問い掛けの多い授業が良い授業(その1)

教室で行う発問の役割は、知識の有無や理解の正しさを確認するだけではありません。発問をきっかけに生徒の思考や行動が引きだされますし、問うことで問題意識を刺激すれば生徒の側で情報を受け取る準備が整います。

確かな学び、活発な思考と行動、問題意識を持った深い学びが発問によって支えられるということであり、一般論として「問い掛けの多い授業が良い授業」ということができるのではないでしょうか。

しかしながら、実際の現場を覗いてみると、如上の機能の一部しか活用できていなかったり、せっかくの問い掛けに生徒がうまく反応できていなかったりするケースも散見されます。

発問の役割を少し掘り下げて考えるとともに、上手く機能させるための要点を整理してみたいと思います。

2014/12/03 公開の記事をアップデートしました。


❏ 発問には3つのタイプ

冒頭にも書いた通り、発問には大きく分けて3つのタイプがあります。場面ごとにどの機能を使おうとしているのか、ちょっと意識してみるだけで、発問の使い方はぐんと洗練されるのではないでしょうか。

1つめは、「知識や理解の有無を試すための発問」です。導入フェイズで既習内容をちゃんと覚えているか確認したり、課題に挑ませる前にそこまでの理解を確かめたりする場面で使う発問です。

2つめは、「生徒の思考や行動を引き出す問い」です。問われればその答えを見つけようと、頭の中の記憶を探したり、答えを考えるのに足りない知識は外に参照しようとしたりしますし、場が許すなら周囲と相談を始めることもあるでしょう。

 ■ 自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手”

問答を通じて論理性を養う(その2)で書いた通り、問いを重ねるということは、思考を掘り下げることであり、また見落としを減らし視座を広げることに外なりません。

3つめは、「着眼点を獲得させるタイプの問い」です。

たとえば、空所補充問題を扱う場面で、埋めるべき箇所の直前におかれた単語に着目させたうえで「次に来られる品詞は?」という問いを頻繁に繰り返していれば、生徒は自ら同じ問いを頭の中に作り出せるようになり、どこに着目すれば良いか見つけ出す能力を獲得していきます。

これらに加えて、発問には様々な機能があります。


❏ 全体への問い掛けで、生徒にミットを構えさせる

問われて疑問が浮かべば、その後に続くであろう先生の説明にも注意が向きますので、情報や知識を受け取る準備も整ってきます。

次に投げるボール(知識や情報)に対して生徒がミットを構えていなかったら、「落球」や「後逸」のリスクが高まります。

説明を重ねたのちに、さて、きちんと伝わったかなと生徒を指名してみたら返ってきたのが「えっ、なに? 先生、もう一度言って」では、こちらも力が抜けてしまいます。

大事なことを伝えようとするときには、生徒に「問われる態勢」を取らせておかなければなりません。

ずっと先生の説明を聞くだけの場面が続いていては、生徒の頭は「問われること」を前提としなくなり、情報の受け止め方が甘くなります。

絶えず、クラス全体に発問を投げかけ、生徒の行動や表情を観察しながら、指名する生徒をその都度選び出すようにすれば、生徒の意識は「ただ聞いていれば良い」ではなく、「絶えず問われている」というものに変わってきます。


❏ 問い掛けを通じて課題解決のプロセスを共時的に体験

発問が担う 「学習者支援の機能」 には、課題解決のプロセスを辿りながら体験させるというものもあります。

問い掛けなしで、先生が一方的に説明を重ねるだけでは、生徒は訊いているだけですし、最終的に先生が正解を示してくれることが常態化していては、生徒は解に至るプロセスを学ぶことよりも、示された正解を覚えることに集中した方が効率が良いという間違った学習観を身につけてしまいかねません。

解法にしても、既に確立された最も効果的なものを示して覚えさせるだけでは、解法を知識として記憶して答案上に再現しているだけであり、解法を考え出すトレーニングにはなっていません。

こうした学びを繰り返していては、生徒は「真面目に取り組んだ」という認識は持てるかもしれませんが、自ら工夫して何かを達成できたという実感には乏しく、達成感を原資とする学習意欲の向上もあまり期待できないのではないでしょうか。

先生からの問い掛けをガイドに、課題解決のプロセスを生徒がワンステップずつ体験しながら辿っていけるようにするにも、「問い掛け」が極めて重要な役割を持ちます。



正しくミットを構えさせるためにも、発問を通じて課題解決のプロセスを体験させるためにも、教員が投げかけた問いに対し、生徒が正しくレスポンスできていなければなりません。

何のリアクションも取らずに次の説明をただ待っているだけでは、与えられた答えを受け取って覚えるだけという状態と何ら変わりません。

各地で教室を覗かせていただくと、生徒から正しいレスポンス(活発な発言や、課題の解決に向けた思考や行動)を上手に引きだせている授業と、いくら発問を増やしても生徒は答えを待っているだけの授業とがあります。この違いがどこから生まれているのか、次稿で少し掘り下げて考えてみたいと思います。

その2に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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