答えを仕上げる中で学びは深まる

授業を通して学力の向上や自分の進歩を実感できることで、生徒はその科目を学びつづける意欲を維持・向上することができますが、その実感をもたらすのは「習ったことを使って課題を解決できた体験」です。

課題を与え、知識や理解を活用する場面を整えることが重要なのは言うまでもありませんが、とりあえず答えが出せたところで立ち止まらせては深く確かな学びは生まれません。答えを仕上げてこその学びです。

問いを軸に授業を設計するなら、その仕上げにどう向かわせるかこそが大事。納得いく答えができるまで課題にじっくり取り組ませましょう。


2018/08/30 公開の記事をアップデートしました。

❏ 仮の答えを仕上げ直す中にこそ、学びの深まりがある

導入→展開と進んだ後で、その日の授業で学んだことを用いて解くべき問題を生徒に与えて、理解の確認や学びの仕上げ(まとめ)の場とするのは、昔から広くみられる手順です。

しかしながら、多くの場合、生徒が答えを作るのは一度限りです。プラス α があっても、先生が提示した模範解答に照らして朱入れするぐらいで 終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

この流れでは、「生徒が自分の答えを仕上げる」という感覚には程遠いような気がします。結局は、先生が用意しておいた答えで自分の答えを上書きして、それを覚えるだけになってしまいますよね。

最初に作った答えのどこに不足があり、より良い答えに作り変えるには何が必要かを生徒自身が気づけないことには、いつまで経っても「正解が与えられるのを待つ」だけではないでしょうか。

学ばせているのは「答え」ではないはずです。答えを導く過程こそ、学ばせるべきものだと思います。


❏ 答えの仕上げに向かわせるには自己答案の評価から

自分が作った答えを、採点基準に照らしてみたり、他の生徒の答えと見比べてみたりする中で、客観的に評価してみることは「答えの仕上げ」に向かわせる入り口になります。

採点基準の適用というタスクが(最初のうちは)ハードルが高すぎるとしても、クラスの他の生徒が作った「特に優れた答案」と自分の答案を見比べてみることで、彼我の違いには気づけるものです。

新テストのモニタ実施の結果などは、自己答案の客観的評価ができていないケースが少なくない ことを示しています。

できないからとやらせなければ、いつまでたってもできないままです。少しずつやらせながら出来るようにさせて行くのが教室だと思います。

その日の学習目標を端的に表現し、且つ、思考・判断・表現の力を求める「ターゲット設問」を用意したら、同時に、答案を評価するための採点基準も生徒に示し、その適用にチャレンジさせてみましょう。

空所補充や正誤判定などの正誤が一義に決まる問題では、間違い直しで終わってしまい、答案の評価という工程は経験できません。思考力、判断力、表現力を鍛えるにも、試して評価するにも、「読んで理解したことをもとに考えたことを表現するタイプの問題」が必要です。


❏ 最初の答えと仕上げ直した答えの差分が学びの成果

ターゲット設問を提示したときに、手持ちの知識を頼りに「仮の答え」を作らせておき、授業を終えて「作り直した答え」と見比べさせれば、両者の違い/差分からは、その日の学びの成果を確認できます。

しかしながら、授業を終えた段階でも、すべての生徒が正解要件を十分に満たす答えを作り上げられているとは限りません。

教室を離れて、もう一度じっくりと課題に取り組み、自分の答えを仕上げさせる必要があることもしばしばではないでしょうか。

仕上げは次回までの宿題にして提出を求めても良いし、生徒自身に仕上げを任せられるようなら、正解は敢えて示さず「定期考査に出題するから、それまでに仕上げておきなさい」と突き放しても良さそうです。

すべての生徒がすんなりと模範解答を作れるようでは、ハードルが低すぎたのかもしれません。「苦労したけど、どうにか正解を導けた」というぐらいの負荷が、一番大きく生徒を成長させます。


❏ 仕上げに向かえるだけのレディネスを整える

答えの仕上げ直しを宿題にしても、そのまま持ち帰らせたのでは、すべての生徒が答えを仕上げ切れる保証はありません。

仕上げに向かえるだけのレディネスを備えさせてから教室を送り出さないと、端からできないと思い込み、諦めてしまう生徒も出てきます。

課題を与えた以上、仕上げ切れるように導くのは与えた側の責任です。

ここでは、ICTを利用して幾人かの答案をシェアして、「答案の相互評価」を行わせるのが好適です。

どちらの答案が好ましいか直観的に判断させるところから始めて、なぜそちらをより良いと考えたのか理由を言語化させれば、そこで作られたメタ認知は自己答案の評価にも活かされます。

様々な答案に触れるだけでも、解決に向けたアプローチにより広い発想が持てますし、欠けていた知識や理解の所在にも気づき、それを補おうと「インテイク」に向かう動機も生まれるはずです。

こうした活動の中で、「こうすれば自分の答案はもっと良くなる」というヒントが得られれば、仕上げ直しに向けたモチベーションも高まりますので、宿題の履行率や取り組みの積極性の向上も期待できそうです。


❏ 授業での気づきを総動員して仕上げる自分の答案

次の授業までの宿題にした場合は、「答え合わせ」をすることになりますが、ここでも「自力で答案を仕上げさせること」に注力しましょう。

せっかく作った答えを、先生が提示した模範解答で上書きしているようでは、結局、正解が与えられるのを待つところから抜け出せません。

正解に至るプロセスを十分に把握できたところで、改めて最初からきちんと書き直させてみても良いのではないでしょうか。作り直してきた答えにも赤ペンが沢山入った(まだ修正点が多かった)生徒には、新しいスペースにもう一度「最終稿」を書き直させた方が良さそうです。

部分の修正と全体の再構成とでは、頭の働かせ方がだいぶ違います。改めて「自分の答え」を書き上げる中で、新しい気づきがあったり、頭の整理が進んだりします。

たくさんの課題に次から次へと当たらせても、やりっぱなしになりがちです。ひとつの課題にじっくり取り組ませ、答えを仕上げさせることを徹底することで得られる学びもあるはずです。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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