生徒に問いを立てさせる

"主体的、対話的な深い学び"は、次期学習指導要領のキーワードのひとつですが、その実現のカギをにぎるのは生徒に自ら問いを立てさせることだと思います。

教員からの発問や教科書会社が用意した設問が、学習者一人ひとりの興味を刺激するとは限りません。他人が作った問いに答えるという、いわば「他人事」に従っても、主体的な学びになるとは思えません。

また、教材以外の、設問を与えられない文章を読むときに漫然とした受動的な読みに戻ってしまっては元も子もありません。

このように考えてみると、自ら問いを立てさせてみること、その練習を教室の内外で積ませていくことで、生徒の学び方は大きく変わっていくのではないでしょうか。


❏ 問いを立てること、イコール教材に深く関わること

他人が作った問いは、たとえどれだけ洗練されたものであったとしても、生徒にしてみれば「そんなこと、どうでもいいじゃん?」という場合もあります。

「正解は何?」「それを覚えておけばいいんでしょ?」という姿勢を示したとしても、無理からぬものを感じます。

ところが、文章や資料の中にポイントになりそうなところを探させ、問いに仕上げなければならなくなったら話は違います。

どんな背景があるのか、何を前提にこう言っているのか、伏線となった出来事はどれだ、筆者はどうしてその言葉を使ったのか…。

問いを立てようとすると、自ずと深く探りながらその文章を読み深めなければなりません。

当然ながら、読み深めていくうちに、新しい気づき、見落としていたことの発見があります。こうした気づきが面白さに転じて、さらに深く読み進めようとします。

問いを立てさせるように見えて、実のところは、深く読む場面を作っていることに他ならないのかもしれません。


❏ 国語や英語以外でも

上の例は、現代文の教材を例にとったものですが、言うまでもなく、古文、漢文、英語でも同じことができます。

また、地歴公民や理科でも、教科書に書かれていることを覚えれば良いという意識を覆すこともできます。

教科書やプリントの資料をまず生徒自身に読ませて、ポイントになりそうなところを設問に仕立てさせてみましょう。

教科書は、紙面の制限もあって、大胆に情報を削り落とした書き方をしています。きちんと問いを立てようとすると、教科書に書かれていない情報や周辺の事実を調べてみる必要を感じ取る場面も出てきます。

史料集や要覧のページをめくったり、図書室を利用する生徒だって出てくるはずです。スマホでググってごまかす生徒もいるかもしれませんが、最初のうちは大目に見ましょう。

順調に回り始め、生徒が問いを立てることに面白味を感じ出した段階で、「参考とした文献があれば明記(ただしWikipediaは禁止)」 というルールを加えれば良いだけの話です。

班ごとに競わせてみても面白いことになります。他の生徒が立てた問いに触発されて、もっと気の利いたエレガントで洗練された問いを作りたいという生徒だって出てくるかもしれません。


❏ 問いを立てさせることの意味

文章を通読してそこに書かれたことを分かった気になった/覚えただけでは、読みは深まらず、「正しく読めた/ちゃんと理解した」 という手応えを得ることもできません。

達成感が希薄であり、次に向けたモチベーションや挑戦欲がかきたてられることもなさそうです。教材に問いを加えることで課題に仕立てることが、学習者に達成感や目的意識をもたせることになります。

問いを立てる行為は、"教材の課題化"というプロセスを、生徒自身の手によって行うことです。

先に述べた通り、深く読み、広く調べるという行動も伴いますので、学習の成果は、先生の話を聞いているときより、はるかに大きいものが期待できるのではないでしょうか。

こうした指導は、受験直前期に行っても、出題者の意図を読み取る力を養いますので、得点力向上にも役立つと思いますが、成果が出るのに少々時間がかかりますので、受験期を待つのでは遅すぎる気がします。

まだせっぱつまっていない、できるだけ早いうちから繰り返し経験させておくのがよさそうです。

生徒が問いを完成させて、まだ余裕があるようなら、次は模範回答と採点基準を作らせてみましょう。答案を書き上げるときの注意点を、作問者側の視点で学んでいける貴重な機会です。


❏ 追記: 問いを立てながら読むことは、書き手との対話

対話は生徒同士で交わされるものだけではありません。先生とのやり取り(問答)も対話ですし、教科書や資料、書籍などを読みながら行う文字を介した書いた人との対話もあります。

記述式・論述指摘の問題が増えれば、答案を通じた採点者との対話も意識しなければなりません。

教科書などに書かれたことの表面をなぞり、それを鵜呑みにするのでは、対話は成立しません。

「どうしてそういうことが言えるのか」「言わんとしていることは何か」といった問いを立てながら読み進めてこそ、主体性を持った読み、対話を通じた理解の深まりが生まれます。

教科書をきちんと読ませることは、対話的な深い学びの入り口です。

課題解決に協働で取り組むこともなく、先生の講義を黙って聞いているだけ、教科書・資料も先生が丁寧に読み解いてくれるというのでは、対話はどこにも生まれず、発想の交換による知の広まりや、思考の深まりは期待できないのではないでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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