積極的に活動させるツボ(その2)

授業内の活動に生徒を積極的に参加させるには「失敗への恐れなどを上回る強い動機」を与えることが大切であると別稿で書きました。アクティビティを配列するだけでは目的意識のない「やらされ感」が先行するばかりですし、外圧で行動を促すだけでは外圧が解けたときに生徒は行動を取らなくなります。

こうした手段に拠らず、簡単にはさぼれない環境を作り、頑張った生徒には相応の達成感が得られる仕組みを作り出すことにこそ、教える側が知恵を絞ることが大切ではないでしょうか。ちなみに、その別稿ではこんなエピソードをご紹介させていただきました。

例えば、こんな場面をご想像下さい。ひとまとまりの英文をグループの人数に切り分けカードにして配ります。生徒はそれぞれ別のカードを持っており、互いに見せてはいけません。自分のカードを黙読し、理解した内容をグループの他のメンバーに伝えます。一人で勉強しているときなら「わからない」と諦めてしまうのも選択肢の一つでしょうが、チーム中での役割がある以上、そうもいきません。中には、辞書を引きながらきちんと理解した内容を的確に周囲に伝えている生徒もいれば、自分では意味が取れない箇所をひたすら音読して相手に意味を汲んでもらう作戦に切り替える賢い(?)生徒もいたりします。いずれの生徒も、各々の力量の範囲で出来る限りのことをしようとしています。ここでは多少の読み違えなど、意識の中で「避けるべき失敗」に入りません。伝えるという目的のもと、読む、話す、聞くという活動に、失敗を恐れず(忘れて?)取り組んでいる姿を想像していただけるのではないでしょうか。


2015/10/21 公開の記事をアップデートしました。

❏ 学びへの様々な動機を組み合わせて

目の前の活動を通して達成する目標の先に、進路希望などのさらに大きな目的を持っている生徒であれば、意味があると思える活動には一生懸命に取り組んでくれるでしょう。(但し、頑張らせるために目標を決めさせるという手法には落とし穴もあります。)
 cf. カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ

また、自らのうちにある不明を解消したい/興味を掘り下げたいといった内発的な欲求を見出している生徒であれば、学びに向けた強い動機を持ち、積極的に活動に参加してくれるはずです。(問いを投げかけることが不明の所在に気づかせ興味を抱かせる鍵です。)
 cf. 学ぶことへの自分の理由

しかしながら、先生方がどれほど熱心に仕掛けても、上のいずれにも該当してくれず、授業内活動に加わる動機を中々持てない生徒も一定数はクラスの中にいるものです。

そうした生徒たちを授業内の活動に巻き込む第三のアプローチが「チームの中での役割を持たせる」というものです。

チーム内で自分に割り当てられた役割があれば、そうそうサボって見せるわけにはいきませんし、逆に考えると、役割が明示的に与えられていなければ、空気を読みすぎる傾向にある生徒は、自分がどこまで前面に出ていって良いものかと、余計なところで戸惑いを見せたりします。


❏ 一人ひとりが活動の中で役割を持たせることの効果

一人ひとりが役割を持つということは、自分がさぼったら周りも巻き込んでしまうことを意味します。フリーライダーでいる(他人の成果にただ乗りしている)わけにはいきません。

自分に課せられた役割がある以上、わからないことがあってもそれを放置することはできないのは、スポーツの団体競技の場合と同じです。

プレーヤーの一人でも自分にアサインされた役割を放棄したら、チーム全体が機能しなくなります。演劇や音楽でも同じですね。

冒頭のエピソードにもある通り、自力で何とかしなければならないと覚悟を決めた生徒は、辞書を引いたり資料をめくったりと、あれこれ努力する姿を見せてくれるだけでなく、その過程において、わからないことを解消するための方策を自ら学んでいる様子さえ見て取れます。

自力でどうにもならない場合は、周囲に援助を求めることもあるでしょう。先生に質問するなら、質問そのものにあいまいさがあっても意図を汲んで答えてくれますが、生徒同士ではそうもいきません。

相手も自分の役割があって一生懸命に取り組んでいる以上、質問や相談は要領よくまとめて、短時間で簡潔に済まさなければなりません。

会社の中でそれぞれの仕事を片付けながら、周囲と協働している場面と似ていませんか。こうした場面を教室の中で経験させておくことは、生徒が学校を卒業し社会に出たときにも役立つものを身につけさせることにもなりそうです。


❏ 取り組みに方向性を与える行動評価とフィードバック

教室の中にせっかく用意した様々な活動にも、積極的に参加もしない生徒がいたら、そこで身につけるべき知識やスキルを獲得するチャンスを失います。

教室全体が盛り上がっていても、周囲が導いた答えに追従するだけの生徒(フリーライダー)が混ざることもあれば、積極的に取り組んでいるのに方向性を間違えている生徒もいたりします。

行動そのものを評価し、きちんとフィードバックすることで、「頑張ったときにきちんと見てもらえていた」「こうすれば良かったのかと気づけた」といった快体験と学びを積み上げさせることこそが、生徒一人ひとりの行動改善をもたらすはずです。

先生からの評価だけでなく、生徒による自己評価やチーム内での相互評価なども上手く採り入れていきたいところです。

用意したリフレクションシートやエバリュエーションシートを埋めさせるだけの、形ばかりの自己/相互評価では、如上の快体験や学びにはなりにくいものです。言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」という視点をもって評価とフィードバックに取り組みましょう。


❏ 目指すべき到達状態、望ましい行動を評価基準で示す

評価には、観点と規準が必要ですから、どのように取り組むことが期待されているのか、どこまで踏み込んだ参加が求められているのかを、言葉にして生徒との間で共有しておくことが重要です。

高校入試でも集団討論を課している学校で、採点規準をHP等で公表している場合がありますが、単に説明責任を果たすだけのものではありません。評価基準(観点×規準)に書かれていることを読み、どんな行動が求められているのかを受験者が把握できるようになるという機能に着目しましょう。

授業内活動でも同じことが言えます。活動の中で、どんな行動が求められているのか把握できれば、自分の振る舞いについて、充足している部分と足りない部分との切り分けができ、次の機会ではどのように行動しようか考える材料になります。

ルーブリックの導入に向けた試作に取り組む学校も多く見かけますが、完成を待って導入を遅らせては、使ってみての改善も図れず、絵に描いた餅のままです。少々乱暴に聞こえるかもしれませんが、評価規準は使いながらブラッシュアップという姿勢で臨むのが好適です。

その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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