授業を受けて実感する学力の向上や自分の進歩

日々の授業を通じて学力向上や自分の進歩を実感する生徒は、高い確率でその科目への興味や関心を深めるというデータ(下図)があります。自分で工夫や努力をして目標を達成したという快体験は、次の学習に向けたモチベーションを生み出しますし、進路意識や志望理由を作り出す学習指導、進路指導、探究活動で作るスパイラルの起点になります。

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2015/05/18 公開の記事をアップデートしました。

❏ 学び続けることが、認識できる範囲を広げる

興味や関心に加えて、そこから生まれる「もう少し頑張ってみよう」という気持ちは、努力して達成した中にはじめて生まれます。

教室は、"興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場" です。達成や進歩を感じられなければ、学びも「酸っぱい葡萄」になってしまいます。

学び続けることに意義を見失い、諦めてしまった領域では「認知の網」がそれ以上に広がらないことも大きな問題です。

人の脳は、知っていることしか認識しません。新たな情報に触れても、既に知っていること/理解をもとに想像できることしか認識に上らず、その情報は意識を素通りしてしまいます。

高校は、好き嫌いや進路希望に関わらず、すべての科目を偏らずに学べる最後の機会。卒業までに"認知の網"をしっかり張らせましょう。

自分の将来を左右するような偶然と出会った時に、それに気づき、しっかり掴みとるためには、その科目が受験に必要であろうとなかろうと、学びを続けさせる必要があります。


❏ 理解を着実に短時間で作る伝達技術は大前提

話し方板書説明の各項目で、わかりやすいとの評価を得られなかった授業では、生徒は「出来るようになった」と感じていません。

理解させる必要があることを確実に伝える「伝達スキル」は、どんな場合も欠かせないもの。ベースとなる理解の形成に余計な時間がかかってはその先の学びに十分な時間を当てられなくなります。

もし、如上の項目で評価が振るわない状態であれば、それらのボトルネックを外す必要があります。

意図的に生徒の頭に「クエスチョンマーク」 を残すのと、理解させようとしてもできなかったり、わかっていないのに気づいてあげられないのとでは、まったく意味が違います。


❏ 学力向上感∽目標理解×活用機会×授業内活動

しかしながら、「わかりやすい」と高く評価された授業の中でも、生徒が「できるようになった」と実感しているとは限りません。

目標理解活用機会授業内活動の3項目は、学習効果と密な関連があり、どれか一つでも欠けると学力向上感は得られません。

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これらを実現してもなお、生徒が得る「学力向上感」が足りないようなら、別稿「終了時の工夫で成果を高める(記事まとめ)」でご紹介する方法もお試しください。

 ■ ボトルネックを探すときは順序を間違えない


❏ 知識の獲得は、課題解決に向けた思考の中で

知識は思考の道具ですから確実に獲得を図らなければなりませんが、活用の場面と切り離しては断片化した(生きて働かない)知識が蓄積されるだけになりがちです。

生徒は、何のために学んでいるのかも認識できず、モチベーションの原資となる達成感よりもやらされ感が先行しかねません。

以下を踏まえるだけでも、「解くべき課題/問いの付与」にこそ学びの成果を高めるための鍵があることはおわかりいただけると思います。

  • 手持ちの知識で問いの答えを考える中、足りない知識の所在に気づけば、「足りないパーツを獲得する」ことへ意欲も生まれます。

  • 課題を解決する中で理解の軸が作られ、個々の知識を結びつける先ができることで、記憶への定着も進みます。

  • 思考は、解くべき課題があってはじめて発動し、協働で解決すべき課題があってこそ対話が活性化(気づきが増大)します。

なお、学びの場における"対話"は、周囲の生徒と交わすものだけではありません。先生と交す問答や、書籍や資料を介して先人との思考に触れることも大切な対話のひとつです。

形式的に生徒同士の話し合いの機会を作ることに腐心するのではなく、参照型教材を徹底して使い倒すことや、自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ「対話の相手」をきちんと考え、授業中の活動を選択・配列するようにしたいところです。

◆ 改善のための必須タスク:

学習を通じて達成感を与えるには、本時の学習で到達すべき状態を生徒との間で共有しておくことが前提です。また、疑問を残さずに理解できても、出来るようになったとの認識に必ずしも繋がりません。習ったことを使った課題解決を経験させましょう。個人での達成が困難な課題は集団知を活用すべくグループで挑ませましょう。


◆ さらなる改善を目指して:

学習の成果を実感させるには、生徒の側で十分な手応えを感じられるだけの負荷と思考を経たアウトプットの場が必要です。やや難しいという水準をキープしつつ、振り返りの機会を通じて出来るようになったことのたな卸しと次に向けた課題形成を促しましょう。必達課題と挑戦課題を複線的に設ければ学力差にも対応できます。



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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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