規律ある生活を送り、集団生活のマナーを守れること。大切なのはわかっていても、そう簡単ではありません。 「私は、規律ある生活を送るとともに、集団生活のマナーを守れるようになった」 この質問に答えさせるだけでも、色々な効果が期待できます。 ひとつは、「内省を促す効果」 。質問に答えることを求められることで、意識がそこに向かい行動を改めるきっかけになります。 もうひとつは、外から見て想像していたものと、生徒自身が感じていることのズレを察知できること。ズレを解消せずに放置しては、相互理解は進まず、信頼関係の構築も妨げるのではないでしょうか。 ❏ 外からみた姿と生徒側の認識のずれ ルール、マナー、モラルに対する意識を高める指導を行っても、生徒の中での意識が狙った通りに変化するとは限りません。 また、意識と行動が一致するとも限りませんよね。本人に聞いてみて、教員側からの観察と照らすことでわかることがあるはずです。 校則を守らせる指導がきちんと行われているとの問いへの答えと、自分が守っているかという質問への答えは、必ずしも一致しません。直観的に予想がつきますが、実際のデータでもその傾向が見られます。 ❏ 変化を見て、今なすべき指導を考える 内面的な変化が現れていないときに外からの圧力だけをかけても、却って反発を招いたり、信頼関係を壊したりするばかりです。 生徒側の認識の変化を、冒頭の質問に答えさせる中で把握しつつ、指導の強弱を調整していくことも必要です。 以前に比べて肯定的な回答が減ってきたら、そのタイミングで打つべき手があるはず。好機を逃せば後になっての手当てが大変になるだけです。 逆に行事などの体験を通じて、生徒の側に意識の変化が生じたら、次のステップに進む指導のチャンスかも。 如上の質問に限りませんが、生徒の意識は、様々な場面で尋ねてみたり、表現させてみたりするのが肝心です。 ❏ 「規律ある生活」を具体的にイメージさせる 校則や先生が示した規範に従わせることも、確かにルールを守ることではありますが、必ずしも「規律ある生活」 という言葉からイメージされるものとイコールではありません。 ルールや取るべき行動の意味を考え、場面に応じた適切な判断ができないことには、生徒はただ従っているだけです。主体性とは反対の方向ですね。 ロングホームルームの年間計画の中や、ホームルーム合宿を機会に、「高校生にとっての規律とは何か」 をテーマに、生徒にディスカッションさせている学校がありました。 生徒自身が取るべき行動と、その行動が必要とされる理由とを、与えられたものとしてではなく「自分たちで導いた結論」 して受け止められる生徒が増えてきたとのお話を伺いました。 ❏ ビジネス手帳を用いた日々の振り返りも効果的 ビジネス手帳を用いて、自己管理の方法と習慣を身につけさせようとする指導は、多く見られるようになってきました。 生活の記録を残すだけでなく、日々の内省の機会を整えることにも役立っているようです。 手帳を通じた担任の先生とのやり取りの中で、生徒は自分が考えたこと/感じたことにフィードバックを得ます。 自己を客観化したり、行き詰まりから抜け出すヒントを得られたりと、様々な効果をもたらすのではないでしょうか。 ただし、毎日、全員の手帳を点検するのでは先生方の負担も小さくありません。オーバーフローは形骸化に繋がります。曜日ごとにグループ分けして提出させるなど、継続可能な範囲に負担を抑える工夫も必要です。 ❏ 変化が現れるのを展望をもって待つ 頭でわかったことがその場で行動に移され、次の瞬間から習慣として定着するようなことは極めてまれでしょう。 段階を踏み、行ったり来たりを繰り返しながら変化や成長が見られるのが普通です。展望をもって、じっくりと待ちたいものです。 変化を捉える指標(規準)がはっきりしていれば、中長期にわたる変化も捉えやすくなります。 学期ごと、あるいは半年ごとくらいの間隔を空けて定点観測をしていき、日常の中に埋もれて観察できなかった変化も捉えられるようにしましょう。 ❏ 意図的な指導をしたら、その前後の変化で効果測定 なお、規律について考えさせたり、マナーを身につけさせるための研修を行ったりしている場合、きちんと効果測定をしたいもの。 ただ実施すれば良いというものではありません。効果測定を行いながら、指導の継続的な改善を図らないと、生徒も先生も忙しくなるばかり。 指導を行う直前と、指導を行って数週間、数か月という間隔を置いて、生徒の意識を尋ねれば、指導の効果も把握できます。 >>> このシリーズのインデックスへ ![]() |
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授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識”
授業評価アンケートについて、座学・講義系 と 実習・実技系 とに分けてそれぞれの評価項目と質問文を考えてきました。繰り返しになりますが、質問文は学習指導を実践するうえで実現を目指すべき状態をイメージして文章にしたもの(=評価規準)です。その集計結果は、目標までの距離を以って授業改善の課題形成に、また前回までとの比較から改善行動の効果測定に活用することができます。 ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2015/06/18 04:43 |
アンケートで尋ねるべき生徒の意識(更新開始)
2016-07-19 更新開始 ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2016/07/19 08:21 |
学級経営、生徒意識の把握
1 授業評価アンケートと同時に行う調査1.1 学級経営を定量的にとらえて知見の共有を 1.2 授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識” 2 アンケートで探る“学ぶ側の認識” 2.0 アンケートで探る“学ぶ側の認識” (序) 2.1 アンケートで探る“学ぶ側の認識”(その1) 2.2 アンケートで探る“学ぶ側の認識”(その2) 2.3 アンケートで探る“学ぶ側の認識”(その3) 2.4 アンケートで探る“学ぶ側の認識”(その4) 3 学級経営に関する評価項目3.1 生徒意... ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2017/01/20 07:39 |
教科学習指導の土台はホームルーム経営
授業評価アンケートにおける「この授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感するか」という質問にYESと答えてもらえるかどうかは授業担当のスキルとデザインによる部分が大きいのは当たり前ですが、学級経営を通して「生徒が互いに刺激し合い、ともに成長するクラス」を作れるかどうかにも大きく影響されます。 ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2018/08/02 08:25 |
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