知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その2)

昨日の記事で考察した"教科書・参考書にマークアップさせる方法"に加えて、重要語句などを埋めさせる空所を設けた"サブノート式のプリント"を用いている授業も多いと思います。

こちらの方法であれば、 「重要語句を一文字たりとも自分の手で書いていない」 という、マーカーで色を塗るだけの方法が抱える致命的問題は解消できますが、それでもなお、様々な解決すべき課題が残ります。


❏ 空所を残したサブノート式に仕立ててみると?

前回と同じベース教材を、サブノート式に組み替えたとしたら、こんなイメージになるのではないでしょうか。

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すでに印刷されている文字をマークアップする場合と異なり、空所が設けられているので、「何が入るんだろう?」 という問題意識を刺激できるというのがこの方法の利点の一つです。


❏ できるかぎり生徒に埋めさせることで空所は活きる

しかしながら、実際の教室で、生徒に自力で空所を埋めることを求めている場面はあまり見かけません。

先生が説明しながら埋めるべき語句を示していくのでは、せっかく問題意識を刺激したのに、それが主体的な学びに繋がりません。

生徒は正解が与えられているのを待つだけになってしまいます。これではマーカーで色を塗るのと大差ないのではないでしょうか。

プリントを配布したら、説明を始めてしまう前に、生徒に教科書などを参照して空所をできる限り自力で埋めさせるようにしましょう。

パートごとに分けて進めることで、早い生徒と遅い生徒の差を膨らませず、当座の主眼に意識をフォーカスさせるのが、ここでのコツです。


❏ 埋めるべき箇所が多く、問題意識をフォーカスしにくい

サブノート式のプリントは、多くの知識を効率よく与えようという意図で作られることが多いため、空所は多めになりがちです。

すべての空所が同じ重みになっては、刺激された問題意識も多方に分散し、本時の主眼や単元理解の核となる概念などに意識(疑問や興味)をフォーカスできなくなってしまいます。

これでは、別稿でご提案した "空所を残した板書で行う導入"のような、端的な効果は期待できそうもありません。

本時の主眼を代表しえる「ターゲット設問」をプリントの冒頭/トップなどに置いたり、枠囲みで目立たせたりするなどの一工夫も求められるところです。


❏ 仕組みを理解する「つなぎ」の部分を軽視させない

空所を埋め終えた後は、もともと印字されていた「つなぎ」の部分には視線が注がれなくなるのも、サブノート式が抱える弱点です。

この「つなぎ」こそが、個々の知識を結び付けて単元全体を理解する上で、重要な役割を持っているのではないでしょうか。

これを脇に置いて重要語句だけを取り出して覚えても、その単元をきちんと理解しているか疑問です。

かといって、つなぎの部分まで伏せてしまっては、生徒は何を問われているか想像がつかなくなります。

空所の占める割合は、文章のうち15%程度が限界でしょう。

これを超えて、考えたり調べたりする手掛かりが不足すると、「解明したい」という欲求は「わけがわからない、めんどくさい」に取って代わられてしまいかねません。


❏ 空所補充の弱点を補う、記述・論述タイプの課題

こうした穴埋め式プリントが抱える問題を解消するには、獲得した知識を「文章」に再構成させることで、きちんとした理解が形成できたか確認できる課題を用いるのが好適です。

以下のようなターゲット設問(前述)を、プリントの冒頭に印字しておき、次回までの宿題にしてしまうのはとても効果的です。
空所に補った語句を○個以上用い、△について□字で論述せよ。

これで、十分な理解を伴わない断片的な知識を蓄積しただけなのか、きちんと理解して活用できる知識を形成できたのかの判定ができます。

授業終了前の5分間で、答案のまとめ方を考え/ペアで話し合わせてから自宅に持ち帰って仕上げさせると、答案の完成度が高まり、生徒はより強い達成感を持ち、それを原資とする学びへの意欲を膨らませます。

クラス内の学力・学欲差から、全員に論述を課すのが難しい場合でも、ひとつの課題から複線的なハードルを作るという方法もあり得ます。

以下の記事も併せてご高覧いただければ光栄です。
  1. 5分間アウトプットの費用対効果
  2. 知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて
  3. やりきらせる責任~仕上げ切らないことを習慣化させない
  4. 学ばせ方の転換で、家庭学習の充実が求められる

その3に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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