教科間で行う、課題量の把握と調整(その1)

家庭学習にきちんと取り組ませるため、各教科が与える課題量を学年内で把握し、調整を図っている学校があります。

こなしきれない量の課題(予習・復習、宿題)を生徒が抱えて履行率が下がる/仕上げが不十分になることがないように、逆に、やるべきことが見つからずに個々で取り組む学習活動が不十分になることがないように、というのがその意図するところです。

 ■ 原因から考える家庭学習時間の延伸策
 ■ 新しい学力観にそった授業と家庭学習の再設計

ある科目を担当する先生の「生徒の学力を伸ばそうとの熱意と善意」が行き過ぎて、その科目の勉強だけで生徒が手一杯になるほど負荷を掛けてしまっては、他の科目・教科の学習に支障が生じますし、先生方が互いに遠慮して(?)十分な量のタスクを与えなければ、生徒の力を十分に伸ばすことも、やるべきことを持ち時間の中に効率的に配置して実行するスキルと姿勢を身につけさせることもできません。

2015/01/07 公開の記事をアップデートしました。

❏ 調整は「減らすこと」 に止まらない

調整という言葉からは、与える予定だった課題を引っ込めるだけのようなイメージをお持ちになるかもしれませんが、調整は、必ずしも減らすことだけを意味しません。増やすべき局面だってあります。

・課題量を減らす方向で調整する局面

各教科担当が与えていた課題は「必要」として判断して用意したものですから、安易に引っ込めてしまっては所期の目標から遠ざかるばかり。しかしながら、肝心の生徒が「こなしきれない」のでは、「与えていない」のと同じことになってしまいます。

個々の科目で与えた課題それぞれの履行率を高く保持するために、互いに譲れるところで譲り合い、課題の総量を抑えるべき場面もあります。

別稿でも触れたように「与えられた課題を一人ひとりの生徒がきちんとやり切ることができる状態を整える」のは指導者の責任の一つです。

課題の総量が、生徒のこなせる限界量に達すると、それ以上に課題を増やしたところで実際の家庭学習時間は伸びません。適当にサボる、手を抜くといった誤った行動や態度を学ばせることにすらなりかねません。

各科目で与えている課題(予復習、宿題)について、それぞれを完遂するための「見込み所要時間」を足しあげた値が、学年が目標としている平均家庭学習時間を大幅に超過しているかどうかが、「減らす方向での調整」の要否を決めます。

実際の家庭学習時間/見込み所要時間が、ある科目で突出して多く、且つ他科目の学習時間を圧迫している(担当先生が遠慮して本当は与えるべき課題を引っ込めざるを得なくなっているときも含む)ようなら、緊急性・重要性が低い課題の一部を「任意扱い」に切り替えるなどの対応を、突出していた科目の担当先生に取ってもらうことになります。

・増やす方向で調整すべき局面

一方、如上の「見込み所要時間」の総和が学年の平均学修時間の目標値を下回る場合(実際にはあまり多く見かけませんが)、各科目で新たに与えるべき課題を洗い出し、生徒のタスクリストに加えましょう。

模擬試験の成績などが振るわない科目で、平均学習時間が低迷している科目に、課題量を増やす割り当てを多めに持ってもらうのが好適です。

ただし、宿題をただ増やしても家庭学習時間は伸びません。

履行可能性(=課題をきちんと完遂できるだけのレディネスを生徒が整えていること)と検証可能性(=課題を仕上げ切れたかどうかを生徒が自ら点検できる内容と形式を備えていること)の高い課題を与えられるかどうかが問われるポイントです。


❏ 適切な課題量が学習習慣の確立を助ける

生徒が家庭学習の習慣を円滑に確立していくにも、課題の総量が適切にコントロールされていることが重要です。

計画立てて勉強しようと思っても、次から次に膨大な宿題が課されては計画通りに勉強を進めることはできません。過剰な負担に嫌になるだけでなく、自分が立てた計画が壊される/上手く進まないこともストレスとなり、学習への意欲を削いでいく要因となります。

逆に、生徒が自律的に学ぶべきことを見つけ出せない段階で、先生から具体的な課題が与えられなかったり、その量が決定的に不足したりすれば、生徒は手空き時間を持て余し、学習時間は伸びず、机に向かう習慣やタスクマネジメントのスキルが身につかなくなってしまいます。

ある科目を担当する先生だけが「適切な課題量」の維持に努めても、他教科の先生がそうした配慮を欠けば、生徒に掛かる負荷/抱える課題量は適正な範囲に収まりません。

だからこそ、学年の授業を担当するすべての科目・教科の先生方が目線を合わせ、生徒に与えている課題の量をしっかり把握し、適切に調整していく必要があります。自教科だけ平均学習時間が伸びてもダメです。

・生徒が個々に取り組む学習活動の充実は最重要課題

生徒は、自力で学びに取り組む中で、科目固有の知識・理解を蓄えていきますが、同時に、学びに必要な様々な能力・資質(言語、数量、情報の各スキルからなる基礎力や思考力など)を身につけていきます。

生徒が個々に取り組む学習活動(≒家庭学習)をないがしろにしては、そうした力の獲得が遠のくばかりです。その結果、「学習者としての自立」が進まなければ、学びが次のステージに進んだときに、より高度で複雑な課題に取り組むための土台も整わないことになります。

教室でやることと、生徒に自力で取り組ませることの線引きが適切にできなければ、新課程が求める「学ばせ方」の実現も困難です。

 ■ 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計
 ■ 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる


❏ 生徒が自ら選んで取り組む課題の割合を徐々に増やす

適切な量の課題に取り組ませると言っても、「先生が用意した課題」にだけ取り組ませておけば良いということにはなりません。

先生方が指定してやらせることを徐々に減らし、代わって生徒が自分で見つけ選び出したタスクに取り組む時間を増やしていく、下図のようなイメージで3ヵ年/6ヵ年の指導を計画していく必要があります。

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何の働き掛けもせず放置して「課題を自分で見つけられる生徒」「それらに自律的に取り組める生徒」が増えるはずもありません。

初期の段階では、先生方の授業の設計に合わせた予習・復習のやり方をしっかり伝えた上で、自力で完遂できずにいる生徒には、助け舟を出しながら「指定されたことならできる」という状態まで導きましょう。

これと併行し、定期考査や模擬試験を経験するごとの振り返りなどで、より良いパフォーマンスを得るのに何をどのように学ぶべきかを見つけ出す「メタ認知・適応的学習力」を獲得させていく必要があります。

如上のイメージで、与えるものを徐々に抑えていったときに、平均学習時間が減少するようなら、「自ら選び、取り組む課題」が増えていないということ。そこまでの指導のどこかに改めるべき点があるはずです。

その2に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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