授業内に行う小テスト

小テストは、前回までの授業で学んだことや自学用に持たせている副教材の内容など、覚えさせる/確かめる内容とそのソースは様々ですが、実施のタイミングは「授業の冒頭」というのが一般的だと思います。

始業の礼から間髪入れずに小テストを始めることが習慣として確立している授業では、休み時間からの切り替えもスムーズで、授業時間を無駄なく使うことにも大きく貢献しているように見えます。

これに対し、今回ご提案するのは、授業の途中で行う小テスト。授業を進める途中でそこまでに学ばせたことの確認と暗記に、ごく短い時間で取り組ませ、その場でテストするというものです。


2015/10/27 公開の記事をアップデートしました。

❏ 授業途中の小テストで後半の学びの土台を作る

ものは試し(多分、うまくいきます)です。キリのいいところまで授業を進めたところで、「3分後に小テストをします。ここまでの内容を確認して覚えること!」と指示を出してみましょう。

初めてのことに生徒は多少の文句を言ったり、戸惑いを見せたりするでしょうが、何せテストが迫っているだけに、教科書、ノート、プリントを見直し、大事そうなところを探して必死に覚えようとするはずです。

敢えて授業の途中に「小テストとその準備の時間」を割り込ませることには、大きく分けて2つの目的があります。

  1. そこまでに学んだことを確認することで、後半に計画している学習活動に取り組む準備を整えること

  2. 集中して覚える方法と姿勢を育むのと合わせて、そうした場面での生徒の取り組み方を観察すること

小テストに備えて、そこまでのノートやプリント、教科書や資料に目を通すことは、取りも直さず、学んだことを見直す機会です。わからないところは周りに訊いたり、先生に質問したりするはずです。

たとえ、記憶への記銘が十分に行えず、保持や自在の想起ができるところまで進まなかったとしても、授業後半に待つ学習活動に取り組むだけの土台は整ってきているのではないでしょうか。

教科書・ノートを見直したことで、発展的な勉強に進んでから参照すべき情報・知識の所在も確認できているはず。授業後半で討論や応用問題にチャレンジする中で不明に直面しても、「そう言えば、あそこに書いてあったな」と思い出せば、学びを止めずに済むはずです。


❏ 集中力を高めた復習&暗記ができるようにさせる

前掲 2. については、既に生徒に任せて良い状態にあると確認できたら、本来は生徒が教室を離れて個々に取り組むべき「復習と暗記」に貴重な授業時間をわざわざ割く必要はありません。普通に「小テストは授業の冒頭で」というスタイルに戻しましょう。

しかしながら、集中力を高めて短時間で復習&記憶に取り組むことを、初期状態できちんと/自律的にできている生徒ばかりではありません。

実際、日々の授業の中で小テストを課していても、合格点に達せず再テストの常連になっている生徒も少なくないのではないでしょうか。

叱ってやらせる、励まして頑張らせるだけでは成果が出ていないなら、やり方/取り組み方を生徒が学べる場を持つべきだと思います。

ちなみに、復習の習慣もしっかりと身につき、放っておいても「必要なことは自ら覚える」ようなら、小テストを行うこと自体が必要性に低いこと/カットすべき無駄な時間ということになりますが、そこに到達するのは容易ではありません。小テストには学習のペースメーカーという役割もありますので、計画的、効率的に実施したいところです。


❏ 授業を終えるときに小テストを行うという選択肢

小テストを行う目的が、前掲 2. だけであれば、授業を終えるタイミングで小テストを行うという選択肢もあります。

学習活動の流れを途中で切らないという点など、「授業の途中で」と比較したときのメリットもありそうです。

一方、授業終了時の小テストにはデメリットもあります。記銘(=授業で学んだ)からわずかしか時間が経っていないだけに、学んだことが長期記憶に渡され、保持されているか判然としないことです。

記憶への定着を目的として優先するのなら、通常通りの「次回の授業の冒頭で」に軍配が上がりそうです。

家に帰ってから復習&暗記に取り組み、小テストの直前にもう一度記憶を確認し、テストを受けながら想起&再記銘を同時に図るという一連の流れは、記憶の定着に欠かせない「反復」を確保するからです。


❏ 手順に習熟するための練習機会としても

新しい概念を前半で導入した場合、普通は、例題で確認し、類題、練習問題と進む中で習熟を図りますが、テストが備える、制限時間があって採点もされるという「ちょっとした緊張感」の中で真剣に問題を解かせることにも小さからぬ効果が期待できます。

やらせていることは、普段通りに問題を解かせているのと同じですが、ノートに書くかテスト用紙を用いるかの違いに加え、学んだことを確認して、頭に叩き込まなければならないという「負荷」が、生徒の学びに変化を与えます。

テストの結果を評定に組み込むような外圧は不要でしょう。先生にとっても採点・転記という仕事が増えるばかりです。その負担増に見合った効果が得られるとは限りません。

生徒が点数/スコアという結果が出ることにある種のゲーム感覚を持って取り組んでくれた方が、のびのびと且つ緊張感を持って学べそうな気がします。クラスの状況にもよりますが、制限時間は短めに設定して、あおり気味に行うことで集中力が高まるケースが多いようです。


❏ 忘却曲線のリセットと後半に向けたリフレッシュ

忘却曲線によると、記銘から20分経過すると42%の記憶が抜け落ちるとか。授業の冒頭で触れたことなら、授業の中盤で半分近くの記憶があいまいになるということです。

このタイミングで振り返りの場を作り、再記銘を図れば、その後の定着にも有利に働くのではないでしょうか。

単に「ここまでのノートを見直してみましょう」という指示に、真剣に反応する生徒は、放っておいても家に帰って復習してくれるはずです。問題は、そうではない生徒をどう復習に向けさせるかでしょう。

小テストという小道具で適度なプレッシャーを与えることが真剣さを引き出します。その中で、「頑張ればちゃんと覚えられるんだ」と自分を見直したり、頑張って成果を得ることを快体験と認識したりすれば、その後の学習生活にモチベーションを新たにしてくれるかもしれません。

また、授業の後半にはどうしても集中力が下がりがち。「覚える」という活動をリフレッシュに利用するのも一手です。


❏ 覚える練習を重ねて、覚え方を脳に覚えさせる

時間制限の下で集中して覚える努力は、頭の中の「覚えるための回路」を刺激し、覚える能力を高めます。覚えるのが苦手と言っていた生徒も覚える練習を重ねるうちに、単位時間で覚えられる量が増えた(=暗記が苦手でなくなった)という事例もあります。

記憶が苦手と自認している生徒は、覚える練習にもなかなか身が入りません。家に帰って時間に余裕があっても嫌々やっていますので、集中力は高まらず、鍛錬の効果も薄いものになります。

覚え方のコツは、人に訊いて学ぶものではなく、実際にやってみて経験的に獲得することが多いはずです。やらざるを得ない環境を作り、嫌でもなんでも覚えるという行為に取り組ませることも大切だと思います。

先生の目が届き、不明は周りにも訊ける教室という環境の中で、3分後に迫る小テストに向けて目いっぱい頑張らせてみましょう。



今後、小テストは用紙を配ってというスタイルから、ICTを使って行うのが主流になると思います。配布・回収の時間も節約できますし、採点もある程度までなら自動化できます。手軽にできるようになる分、その効用や目的をしっかり考えて行うことが大切だと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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