」

ここまでで、こんな板書が出来上がっているのではないでしょうか。

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❏ 分解と再構成のプロセスも対話を行う中で

発問はさらに続きます。
 「じゃあ、どんな分類法があるって書いてある?」
 「組織学的分類か・・・」
 「何と何に分類されるわけ?」

こうしてワンステップずつ進めて完成したのが以下の板書です。

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先生が黙々と板書を書き上げて行っても、その背景で行われている思考を、外から見ていた生徒が把握するのは困難です。

対話の形を取りながら進めることで、先生の頭の中での動きを生徒も同時にトレースしていけるようにしましょう。


❏ 理解のフレームが完成したら、パーツは生徒で埋めさせる

表内の青字の部分は、敢えて板書しないで、生徒自身に教科書から語句を拾い上げさせて埋めるように指示しても良いはずです。

生徒にできることは教師が肩代わりしない、というのが鉄則です。

強調の正しい方法(その5) でご紹介したような、少し変則的ながら効果的な方法もあります。
ポイントになるところをあえて文字に起こさず下線だけ引いておいたり、枠だけを描いておいたりして、該当箇所の学びを終えてから、埋めるべき文字を書き込むという方法もあります。項目名や単元名、表組の行/列タイトルも、最初は書かずにおき、後で埋めさせることで、そのパート全体の意味付けを行うのも、強い印象を残すために試してみたい方法のひとつです。


❏ 教科学習指導で図るべき、情報整理のスキル獲得

科学の発展や学問の進展の中で、現在の知識はやがて更新されます。

また、上級学校に進学しても、職業生活を始めても、新たに学ばなければならないことは尽きることなく現れてきます。

そうした情報の大波の中で主体的に生きるには、情報に弄ばれず、情報を自らの力でコントロールする力を身につけておくことが大切であるのは改めて申し上げるまでもありません。

教科学習指導は、知識を得る場であると同時に、情報を評価して整理する方策(汎用スキルの一部)を身につけさせる場です。

 ■ 教科固有の知識・技能を学ぶ中で


その4に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一





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