戸惑いを抑える、約束事と個々の指示

何らかの行動を指示したときに、生徒が期待通りの反応をとれないことがあります。原因は様々ですが、大別すると「何を求められているのか把握しかねている場合」と「指示に応える態勢が整っていない場合」の2通りがあります。これに加えて、取るべき行動はわかっており態勢も整っているにもかかわらず、周囲の様子を伺って行動を起こして良いものか躊躇している場合も少なくありません。

2015/05/27 公開の記事をアップデートしました。

授業評価項目[実技系]② 戸惑わせない指示
授業中の約束事や先生の指示は明確で、戸惑わずに行動できる


❏ 細か過ぎる指示には弊害も大きい

指示が大雑把過ぎては、取るべき行動を具体的にイメージすることはできませんが、細か過ぎる指示にも弊害があります。
  1. 一つひとつの手順にばかり意識が向き、全体として何を目指しているのかわからなくなる

  2. 説明や注意など、先生が話している時間が長くなり、生徒の活動を圧迫し、退屈させる
ベースとなる約束事(どんな場面でも守るべき原則)をはっきりさせておき、生徒が既に承知していることを繰り返さないようにしましょう。

何よりも、貴重な授業時間を有効に活かすために、生徒の側で出来るようになっていることをベースに、簡潔な指示を心がけたいものです。

 ■ できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない
 ■ 不用意な“待て”をかけない(全4編)


❏ 指示の背景にある意図や理由は伝わっているか

丁寧な指示や注意がなされても、取るべき行動をその背景にある目的や理由と結び付けて捉えることができないと、ひとつひとつをバラバラに覚えるしかありません。

当然ながら、聞き落としたり、途中で忘れてしまったりすることもあれば、少し条件や環境が変わっただけで応用できない(=正しい行動が選択できなくなる)ことも予想されます。

指示や注意を与えたときは、その理由をこちらから尋ねて、言語化/意識させるようにしましょう。特に大切な事柄であれば、ペアやチームで話し合ってみる時間をとっても良いぐらいです。

こうした訓練を続けていくことで、徐々に「状況に応じた適切な判断」を生徒自身ができるようになります。目的や理由を考え、最適な行動を自ら選択できるようにするのも、大切な教育目標の一つです。


❏ 指示の積み上げと完成イメージからの逆算

新しいことを学ぶというのは、行ったことがない目的地を目指すのとどこか似ているのではないでしょうか。

目的地までの地図を見てから、道順を説明してもらうのと、ゴールの位置を知らされないまま進み方だけ聞かされるのではだいぶ大きな違いがあります。

完成予想図を見ることなく、目の前に積まれたパーツを組み合わせていくのも厄介なことですよね。

学習活動においても、手順が多層化して複雑な場合は、最終イメージに加え、途中の状態などもあらかじめ見せることが戸惑いや誤解を抑える効果を持つことがあります。

特に、類似の活動や作業を経験したことが少ない生徒は完成イメージを持っていないことを前提に、指示の組み立てを考えるのが得策です。


❏ 想定している前提状態が整っているかどうかの確認

先生が指示を出すときは、先に出しておいた指示を生徒が完了していることを前提としますが、前段で間違えていたり、その段階に達していない状態であったら、言われた通りにしたことがキズを広げる可能性があります。

指示を出す前に、状況の確認を確実に行うようにしましょう。「今、手元はこういう状態になっていますか」という一声を掛けたり、映像で見せたりするだけでも、如上のリスクは大きく低減されます。

 ■ 生徒に見えている景色を想像しながら教えているか

蛇足ながら、コンピューターでプログラムを組むとき、"エラー処理"というステップを組み込みます。

何らかの処理をする前に、条件が整っているかどうかをチェックし、不具合があれば下処理を挟んで次のステップに進むフローのことです。

人とコンピューターでは対象が違いますが、指示という行為そのものに関しては、共通する基本的な考え方として、常に認識しておきたいことの一つではないでしょうか。


❏ やり方を考えさせるのも大切なトレーニング

先生があらかじめ想定した手順を伝え、それを着実に履行することを求めるばかりでは、生徒が方法を考える機会を持てないことになります。

学び方における守破離でも書きましたが、言われたことを覚えて守るだけに終始しては、学習者としての自立には向かえません。

最終的に目指す姿だけを示し、「どのように進めれば良いかは各自/話し合って考えなさい」というのも大切な指導ではないでしょうか。

この場面では、生徒に考えさせて、意見として発言させるとともに、発言へのフィードバックや理解をさらに深める問い掛けを行うことが先生方の大切な仕事です。

また、失敗から学べることは少なくありません。危険が生じないケースなら、まずはやらせてみて、失敗の理由を特定できれば、より良い方法を考えるきっかけになり、思考力のトレーニングにもなるはずです。

 ■ できない? やらない? やらせてない? 


◆ 改善のための必須タスク:

授業中の約束ごとを明確にしておくことは、それぞれの場面での指示を簡素化することに通じます。シンプルな指示の方が、戸惑いも少なく従いやすいことは言うまでもありません。目指すべき状態をしっかり伝えたのち、ワンステップずつ簡潔な指示を出し、特に大切な部分は生徒自身に自分の言葉で表現させるようにしましょう。


◆ さらなる改善を目指して:

指示や約束事についてその理由まで含めた深部で理解できれば、生徒はより適切な判断ができるようになります。指示を出しながら問い掛けてみて、その意図するところを意識させることが重要です。練習・作業の後の振り返りで指示や手順の理解を深めれば、メタ認知の向上により、一層主体的な取り組みも期待できそうです。




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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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