教える技術#01 プレゼンテーション技術

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教える技術#01 プレゼンテーション技術
2016-09-08 更新




伝達スキルと授業デザイン New!

授業は、目標、評価、方法の3つの要素から構成されますが、方法に当たる部分は「伝達スキル」と「授業デザイン」とから成り立ちます。前者が調わないことには、学習目標の達成が遠ざかるのは言うまでもなく、まずはきっちりと伝わる状態を作らなければなりません。しかしながら、わかりやすさを実現してもかなりの割合で「できるようにならない授業」が残ります。学習目標を認識させ、アウトプットの機会を整える授業設計が必要です。

理解できないことにはできるようにならない/理解できることとできるようになることは別物/まずは、しっかり伝える技術を確立するこ



わかりやすい話し方

教員の話がきちんと聞き取れないことには、「わからない→できない」という流れも当然です。学習者の活動を中心にした場面でも「伝えるべきことをしっかりと伝えきること」 の必要性にはなんら変わるところはありません。先生の話が聞き取りにくい、集中して聴き続けられないという現象の背景には様々な理由があります。一つひとつ解消していくことで、生徒の集中を助け、しっかり聞き取れる状態を作りましょう。

話し方の不備は、学習活動のすべてを妨げる/教員の目と口が生徒から見える状態で話をしているか/短期記憶回路の飽和解消を図りながら話を進めているか/長すぎるセンテンス、主述の対応が不明確なセンテンスも危険/初見の用語は、目で確認させて手を使って書かせる/教室の環境整備にも細心の注意を/机間指導を行うとき、指名した生徒とやり取りをするとき/同じ刺激を連続させない/作業中の指示を徹底させる/テンポよく進めることが、集中力を維持させる/チェックリスト

強調の正しい方法

様々な手法で行われる強調。「目立たせることで、聞き漏らしや見落としを防ぐ」 という本来の目的を達するためには、どんな方法を取るかの前に、どこを強調すべきか、情報の重要度をきちんと判断しておく必要があります。その上で、重要度に応じた適正なエネルギーを学ぶ側に使わせるという発想で、その場に合った方法を選んでいく必要があります。

そもそも、強調というのは何のため?/どこを強調すべきか?/使ってみてこそ印象に残る/生徒に課す作業タイプの選択は、項目の重要度に応じて/接触頻度を高めることで記憶に残す/知識・情報にランク付け/その方法、本当に効果的ですか?/(蛍光ペンを使った、マークアップ・同じ項目を同じ形式で繰り返し尋ねる「重ね塗り型」の勉強・大事な部分に下線や傍線を引かせる)/強調のための話し方(大事なところほど、ゆっくり発音&欠かさず板書・問い掛けによって、受け止める側の準備を整えさせる・生徒自身に、理解を言葉にさせる/板書での強調)

問い掛けの多い授業が良い授業

教室で行う発問は、知識の有無を確認するだけのものではありません。発問を通じて、思考や行動が引きだされること、生徒の問題意識を刺激して情報を受け取る準備を整えさせます。しかし、せっかくの問い掛けにも生徒がまったくと言っていいほど反応できていないケースも。上手く機能させるために何が必要か、ポイントを整理しておきましょう。

発問には3つのタイプ/発問で生徒にミットを構えさせる/問い掛けを通じて、課題解決のプロセスを共時的に経験/問いを投げかけても、レスポンスを引きだせないのでは…/同じクラスなのに、授業によってこんなに違う?/不用意な指名が、他の生徒の発言を控えさせる/クラス全体に問いを投げかけ、発言をしっかり拾い上げる/授業で作られた 「良い習慣」 を転移させる/中学から高校に進んでも、あるいは大学生になっても

問答を通じて論理性を養う

問答を通じて、学習者の活動を引き出すことも、論理性や思考力を高めることが可能です。先生方が身につけるべきはことの一つは「即興で問いを立てるスキル」 であると考えます。また、協働性・主体性・多様性といった、学力の第3要素を養うには、協働学習の場を設けることが必要です。しかしながら、そのような活動に十分な時間を充て、且つ初期の成果を確実にあげるためにも、知識の伝達、手順への習熟、基本的な考え方の獲得を、効率よく完了させることが大切です。

様々な科目を学ぶ高校までに/問答は学習の活動性も大きく高める/板書を使ったインタラクション/観察を徹底して、地雷を踏まない/生徒の発言を元に、次の問いを立てるのが鉄則/失敗が許容される雰囲気を作るための習慣化/正解だったときも言語化を/例題などの解説を読むときにも

わからないでいる生徒を指名しても… New!

予習をしていない/宿題を仕上げていないことが明らかな生徒を指名したところで、うしろめたさを感じさせるのが関の山。次の機会に学習の姿勢に改善が見られなければ、自己肯定案を失わせただけです。相互啓発に満たされた教室を作ることにはなりません。生徒を指名するのは、問いや課題を与えて活動を引き出し「観察の窓」を開いてからです。なぜ、生徒を指名して発言させるのか、その意味に立ち戻って考えてみましょう。

答えられない生徒を待つ間、他の生徒が活動を止める/予習で作ってきた答えを言わせてみたところで…/他の生徒の発言を起点に学びを拡充する/予習や復習の履行率を高めるのに、外圧に頼らない

“理解度の確認”で伝達技術の向上を

伝える技術を向上させたり、教材・教具の使い方を改善したりするのに最も有効な手段は「逐次おこなう理解度確認」です。ただし、「わかりましたね?」を繰り返すだけでは意味がないのはご想像の通りです。また、導入の場面で有効な確認方法も、展開の場面やまとめの段階では十分な効果が得られないこともあります。場面ごとの目的をはっきりイメージしてから、どんな方法があっているのか考えることが大切です。

授業評価アンケートのデータでは…/「発問」による理解度の確認(前提となる知識や理解を確かめる場面、説明を進める中でそこまでの理解を把握する場面、まとめの段階など学びの成果を確認(たな卸し)させる場面)/小テストによる理解の確認/課題の点検を通じた誤答の分布把握(覚えることを主とする場面、解を導くことを主とする場面)

部分理解と全体把握

目の前で行われている説明はわかるけど、実は何のためにやっているのか学習者が全体像の中でとらえきれていないことがあります。部分理解が全体把握に繋がっていないということですね。 教える側は、科目・教科の全体像をとらえた上で部分を教えているのに、学ぶ側は部分を積み上げながら全体を把握しなければなりません。すでにAを学んでいる段階で、Aと関連するBを新たに学んだとき、教える側にとってAとBの関連性は自明でしょうが、生徒はそれに気づかないままでいることもあります。

教える側と学ぶ側の間に横たわるギャップ/少し進んでから行う学習目標の再確認/そこまでに書き上げてきた板書を振り返りながら/小学校や中学校で何をどのように学んできたか

理解の確認を怠ると… New!

理解度の確認は、生徒の学びを着実に積み上げるためにも、先生方の授業技術の改善課題を見落とさないためにも欠かせないものです。小テストは覚える練習/思い出す練習として不可欠ですが、即時性に欠けるほか、頼り過ぎては「理解」より「記憶」に偏るリスクアがあります。課題に挑ませる前に確認のステップを挟むこと、理解したことを言語化させることなど、いくつかの勘所をきちんと踏まえないと形だけの確認となってしまいます。

理解の確認で、学習効果を確かなものに/確認なしに進めては、苦手意識を増やすばかり/生徒の理解を確かめてこそ、指導改善が図れる/



板書の技術

板書は、教える技術の中核をなすもの。その機能と方法について改めて考えてみました。電子黒板やICTが教室に登場しても黒板の重要性は薄れません。協働学習の場でも、板書は欠かせない役割を担います。前段の情報を視野に固定し、後に続く情報を「知識」や「理解」に組み直すための土台となり、口頭説明の弱点を補うのが板書です。また、板書案を考える中で、どの情報をどういった順序で提示し、どのように配置していくかを考えることは、授業設計の精度を大きく高めます。

板書案作りは授業改善への最短ルート/板書がはたす役割(現在位置を目で確認させること、生徒の顔を教師に向けさせること、前段の理解を視野に固定すること、情報整理や課題解決のプロセスを共時的に体験させること)/導入場面での板書: 最小限必要な前提知識をクラスで共有/黒板に書き出すべきは、結果ではなく結果に至るプロセス/黒板上に残ったものを活用した、学びの振り返り/板書が多すぎて写すだけになってしまう/空白の枠を残しておくというテクニック/板書はその場限りだが、ノートはあとまで残る/実技科目、作業主体の場面でも/プリントを併用する授業での板書/パワーポイントを使うときに注意したいこと/事前に作り込むほどに、・・・/さらなる技術向上のために

学びを軸にICT活用を考える

ICT機器が広く導入され、その利用も進んできているようです。新しい技術の導入で何ができるかワクワクするものを感じます。でも、本来の目的である、生徒の学習を主体的なものにして、学習成果(=コンピテンスの獲得)を最大化するという方向をしっかり見据えないことには、せっかくの取り組みも投じたコスト(金と手間)に応じた効果は得ません。ICTの利用で可能になることと、生徒の学習を最大化することの接点について、部分的にではありますが考えてみました。

素晴らしい利用法も多々見られる一方で/せめて書画カメラの代わりぐらいには…/利用の促進と、学習に繋がる効果の向上/先生の作業時間をカットし、生徒の活動と観察に充てる/描かせることで理解を形成する場面でも/問い掛けも薄く、生徒は結論・正解を待っているだけ/板書とプロジェクタは、それぞれ違う役割を持つ/発問を重ねて作り出すインタラクションには板書が好適/保存したものを使って生徒相互が刺激し合う場を作る

板書とプロジェクタの使い分け

黒板とプロジェクタなどのICT機器との、有効な使い分けについて考えてみたいと思います。それぞれの長所・短所を十分に理解して、場面に応じた使い分けができることが、授業内の学びの密度を高めることに通じます。

黒板とプロジェクタ、どちらが教具として優れている?/動的な板書、静的なスライド/スライドを使う場合のハンドアウト/復習や練習の場面でも、画面切り替えの早さが活きる/具体的なイメージと、抽象化した理解/復習でもう一度見たいという生徒には

TIPS! 空所を残した板書

空所を残したまま、板書を行うことで、生徒の問題意識を刺激するという手法があります。授業の導入時や、新たな内容に進むときに用いれば、本時の学習を通じて目標とするところを示してくれます。空所は、埋めることを前提として認識されますので、このような板書をされると、「どういうことが下線部に補われるのか?」という問題意識が見た者(=生徒)の頭に浮かびます。

本時の学習を通じて目標とするところを示す/空所は、埋めることを前提として認識される/始業のチャイムと同時に板書を始めれば/問い掛けで生徒に考えさせて情報を受け止めやすい形に

ノートにメモを取らせる指導

板書されたものを写し取るだけでなく、足りない情報を補いながら、情報の評価を行い、大切だと思ったものを自ら書き留めていく、そんなことができるようにしていくことがノート指導の目的とするところではないでしょうか。メモを取るスペースを設けさせ、フィードバックを重ねながら自分でメモが取れるように導いている実践をご紹介します。

メモ用のスペースを作らせて/メモをとることの効果/何を書き込めば良いかを、実例の中で学ばせる/高校を卒業するまでに身につけさせるべきスキルとして

黒板を写すと活動が低下?

先生が黒板に書いたものを、そのまま写すだけなら授業を聞いていなくてもできます。目で見て、話を聞いて、いちど理解したことを、改めてノートの上に描き出すのであれば、思い出しやすく忘れにくい記憶になります。考えながらノートを取るという習慣と技術をどうやって身につけさせるか。これこそが教える側での知恵の使いどころだと思います。

目から入った情報が、脳を通過せずに手を動かしては…/問い掛けて、考えさせて、それから板書/できるだけ板書を見ないでノートを書き起こす練習/問われる態勢を解かせず、活動と組み合わせて集中力を維持

生徒のノートは授業改善への優れた教材

授業改善に向けた取り組み、というと外部講師を招いての講演や、研究授業や相互参観、あるいは教員によるワークショップなどが真っ先に思い浮かびますが、生徒が作ったノートやレポートも、非常に優れた教材のひとつです。準備や運営の負担を増やさずに、手近にあるものを積極的に使って、授業改善のヒントを探そうというのが本シリーズの主旨です。

時間の制約を受けにくいのは大きなメリット/生徒のノートを見て倣うべき範の所在を探す/自分が担当する授業でのノートは?/授業はその場で完結、でもノートはずっと残る/きちんとノートが取れているのはなぜ?/ノートを取らせる場面を実際に見て/生徒の工夫から学べること/生徒のノートから学ぶときの視点いろいろ/板書案のコピーでは満たされないもの

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得

問い掛けで生徒の気づきを促し、確認したことを描きだしていく板書には、「情報整理の過程を生徒自身に経験させる」という機能があります。教科書に記載されている事柄を、一つひとつ問いながら、重要な情報を拾い上げ、それを全体の流れに組み込んでいくプロセスを、生徒の眼前で展開して見せることが大切です。

参考書や教科書にマーカーで色を塗らせる方法/マークアップは、重要度ではなく情報のタイプ/カテゴリーで/空所を残したサブノートなら?/肝心な「仕組みに言及する部分」から意識が離れてしまう/補完手段としての、記述・論述タイプの課題/板書をしながら、情報整理のプロセスを学ばせる/生徒がみずから行うべきことを肩代わりしない!/軸を決めて、対話をしながら書き上げる/時短のためにはICT機器の活用も/共有と継承で、教員の側でも時間短縮


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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