習熟度別クラスと考査共通問題(その2)

習熟度別クラス編成では、進度差は設けず、単元ごとの学びの深め方で差をつけていくのが好適であるというのが、前回の主旨です。成績上位の生徒が集まるクラスでは、「思考」や「表現」の要素を多く取り入れ、既習内容の習熟に不安があるクラスでは、集団知で課題に挑ませるなど、状況に応じた学習を設計しましょう。

今回は、定期考査を学年共通問題で行うことの必要性について、ご一緒に考えていただこうと思います。


❏ 共通問題にする理由

定期考査を共通問題で行うのには様々な理由があります。

考査問題で何を測るかは、授業で何を学ばせるかとイコールであるため、考査を共通問題とすることで、担当間でのばらつきを抑え、学校としての出口学力を保証することもその一つです。

学校を選ぶとき、受験生が「○○先生に数学を習いたい」と考えているとは思えません。ごくまれな例外はあるかもしれませんが、生徒募集において学校が謳った教育理念やその内容を信頼して学校を選んで入学してくるのが普通です。

学校として担保すべき出口学力というものが存在しなければなりません。教え方や指導手順などアプローチは、先生ごとに独自のものであって然るべきと思います。しかしながら、目指すべき到達点(=卒業までに身につけさせる学力)がどこであるかに、食い違いが生じてはいけないはずです。

考査問題を作り、その得点率で目標を設定する中、「どんなことを、どんなレベルで求めるのか」を、十分に議論し、目に見えるところで互いに点検することは、欠かせない仕事の一つです。


❏ 相互の目で、考査の妥当性を高める

考査問題は言うまでもなく評価のためのモノサシ(cf. 考査問題の妥当性)です。モノサシに照らした評価を通じて、生徒と教員の双方が「目標への差分」を知って「次に何をすべきか」を見いだします。モノサシが歪んでいては、学習も指導も方向を間違えることになりかねません。

テスト問題を一人で作るだけでは、見落としや考え方の偏りもあろうかと思います。それを防ぎ、考査の妥当性を高めていくのが、相互の点検であり、先生方同士で行う議論です。
担当クラスごとにそれぞれの先生が考査問題を作り、それぞれに相互点検や議論を行うのでは、作業が重複し、手間が増えるばかりです。共作とすることで、考査の評価性能を高めると同時に、先生方のお仕事も効率化を図りましょう。


❏ 共通したモノサシで「優良実践」を見つける

これらに加えて、共通問題で行う定期考査には、さらに大きな意味があります。考査の結果を比較することで優れた指導法の所在を特定し、そこから抽出された知見を共有することです。

複数の先生がそれぞれのクラスを担当した場合、同じ考査問題を実施しても設問ごとの正答率や大問の得点率には差が生じます。高い得点率をマークしたクラスでどんな指導がなされたのか、教科会などで実践報告の場を定期的に持つことで、先生方が互いに学ぶ機会が作れます。

点数差はもともとの学力差から生じるものかもしれませんが、継続的に出来具合を把握しておき、折れ線グラフを描いてみれば、グラフの傾き(=経時的な差分)の大きさから、生徒を大きく伸ばした「倣うべき指導法」の所在を見つけることが可能です。

導入をどのように行ったか、どんな課題を与えたか、何をフィードバックしたか、授業に取り入れたアクティビティは?・・・優れた結果を残したクラスの実践は、間接経験として校内で共有するべきものと考えますが、如何でしょうか。


❏ 内部の優良差分にこそ学ぶべきものがある

校外で行われる研修会やセミナーは、発想を拡げ、新しい手法を学ぶ貴重な機会ですので、積極的に活用したいものです。しかしながら、外部から取り入れたソリューションが、校内の環境にそのまま適合するとは限りません。

内部に存在している「優良差分」こそ、その学校の環境に適した方法である可能性が高いはずです。校外からの学びは、様々な先生がそれぞれの持ち技を駆使し、担当クラスで新たな発想や手法を試し、そこから生じた差から、自校に合った手法に昇華させていくことが大切です。

なお、模擬試験でも同じようなことはできますが、全国模試などの外部試験は、学校ごとのカリキュラム(探求型学習と各教科の関連付けなどを含む)にぴったり合ったものではありません。学校の指導計画に沿った、より正確なモノサシを得るには、きちんと作り込まれた定期考査問題や校内実力テストが最善の機会ではないでしょうか。


その3に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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