探究型学習を使った進路指導(その3)
課題研究などのテーマを決めさせる前段階の指導が大切であるというのが、前稿の主旨です。
その生徒が過去に行った研究や学習が、次のテーマに直結したり、きっかけにできたりすれば、対象への関わりを深めていけますが、それに拘るだけでは広がりはありません。
テーマ選びに入る前に2か月ほどかけて、生徒のセンサーを鋭敏に保った状態で、興味あるもの、気になったものを新たに拾い上げさせるタスクを用意しましょう。
やらなければならないことがあれば、その分だけ触れる情報への感度が高まります。
❏ 気になったことで100のマスを埋めさせる
A3の紙に5×4のマス目を設けた用紙を5枚配りましょう。あとで切り分けますので、単純に線を引いておくだけでOKです。
ニュースや特番、新聞や雑誌、各教科の学習を通じて気になったことを見つけるたびに、その場でマス目にメモを起こして埋めていきます。
全部が埋まれば、5×4×5で100個のメモが作られます。
2か月で100個ですから、単純計算で一日2枚程度。着実にこなしていこうと思えば、毎日新聞に目を通す習慣も身につくかもしれません。
❏ 簡潔で、役に立つメモの取り方を学ばせる
メモを起こすときは、単語だけを残しても、後になって何のことだったか本人ですら思い出せなくなることがあります。
短くても良いので文の形を採らせた方がよさそうです。
「テーマに関わるキーワードを3つ以上入れて、主述をきちんと置く」というルールは如何でしょうか。
メモを上手に取れるかどうかは、生徒がそれまでの学習の中で獲得していた「メモの技術」「分類・整理の方法」に大きく左右されます。
こうした技術や方法を獲得していなかった生徒にとっても、テーマ選びに備えて日々メモを取り続けてみるのは、良い機会になりそうです。
❏ 常に用紙を持たせて、気づいたことはその場でメモに
この指導をやりきるためには、何はさておき、常時その用紙を生徒に携行させておくことがポイントです。
用紙はマス目に合わせて折りたたませれば、小さくなりますから、手帳などに挟んでおくこともできます。
家でテレビを見ているときも、授業で様々な科目を学ぶときにも、アンテナさえ高くしておけば、色々な気づきがあるはずです。
メモを起こすのは、後でまとめてとか、週末に思い出しながら、というやり方ではうまく行きません。
気づきは、短期記憶ですから、ものの数分で上書きされてしまい、何を思いついたのか思い出せなくなります。
❏ 進み具合を確かめながら、情報を集める方法を学ばせる
タスクを着実に進めさせるには、定期的な履行点検は欠かせません。
「いくつ埋まったか」と数えさせるより、「前回以降に起こしたメモで一番気になっているのはどれ?」と訊いてみるのがお奨めです。
前者の場合、管理されている感が前面に出て、「マス目を埋めればいいんでしょ」という意識になり、興味を見出させるためのせっかくのタスクに面白味を見いだせなくなってしまいます。
後者のアプローチなら、自然とメモを広げざるを得ません。マス目が用意されているだけに遠目でも、どのくらい進んでいるかは一目瞭然です。
「一番は何?」と聞かれてメモを読み返しますから、メモを取ったときの気持ちを思い出し、そのテーマや周辺に対するアンテナを張り直す機会にもなります。
こうした点検機会を通して、互いがどんなテーマを拾い上げているのかを知れば、生徒は互いに発想を刺激し合います。
面白いメモがあれば、どこで見つけたかを訊くことで、他の生徒はそれを耳にして情報に接触するための方法を学ぶことにもなります。
❏ 分類・整理を通して、潜在的な興味の所在を探る
100個が埋まったら、マス目をハサミで切ってカードにさせましょう。
カードにできたら、それを似たようなものを近くに集め、ジャンル分けやグループ化で整理していきます。いわゆるKJ法ですね。
中にはマインドマップを描いて整理する生徒もいるかもしれません。生徒は、思いのほか、色々なことを小学校から経験しています。
100枚のカードを分類してみると、当然ながらカードの集まり具合に濃淡が生じます。
人は、関心のある情報しか認識しませんから、カードがたくさん集まっているところが、その生徒の興味と関心のありかを示しています。
その4に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
その生徒が過去に行った研究や学習が、次のテーマに直結したり、きっかけにできたりすれば、対象への関わりを深めていけますが、それに拘るだけでは広がりはありません。
テーマ選びに入る前に2か月ほどかけて、生徒のセンサーを鋭敏に保った状態で、興味あるもの、気になったものを新たに拾い上げさせるタスクを用意しましょう。
やらなければならないことがあれば、その分だけ触れる情報への感度が高まります。
❏ 気になったことで100のマスを埋めさせる
A3の紙に5×4のマス目を設けた用紙を5枚配りましょう。あとで切り分けますので、単純に線を引いておくだけでOKです。
ニュースや特番、新聞や雑誌、各教科の学習を通じて気になったことを見つけるたびに、その場でマス目にメモを起こして埋めていきます。
全部が埋まれば、5×4×5で100個のメモが作られます。
2か月で100個ですから、単純計算で一日2枚程度。着実にこなしていこうと思えば、毎日新聞に目を通す習慣も身につくかもしれません。
❏ 簡潔で、役に立つメモの取り方を学ばせる
メモを起こすときは、単語だけを残しても、後になって何のことだったか本人ですら思い出せなくなることがあります。
短くても良いので文の形を採らせた方がよさそうです。
「テーマに関わるキーワードを3つ以上入れて、主述をきちんと置く」というルールは如何でしょうか。
メモを上手に取れるかどうかは、生徒がそれまでの学習の中で獲得していた「メモの技術」「分類・整理の方法」に大きく左右されます。
こうした技術や方法を獲得していなかった生徒にとっても、テーマ選びに備えて日々メモを取り続けてみるのは、良い機会になりそうです。
❏ 常に用紙を持たせて、気づいたことはその場でメモに
この指導をやりきるためには、何はさておき、常時その用紙を生徒に携行させておくことがポイントです。
用紙はマス目に合わせて折りたたませれば、小さくなりますから、手帳などに挟んでおくこともできます。
家でテレビを見ているときも、授業で様々な科目を学ぶときにも、アンテナさえ高くしておけば、色々な気づきがあるはずです。
メモを起こすのは、後でまとめてとか、週末に思い出しながら、というやり方ではうまく行きません。
気づきは、短期記憶ですから、ものの数分で上書きされてしまい、何を思いついたのか思い出せなくなります。
❏ 進み具合を確かめながら、情報を集める方法を学ばせる
タスクを着実に進めさせるには、定期的な履行点検は欠かせません。
「いくつ埋まったか」と数えさせるより、「前回以降に起こしたメモで一番気になっているのはどれ?」と訊いてみるのがお奨めです。
前者の場合、管理されている感が前面に出て、「マス目を埋めればいいんでしょ」という意識になり、興味を見出させるためのせっかくのタスクに面白味を見いだせなくなってしまいます。
後者のアプローチなら、自然とメモを広げざるを得ません。マス目が用意されているだけに遠目でも、どのくらい進んでいるかは一目瞭然です。
「一番は何?」と聞かれてメモを読み返しますから、メモを取ったときの気持ちを思い出し、そのテーマや周辺に対するアンテナを張り直す機会にもなります。
こうした点検機会を通して、互いがどんなテーマを拾い上げているのかを知れば、生徒は互いに発想を刺激し合います。
面白いメモがあれば、どこで見つけたかを訊くことで、他の生徒はそれを耳にして情報に接触するための方法を学ぶことにもなります。
❏ 分類・整理を通して、潜在的な興味の所在を探る
100個が埋まったら、マス目をハサミで切ってカードにさせましょう。
カードにできたら、それを似たようなものを近くに集め、ジャンル分けやグループ化で整理していきます。いわゆるKJ法ですね。
中にはマインドマップを描いて整理する生徒もいるかもしれません。生徒は、思いのほか、色々なことを小学校から経験しています。
100枚のカードを分類してみると、当然ながらカードの集まり具合に濃淡が生じます。
人は、関心のある情報しか認識しませんから、カードがたくさん集まっているところが、その生徒の興味と関心のありかを示しています。
その4に続く