答えを仕上げる中で学びは深まる

授業を通して学力の向上や自分の進歩を実感できることで、生徒はその科目を学びつつづける意欲を維持・向上することができますが、その実感をもたらすのは「習ったことを使って課題を解決できた体験」です。

課題を与え、知識や理解を活用する場面を整えることが重要なのは言うまでもありませんが、とりあえず答えが出せたところで立ち止まらせては深い学びは生まれません。

納得いく答えが仕上がるまで、じっくりと課題に取り組ませましょう。

2015/08/05 公開の記事を全面リライトしました。


❏ 仮の答えを仕上げ直す中にこそ、学びの深まりがある

導入→展開と進んだ後で、その日の授業で学んだことを用いて解くべき問題を生徒に与え、理解の確認や学びの仕上げ(まとめ)の場とするのは、昔から広くみられる手順です。

しかしながら、多くの場合、生徒が答えを作るのは一度限りです。先生が提示した模範解答に照らして○×をつけたり、朱入れをするぐらいで 終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

この流れでは、「生徒が自分の答えを仕上げる」という感覚には程遠いような気がします。結局は、先生が用意しておいた答えを示され、それを覚えるだけになってしまいますよね。

最初に作った答えのどこに不足があり、より良い答えに作り変えるには何が必要かを生徒自身が気づけないことには、いつまで経っても「正解が与えられるのを待つ」だけではないでしょうか。

学ばせているのは「答え」ではないはずです。答えを導く過程こそ、学ばせるべきものだと思います。


❏ 答えの仕上げに向かわせるには自己答案の評価から

自分が作った答えを、採点基準に照らしてみたり、他の生徒の答えと見比べてみたりする中で、客観的に評価してみることは「答えの仕上げ」に向かわせる入り口になります。

空所補充や正誤判定のような、正誤が一義に決まる問題だけでは、間違い直しで終わってしまい、答案の評価という工程は経験できません。

思考力・判断力・表現力を鍛えるにも試すにも、「読んで理解したことをもとに考えたことを表現する」ことを求める問いを用意しましょう。

生徒は、振り返りのためのアウトプットを通じてはじめて、インプットに不備があったことに気づけます。

このタイプの問題は自ずと正解にある程度の幅(許容範囲)がありますが、新テストのモニタ実施の結果では、自己答案の客観的評価ができていないケースが少なくないことが示されています。

その日の学習目標を端的に表現し、且つ、思考・判断・表現の要素を含んでいる「ターゲット設問」を用意すると同時に、答案を評価するための採点基準を示し、生徒自身にその適用を求めることが必要です。


❏ 最初の答えと仕上げ直した答えの差分が学びの成果

導入フェイズの目的と方法で書いたように、授業の冒頭で「ターゲット設問」を提示して、手持ちの知識を頼りに「仮の答え」を作らせておけば、授業を終えて「作り直した答え」との違いから、その日の学びの成果を確認できます。

しかしながら、この段階でも、すべての生徒が正解要件を十分に満たす答えを作り上げられているとは限りません。

教室を離れて、もう一度じっくりと課題に取り組み、自分の答えを仕上げさせる必要があります。

仕上げは次回までの宿題にして提出を求めても良いし、生徒自身に仕上げを任せられるようなら、正解は敢えて示さず「定期考査に出題するから、それまでに仕上げておきなさい」と突き放しても良さそうです。

すべての生徒がすんなりと模範解答を作れるようでは、ハードルが低すぎたのかもしれません。「苦労したけど、どうにか正解を導けた」というぐらいの負荷が、一番大きく生徒を成長させます。


❏ 仕上げに向かえるだけのレディネスを整える

答えの仕上げ直しを宿題にしても、そのまま持ち帰らせたのでは、すべての生徒が答えを仕上げ切れる保証はありません。

仕上げに向かえるだけのレディネスを備えさせて教室を送り出さないと、端からできないと思い込み、諦めてしまう生徒だって出てきます。

課題を与えた以上、仕上げ切れるように導くのは与えた側の責任です。

ICTを利用したり、生徒自身に板書させたりすることで、幾人かの答案をシェアし、「答案の相互評価」を行わせるのも好適です。

どちらの答案が好ましいか直観的に判断させるところから始めて、なぜそちらをより良いと考えたのか理由を言語化させれば、そこで作られたメタ認知は自己答案の評価にも活かされます。

様々な答案に触れることだけでも、解決に向けたアプローチにより広い発想が持てますし、欠けていた知識や理解の所在にも気づけます。

こうした活動の中で、「こうすれば自分の答案はもっと良くなる」というヒントが得られれば、仕上げ直しに向けたモチベーションも高まりますので、宿題の履行率や取り組みの積極性の向上も期待できそうです。


❏ 仕上げ直した答案をシェアし、相互啓発を働かせる

次の授業までの宿題にした場合は、「答え合わせ」をすることになりますが、ここでも「自力で答案を仕上げさせること」に注力しましょう。

間違えたところを朱書きで訂正させるだけでは、結局、正解が与えられるのを待たせているだけです。

正解に至るプロセスを十分に把握できたところで、改めて最初からきちんと書き直させてみても良いのではないでしょうか。

ノートに書いてきた答えに朱がたくさん入った(修正が多かった)生徒には、新しいスペースに「最終解答」を書き直させましょう。

部分の修正と全体の再構成とでは、頭の働かせ方が違いますので、改めて解答を書き上げる中で、新しい気づきがあったり、頭の整理が進んだりします。

たくさんの課題に当たらせるのとは違い、ひとつの課題にじっくり取り組ませることで得られる学びもあるはずです。


 ■やりきらせる責任~仕上げ切らないことを習慣化させない


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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