習熟度別クラスと考査共通問題(その3)

定期考査を共通問題で行い、優良差分から指導知見を抽出し、それを共有していくことが学校全体での指導力を高めていくことになります。今回は、習熟度別クラス編成を採った場合の共通問題のあり方と、その結果をどのように利用すべきか、シリーズの冒頭で提起してそのままにしてあった問題に対し、考えるところをまとめて締めくくりといたします。


❏ 考査問題を2部構成に

考査問題を作成するとき、「知識・技能」を主として測定するAパートと、「思考力・判断力・表現力」に主眼を置いたBパートに分けることをご提案したいと思います。

ちなみに、学力の三要素のうち、「主体性・多様性・協働性」は、どちらにしてもテストでは測れませんので、パフォーマンス評価の規準を別途設けることになります。

「知識・技能」を中心とするAパートは、大問1~3の60点、「思考力・判断力・表現力」のBパートを大問4、5の40点分にしたと仮定します。

標準クラスの生徒には、まずはAパートで7割の得点を目指させ、担当する先生方もそれを指導の必達目標にします。考査結果に基づく補習の対象者を選ぶときにも、Aパートの得点で線引きをするのが好適です。Bパートは4割得点できればOKとするなら、100点満点の場合、60点×0.7+40点×0.4で合計58点が目標値です。

一方、発展クラスでは、Aパートはしっかりと8割以上取らせ、Bパートでも6割の得点を目指させるとしましょう。60点×0.8+40点×0.6で、72点が目標点数となります。

A/Bパートの配点比率は、入学時から徐々に高めていくのが好適です。入学当初は7対3とか8対2でも良いと思います。最終学年の後半では大学入試というハードルを越えなければならない以上、比率は逆転して3対7、あるいは4対6くらいまで引き上げていきましょう。


❏ パートを分けることで、指導上の改善課題を発見しやすく

考査問題を2部構成にすることで、指導上の改善課題も特定しやすくなります。

Aパートはしっかり得点させられるのに、Bパートが振るわないとなれば、「思考力・判断力・表現力」を鍛える授業内活動をもっと増やさなければなりません。

逆にAパートでの躓きが多いようであれば、小テストなどで定着を促す指導を強化することになるはずです。

授業内での時間の使い方に加え、家庭学習で取り組ませる課題のタイプも調整していくことで相乗効果を狙いましょう。

また、前稿で触れた、「内部の優良差分」も、総得点だけを見た時よりはるかに見つけやすくなります。Bパートでしっかりと点数を取らせることができているクラスでは、そうした指導が効果的に行われているはず。Aパートばかりで点数を稼いでいるなら、定着に偏り、活用がおろそかになっている可能性を疑わなければなりません。


❏ 目標管理に「平均点」はNG

シラバスや学習指導計画に記載された、重点目標には通例、数値での目標値が明示されています。評価基準でも同様です。

しかしながら、少なからぬ学校で目標を「平均点」で表記しているのには疑問を感じます。

「平均の生徒」は実在しません。また、得点でヒストグラムを描くと、正規分布とはかけ離れた形になることも少なくありません。正規分布というのは、平均値と中央値と最頻値が一致する状態ですが、あくまでも理論値であり、学年在籍の300名ほどの母集団でこの形になったら奇跡です。

目標の管理は、基準値(○点以上)を満たした生徒の割合で行うべきです。

家庭学習時間などもそうですが、ごく一部の生徒がものすごい時間を稼ぎ、平均を押し上げたとしても、全く勉強していない生徒がたくさん残っているのでは、指導が十分な効果を上げているとは思えません。

一人ひとりについて、目標に達したかどうかを観察し、その割合を高く引き上げていくことが、指導のあり方であると考えましょう。

【追記】

定期考査の共通問題化には、様々な利点がありますが、理科や地歴公民では、科目の担当者が一人しかいないことも少なくありません。セミナーなどの出張先で出会った先生方で、学校間のネットワークを築き、問題作りを一緒に行う仲間として、あたかも校内で行うかのように、研鑽を積んでいる先生もいらっしゃいます。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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