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zoom RSS 学び方における守破離

<<   作成日時 : 2019/04/02 05:38   >>

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生徒から「説明はわかりやすい」「とても面倒見が良い」「訊けば何でも答えてくれる」と言われて悪い気はしませんが、"自ら学び続けられる生徒を育てる"という目的に照らすと、如上の評価を受けたときの心地よさに胡坐をかいてばかりはいられない気がします。もしかしたら、学習者としての自立にブレーキをかけているかもしれません。

頼りになる先生が目の前にいるときは良いですが、やがては手放し巣立たせる生徒です。一人になったときにも立ち止まらず、自分で学び、道の拓き方を考えられるように育てるには、「学びにおける守破離」を意識して教室に立つ必要があるのではないでしょうか。

教えること、学ぶことについて、数多の金言が方々で語られています。その中には、互いに真逆のことを訴えているように思えるものも散見されます。そのうちの一組が第二次世界大戦期のアメリカ陸軍軍人であったジョージ・パットンと、同時期の日本海軍軍人であった山本五十六が残した言葉。双方の比較から「教える」ことについて考えてみました。

2015/04/28 公開の記事をアップデートしました。


❏ やり方は教えず、何をすべきかを伝えよ

Never tell people how to do things. Tell them what to do and they will surprise you with their ingenuity.
人にやり方を教えるな。何をすべきかを教えれば、人はその創意工夫で驚かせてくれる。

ジョージ・パットンによるとされる言葉ですが、今日では、管理職向けの書籍に、部下を育てるときの指針としてよく登場しています。

やり方をこと細かに教えるだけ、それに従わせるだけでは、自ら工夫を加えることも、予想外の障害に出会ったときに知恵を働かせる方法も姿勢も身につかないでのはないでしょうか。

解内在型の課題(=既に誰かが正解とそれに至る過程を明らかにしている課題)ならば、過去に成功を収めて方法を示すだけで事足りますが、誰も解決したことがない課題であれば、そもそも解決の方法を教えることが不可能です。

また、仮に上首尾に成果を収めた方法であっても、それが最適解である保証はなく、もっと効率が良く、派生的な効果さえ期待できるような別の方法も存在するかもしれません。

教えられた方法だけに依存するようになっては、こうした可能性を追究する姿勢も失わせかねません。


❏ やってみせ、言って聞かせて、・・・

やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。

こちらは云わずと知れた山本五十六の(ものとされている)言葉です。

前半の2節では、教える側がまず手本を示し、きちんと言葉で説明することの大切さを、次の2節では、生徒自らに実際にやらせてみた上で、出来たことを評価して見せることの大切さを説いています。

教示スタイルの授業における「演習→展開→演習→まとめ」のフレームと通底するものがありますよね。

何の下地もなく、使うべき道具(知識や理解、繰り返し用いる手順等)を携えていない学習者に「さあ、考えろ」と言ったところで、的外れな行動を取るか、最初の一歩すら踏み出せないかのいずれかでしょう。

これでは返り討ちは必至。生徒は自己有能感も獲得できず、対象に接近しようとする意欲すら次第に失っていくかもしれません。

授業評価アンケートのデータを見ても、「先生の説明がわからない以上、できるようにならない」という因果は明らかです。


❏ どちらか一方だけが正解ではない〜段階的な移行を

さて、「やり方を教えるな」と「やってみせ、言って聞かせて」は、真逆の立場を伝えているように思えますが、両者の違いは、対象にしている学習者(元の文脈では部下だと思いますが)がいるステージの違いによるものと考えるべきものだと思います。

学習者が未熟なうち/初期のステージにいるときは、「やってみせ、言って聞かせる」ことに重きを置き、成功体験に導くことが肝要です。

最初から手掛かりなしに試行錯誤を繰り返すだけでは、「巨人の肩に乗る」(先人の成果を踏みしめることで、より遠くを見通す)こともできず、前の世代と同じところをうろうろするだけです。

下手をすれば、後退だってあり得ます。

逆に、ある程度の道具立てを揃えてきた学習者に対し、こと細かに指示を出しては、伸びる芽を抑えることにもなりかねません。

人に物事を教える仕事に就いた以上、教え子に乗り越えていってもらうことこそが使命です。

伝統的な芸事における師弟関係を表現していると言われる「守破離」という考え方が、一見矛盾する2つの金言をうまく繋いでくれます。

教室の中では「やってみせ、言って聞かせて」と「やり方を教えるな」をときに行き来しつつ、徐々に後者の比率を高めていくことで、2つの金言はともに教室の中で活きるように思われます。

ちなみにあまり知られていませんが、山本五十六が残したとされる如上の言葉には次のような続きがあります。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

学習者の成長から目をはなすことなく、上手に、段階的に手を放していくことの大切さを忘れないようにしたいものです。


■ご参考記事:
  1. 学習方策は課題解決を通して身につく
  2. 学びにおけるインプット(input)とインテイク(intake)
  3. "丁寧に教える"ことを取り違えていないか
  4. できない? やらない? やらせてない?
  5. 教科固有の知識・技能を学ぶ中で


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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