学習目標が伝わらない?(その2)

教える側と違って、学習者の側は何といっても学び始める前です。それだけに、単元や項目の目標や意義を示されても、そこに込めた意図をすべて受け止めるのは容易ではありません。

前稿では、そんな場合に試してみるべき方法として「内容を学び始める前のプレ活動」をご提案いたしました。今回は、それでもうまく行かなかったときの“次善の策”、終了時に使える一手を考えてみます。


❏ 先を見渡すロードマップとしての単元シラバス

ある程度のまとまりをもって学ぶ事柄の一部だけを取り出しても、その意義は生徒にとってわかりやすいものではありません。
  • 最終的にAという知識や技能を身につけるためにBが必要
  • 今日これから学ぶCは、そのBを理解するための前提
という場合を想定してみれば、Aだけを取り出してその意義や価値を示すのは困難であるのは、容易に想像できるはずです。

こうした場合に、目標を伝える役割を担うのは“シラバス”です。

引用符で囲ったのは、いわゆる科目ごとに書き出すシラバスとはちょっと違うもの、という意味を込めてのことです。敢えて名前を付けるなら、「単元シラバス」 とでも申しましょうか。

新しい単元に入るとき、ざっと教科書のページをめくらせてみて、全体を眺めてみることでも、多少の違いは生まれます。

場合によっては、将来の学問や先端研究、あるいは社会での応用場面などに繋がる「系譜」を話して聞かせたりするのも面白そうです。

その単元で目指すものを生徒/学生にイメージさせる、言い換えれば、生徒が関わりを認識できるゴールを先に見せておくことが、学びの意味を知らしめることに繋がるのではないでしょうか。

しかしながら、ここには、あまり時間はかけたくありません。できれば前の単元の学習が終わったタイミングで、「次回の予告」 のような形で短時間に済ませたいところです。


❏ 学びを終えての振り返りで、学習目標を改めて認識させる

学ぶ前には、学習目標をしっかりと認識することが難しいという現実に対処するもう一つの方法があります。

その項目や単元の学びを終えた段階で行う振り返りで、本時の学びの意味や位置づけを再確認させるという方法です。

シラバスに記載された文言を改めて示し、その日取ったノートや教科書と照らし合させましょう。

この作業すら、生徒/学生にとって現時点では難しいという場合は、リフレクションシートなどにチェックリストを用意してみては如何でしょうか。

そこでは、「○○について説明できる」「○○のメカニズムを理解できた」 など、学ぶ側を主語にしたセンテンスで書き出すのが好適です。

リフレクションシートを作ることを通して、教える側もまた、本時の目標を明確に捉え直すことができます。

授業評価アンケートの項目には、「教員の熱意」 が含まれることもありますが、まずは教える側が場面ごとの目標をはっきり認識しておかないと、そこに生徒を導こうという意欲や熱意は盛り上がりません。

毎回の授業で作るのはたいへんな手間になりますが、毎年更新しながら使っていけば、2年目以降の負担は小さくできます。

言うならば、一種の先行投資です。できるだけ早く手を付ければ、その分、「利子」も大きく期待できます。もちろん、先任者の資産も積極的に活用してしまいましょう。


❏ 本時の学びの先にあるものを、終了フェイズで示す方法

授業終了時に、「本時の学びの先にあるもの」を例示するという方法も考えられます。

この方法は、「不足する情報を生徒/学生側で、目的と照らしながら補完する」 という機能が十分に発揮されないため、最初の選択肢としては好適性に欠けます。

あくまでも補助的な方法と位置付け、導入フェイズでの目標提示に最善を尽くすことを優先しましょう。

前述の「学びを終えた段階で行う振り返り」にも当てはまることですが、この方法を上手く機能させるには、「習慣化」がキーワードになります。

学び始めの段階では、目標を正しく理解する(=先生と同じ風景を見てゴールを同じようにイメージする)のが難しかったとしても、粘って授業に食いついていけば最後にはちゃんと目的がわかる、という認識に引き込むには、そうした体験を重ねていく必要があるからです。

たまに思いつきでやってみても、あまり大きな効果は期待できません。

習慣化を通じて、「今日の学びが目的とするのは何だろう」と考えながら授業に参加するようになってくれれば、シメたものです。



ある科目の学びを通して生まれたこうした意識は、他の科目での学びにも広がっていきます。様々な場面で、「自分がやっていることの意味が今はわからなくても、最後まで真面目に取り組めば、ぱっと先の展望が開ける(こともある)」と考えられるようになれば、学習者として大きな成長を遂げたことになるのではないでしょうか。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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