活動を配列するときに考えるべきこと(その3)

授業内にアクティビティ(活動)をどのように配列するかを考えるときには、その前に「できるようにさせたいこと」(到達目標)をはっきりさせておくことが大切です。

ここでの到達目標は、学習内容の理解に加えて、内容(コンテンツ)を学ぶことで獲得する能力・資質(コンピテンシー)や学びの姿勢と方法も含まれるはずです。目標をしっかり見据えて、その達成に必要な学習活動を選択・配列するようにしましょう。

くれぐれも活動も自己目的化しないようにしたいところ。50分を生徒が元気に過ごしたことと、それを通して生徒が何かを新たにできるようになったことは別物です。


2015/07/06 公開の記事をアップデートしました。

❏ パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ

授業内外に学習活動を配列することの目的は、それを通じて「できるようになったことを増やすこと」にあることは言うまでもありません。

誰かが既に導いた解を教えてもらって、それを忠実に/丸ごと覚えただけでは、同じ問題には正解を再現できるでしょうが、問い方を少し変えただけで手が出なくなる可能性があります。

せっかく「○○とはどんなことか」「○○の理由を述べよ」といった理解と思考、表現を求める問題を用意しても、問題へのアプローチを間違えたら、その問題を解くのに必要とされる力を生徒は獲得できません。

先生が作ってきた正解と解法が示され、それが正しい/合理的であることを示す説明しかなされなかったら、生徒は正解を導く工程をひとつも経験していないことになります。

うっかりするとやりがちな「正解はアだね。空所に補ってみるとこんな意味になるね」 という説明が抱える問題点は、まさにここにあります。

 ■ 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる

学習の捉え方は、パフォーマンスモデル(これまで何を学んだか)からコンピテンシーモデル(これから何ができるか)へと転換します。

他人が作った答えを教わって再現できても、自力でできることが増えていないのなら、そこでの学習は成功とは言えません。ある課題に取り組ませたことで、生徒が自力でできることをどのくらい増やせたかで指導の成果を測るという発想から離れないようにしたいものです。


❏ 課題解決工程の実地体験でコンピテンシーの増大

できることを増やすには、解を導く工程を、解法を考える段階から仕上げるところまで、生徒が自分で経験する場面を作るしかありません。

丁寧に教えて、不明を残さずに学習内容を理解させるというアプローチだけでは、現代社会が求める学力の形成は図れないということです。

別稿、「教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計」でも書いたように、まずは、本時/単元の学びを終えたときに答えを作れるようになって欲しい問題をターゲットに設定しましょう。

その上で、その解決に必要なパーツ(知識、発想、手順など)を特定して、それらをどのような学習活動を通して生徒に獲得させるかを分類してから、それぞれに必要な活動を授業内外に配列していくことが、授業を設計するときの基本的な手順/考え方だと思います。

ここで言う、学習活動は、大別すると以下の3つになります。

  1. 教科書や資料を自力で読ませ、理解させる
  2. 個々に考える/周囲と話し合う中で気づかせる
  3. 説明を聞かせて理解させる(手掛かりができたら 1. や 2. に戻す)

学び終えてからその成果を確認する(=指導の効果を測定する)にも、獲得したはずの知識を、習った時と違った形で使うことを求める問いや課題が必要です。

そうした問い/課題に、解を導く/答えを作ることに取り組んでみてはじめて、生徒はその使い方(知識の活かし方、働かせ方)をさらに深く学び、使い方の視点を広げます。獲得した知識に「意味の拡張」を図ることも視野に置いた、確認のための問題を用意しましょう。


❏ 仕上げ/確認の場でも、学びの深まりと広がりを狙う

仕上げや確認のための問い/課題に取り組む中で、そこまでの学びに不足していたもの(残った不明や見逃していたこと)に気づいたときに、どのような「活動」でそれを解消させるかも大切です。

先生が教えることだけを手段としては、不明の解消、気づきの補完を図る手段を生徒は学べません。

まずは、手元にある教科書、ノート、副教材に「コンサル先」を求めさせましょう。わからないことがあったら、調べて必要な知識と情報を得る姿勢と方法を学ばせるチャンスを逃さないようにしたいものです。

せっかく参照型教材を購入させて持参させているのに2学期になってもまだ新品同様というのでは、使わせていない責任も問われそうです。

次に求めるべきコンサル先は、周りの友達でしょう。教え合い、学び合い(=集団知の活用)のメリットを学ばせることで、協働性などの涵養にもつながっていくはずです。

一人が持ち合わせている知識や発想だけでは解決できない問題も、周囲との対話によって知識・発想・気づきの交換をすることで解決の糸口が得られることはしばしばですが、これも体験させないと生徒は実感としてその効用を学ぶことができません。

かように申し上げましたが、生徒が抱えた不明に、先生が丁寧に対応することの重要性を否定するものではありません。

安易に答えを教える/不明に答えることが、生徒が自力でできることを増やすチャンスを奪ってしまう「副作用」をきちんと認識したうえで、生徒に最適な行動を取らせる(=その場での学習活動を選択する)ことこそが、本当の意味での「丁寧な対応」なのだと考えます。

その4に続く

このシリーズのインデックスに戻る


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

  • 活動を配列するときに考えるべきこと(その3)

    Excerpt: アクティビティ(活動)をどのように配列するかを考える前に、できるようにさせたいこと(到達目標)をはっきりさせておくことが大切です。目標に到達するために必要な活動を選択・配列するようにしましょう。この視.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-06 07:30
  • 活動を配列するときに考えるべきこと (その2)

    Excerpt: 授業中に生徒に参加させる活動も、それが自己目的化してはいけません。アクティブラーニングの目的は「思考を活性化」させることであり、口と手を活発に動かすことではないはずです。貴重な授業時間を投じて行う活動.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-06 07:32
  • 活動を配列するときに考えるべきこと

    Excerpt: 知識付与型の授業への反省から、生徒主体の学習への転換が図られる中、様々な活動が授業の中に組み込まれるようになりました。途切れることなく配列された活動に、生徒がノンストップで取り組んでいる授業も増えまし.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-06 07:33
  • 活動を配列するときに考えるべきこと(その4)

    Excerpt: できるようになったことがどれだけ増えたかが、コンピテンスモデルにおける学習成果の測定指標であり、日々の学習に「課題解決の工程を生徒自身が経験する場」を整える必要があるというのが前稿の主旨でした。協働学.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-07 05:35
  • 活動を配列するときに考えるべきこと(その5)

    Excerpt: 思考とは、題意の分解と解への再構成のために知識を活用すること。そうした場面を授業内外にきちんと配列することも重要ですが、活用すべき知識を所持するか、アクセスできる状態にしておかなければ話は始まりません.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-08 05:23
  • 活動を配列するときに考えるべきこと #INDEX

    Excerpt: 知識伝達型(教授スタイル)の教え方から、生徒主体の学びへの転換が図られる中で、授業内には様々なアクティビティが配列されるようになってきています。確かに教室は活気に包まれていて、居眠りをする生徒も見かけ.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-07-09 05:37
  • 探究を軸に教科の学びをつなぐ

    Excerpt: 各教科の学習を重ねる中で、生徒は様々なものを身につけていきます。教科固有の知識や技能、考え方を学習・獲得していくだけでなく、「汎用スキル」 と呼ばれるものや、「学習方策」 などもまた生徒の内に形成され.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2016-05-20 05:52
  • 知識の活用、学びの仕上げ

    Excerpt: 1 課題解決を通した知識活用の機会1.1課題解決を伴わない知識獲得は…(序) 1.1 課題解決を伴わない知識獲得は…(その1) 1.2 課題解決を伴わない知識獲得は… (その2) 1.3 伝達ス.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2016-12-27 08:24