知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

前稿では、問い掛けを重ねつつ黒板上に情報を構造づけていくことで情報整理のプロセスを学ばせることをご提案いたしました。これにより、知識の断片化や丸暗記に偏るリスクはかなりのところまで解消できるはずです。

しかしながら、蛍光ペンやサブノート式プリントを使うことになった、おおもとの問題がまだ解決されずに残っています。言うまでもなく、学習内容の多さに比して、授業時間が足りないという問題です。

問題の解決には、大きく分けて
  1. 単位時間当たりの扱える情報量を増やす伝達の効率化
  2. 与える情報量/学ばせることがらを精選(取捨選択)
という2つのアプローチがあります。


❏ 知識の拡充範囲をやみくもに広げない

言うまでもなく、両者は互いに競合するようなものではありませんから、どちらか一方だけでなく2つを併用するのが好適ですが、あえて優先順位をつけるとすれば、後者の「学ばせる内容の精選」だと思います。

伝達を効率化するだけでは、生徒が覚えるものは減らず(むしろ増えていく傾向もあります)、覚えきれない/仕上げ切れないで残っていくものが増えても得るものは多くありません。

この辺りについては、以下の記事がご参考になれば幸いです。
❏ ICT機器を使って伝達の効率化

問い掛けで考えさせて、理解を積み上げつつ情報を構造化していく過程は、ワンステップずつ端折ることなく見せていく必要があります。

テレビの料理番組みたいに「3分経ったのがこちらです」というわけにはいきません。

節約すべきは、生徒が考えたり手を動かしたりする時間ではなく、先生が板書している時間です。

PowerPointなどで作成しておいた「板書のベース」を黒板に映し出して、そこにチョークやホワイトボードマーカーで書き込んでいくというやり方はとても効率的です。

 ※板書のベース: 教科書の本文や表組の枠、図表の下地など

パワーポイントも結構ですが、生徒のプリントを作ったときのワード文書などをそのまま映写するのであれば、プリントとスライドを別に作る必要もなくなり、先生方の授業準備での時短にもなります。


❏ 効率化に走って学びを薄くしないことが肝心

ICTを利用するときに注意したいのは、効率的な伝達/効果的なプレゼンテーションに走り過ぎないことです。

あたかも編集されたテレビ番組のような流麗なプレゼンテーションを眺めていては、生徒の学びは受け身になりがちです。

もちろん、これ自体も問題ですが、本シリーズの趣旨に照らせばもっと大きな問題が生じていることにお気づきかと存じます。

最終的な結果をいきなり見せてしまうのでは、情報整理のプロセスを共時的に体験させることができない、という問題です。

こちらの記事も併せてご参照ください。
❏ プリント・スライドの共有で図る、授業準備の効率化

作成したスライドは、デジタルデータですので、手を入れるのも、他の先生に譲るのも簡単です。

ほかの先生が作り込んでくれたものを、自分の授業スタイルに合わせてブラッシュアップする方が、いちから作り込んでいくよりはるかに効率的ですし、他の先生が絞り出した知恵を利用することもできます。

実際に授業で使ってみて直すべき箇所があったとしても、デジタルでの編集は簡単です。次年度に向けて修正することはもちろん、次の時間の隣のクラスで使うのにも間に合うのではないでしょうか。

教科内で分業して作成したものを共有していけば、教科全体での作業量はトータルで大きく短縮できますし、年度をまたいで継続すれば、効率化に止まらず知財の蓄積にも繋がります。


❏ あれこれ考える前に、まずは実際に使ってみる

ICTの利用については、機材の整備が進んでも、実際の利用がなかなか進まないということもあるようです。

あれこれ考える前にまずは使ってみることが大事だと思います。

使っているうちに使い方のアイデアは膨らみますし、使い方に習熟するにつれて、使うことのストレスも感じなくなっていきます。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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