参照型教材を徹底して使い倒す(その3)
前の記事では、参照型教材(いわゆる参考書だけでなく用語集や例文集も含まれます))を常に手元に置かせ、頻繁に使わせることで得られるメリットを考えました。
実際の文章を読んだり課題を解いたりしながら、機会あるごとにページを開き、使い倒してきた参照型教材は、学習者にとって学びを進めるときの大きな拠り所になっているはずです。
使いながら書き込んだメモは、以前に学んだときの記憶も呼び戻してくれるはず。ノートにメモを取らせる指導と併せて、参照型教材をどんどん使わせていきましょう。
❏ これを使えば自力で勉強できるという認識を持たせる
教材の文章を読み解きながら、参照型教材の該当ページを開き、そこに書かれていることをもとに考えれば、文章が理解できていくという経験を重ねさせましょう。
生徒は徐々に、「初見の文章でも、この道具を使えばなんとなくわかるんだな」 と思ってくれるようになります。
教えてもらい、正解を与えられるのをただ待つだけでなく、参照型教材を頼りに自力で初見の課題に取り組もうとする姿勢を得たとしたら、その生徒は学習者として次のステージに進んだことになりますよね。
❏ やらせながら、自力でできることを増やしていく
こうした自己効力感は、何事にも代えがたい財産ですし、高校を卒業したあとも自分の興味に応じて様々な作品に触作れていく起点にもなるのではないでしょうか。
もちろん、"自力で予習ができる状態"にも近づいています。
肝心なことは、教えてしまった方が効率的と思える場面でも、ぐっと我慢し、生徒にやらせるべきことを先生が肩代わりしないことです。
できるようになったこともまた、どんどんやらせなければ、習熟の機会も得られませんし、こうすればもっとよくなるという工夫の姿勢も持たせられないのではないでしょうか。
❏ 個々の知識の重要度≒その知識を実際に使う頻度
単語集にしろ、文法書にしろ、編集者は知恵を絞って記載事項を精選していますので、どのページに書かれていることも等しく"重要度の高いもの"に見えてしまいます。
生徒にとって重要度の判断は難しく、「すべて覚えなければならない」と思ってしまうのも無理からぬことだと思います。
しかしながら、調べさせるごとにマークアップさせる指導を行ってみると意外な発見があります。教科書をひと通り学び終えた段階でもなお、ひとつも印がついていない項目が結構な数に上ることです。
もちろん、過去問演習に挑んでいけば印のついたものが増えるはずですが、少なくとも受験期を迎える前、導入期と拡充期の学習においてはあまり重要とは言えない項目も含まれているということです。
こう考えてみると、ごく初期の段階で無理に教え込む必要はない、という判断にならないでしょうか。
❏ そもそも、全体をあらかじめ網羅する必要があるのか?
項目そのものの特異性や面白さに気を引かれ、つい手厚く扱ってしまいたくなるものも、その後の学習で二度と出会わないようなものは、さして重要ではないということです。
本当に必要なものなら、その場で無理に覚えずとも、学習を進めていけば自ずと参照する機会がたくさん持てますので、繰り返しの中で記憶にも定着します。
当面はあまり使わない知識まで、あらかじめ網羅しようとすることが、学習者にとって(不毛とまでは言わないまでも)多少なりとも無理な努力を強いることがあると考えたいものです。
繰り返しになりますが、使わない知識は忘れます。
忘れることがわかっているのに無理に覚えさせることに「費用を超えた効果」があるとは思えません。
❏ 虫食い状態を作っておき受験期に埋めるほうが効率的
先にも触れたとおり、参照型教材は執筆者・編集者がデータに基づき頻度などから重要度を判断したものですから、受験本番を迎えるまでには仕上げきっておきたいもの。
しかしながら、導入期や拡充期にどれだけ苦労して詰め込んでみたところで、"学んでから経過した時間"と"記憶を想起できる割合"が反比例する以上、使う機会がなければ本番まで記憶が残る期待は薄そうです。
受験期を迎えた段階で、それまで学ぶ/覚える機会がなかったもの(=ひとつも印がついていないもの)を含めて、ページを追って全部覚え直す方が、トータルでの再記銘の回数は減らせるのではないでしょうか。
その頃までには、生徒も自分なりの覚え方を身につけていますので、覚えることの効率も高まっているはずです。
❏ 拡充期には、類似項目の比較を通じた整理を
その前に迎える拡充期においては、項目間の比較や、カテゴリーに分けた整理にも力を入れていくと、理解も深まりますし、記憶を繋ぎとめるアンカーも増え、記憶の保持が容易になります。
英語なら、接尾辞や接尾辞の機能、語幹から推測できること、互いに関連しあう文法知識の比較(共通部分と差分との切り分け)などを進めておけば、未習語の語義を類推する力も高められるはずです。
すでに使い倒して自分のものになった参照型教材が手元にあるはずです。問い掛けられたらページを開く習慣も身につけているでしょう。
そこに書かれている周辺知識にも意識を向けさせ、一緒に覚えておくべきことを確認していけば、いくつかをセットにした「まとめ覚え」で効率も上がるはずです。
その4に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
実際の文章を読んだり課題を解いたりしながら、機会あるごとにページを開き、使い倒してきた参照型教材は、学習者にとって学びを進めるときの大きな拠り所になっているはずです。
使いながら書き込んだメモは、以前に学んだときの記憶も呼び戻してくれるはず。ノートにメモを取らせる指導と併せて、参照型教材をどんどん使わせていきましょう。
❏ これを使えば自力で勉強できるという認識を持たせる
教材の文章を読み解きながら、参照型教材の該当ページを開き、そこに書かれていることをもとに考えれば、文章が理解できていくという経験を重ねさせましょう。
生徒は徐々に、「初見の文章でも、この道具を使えばなんとなくわかるんだな」 と思ってくれるようになります。
教えてもらい、正解を与えられるのをただ待つだけでなく、参照型教材を頼りに自力で初見の課題に取り組もうとする姿勢を得たとしたら、その生徒は学習者として次のステージに進んだことになりますよね。
❏ やらせながら、自力でできることを増やしていく
こうした自己効力感は、何事にも代えがたい財産ですし、高校を卒業したあとも自分の興味に応じて様々な作品に触作れていく起点にもなるのではないでしょうか。
もちろん、"自力で予習ができる状態"にも近づいています。
肝心なことは、教えてしまった方が効率的と思える場面でも、ぐっと我慢し、生徒にやらせるべきことを先生が肩代わりしないことです。
できるようになったこともまた、どんどんやらせなければ、習熟の機会も得られませんし、こうすればもっとよくなるという工夫の姿勢も持たせられないのではないでしょうか。
❏ 個々の知識の重要度≒その知識を実際に使う頻度
単語集にしろ、文法書にしろ、編集者は知恵を絞って記載事項を精選していますので、どのページに書かれていることも等しく"重要度の高いもの"に見えてしまいます。
生徒にとって重要度の判断は難しく、「すべて覚えなければならない」と思ってしまうのも無理からぬことだと思います。
しかしながら、調べさせるごとにマークアップさせる指導を行ってみると意外な発見があります。教科書をひと通り学び終えた段階でもなお、ひとつも印がついていない項目が結構な数に上ることです。
もちろん、過去問演習に挑んでいけば印のついたものが増えるはずですが、少なくとも受験期を迎える前、導入期と拡充期の学習においてはあまり重要とは言えない項目も含まれているということです。
こう考えてみると、ごく初期の段階で無理に教え込む必要はない、という判断にならないでしょうか。
❏ そもそも、全体をあらかじめ網羅する必要があるのか?
項目そのものの特異性や面白さに気を引かれ、つい手厚く扱ってしまいたくなるものも、その後の学習で二度と出会わないようなものは、さして重要ではないということです。
本当に必要なものなら、その場で無理に覚えずとも、学習を進めていけば自ずと参照する機会がたくさん持てますので、繰り返しの中で記憶にも定着します。
当面はあまり使わない知識まで、あらかじめ網羅しようとすることが、学習者にとって(不毛とまでは言わないまでも)多少なりとも無理な努力を強いることがあると考えたいものです。
繰り返しになりますが、使わない知識は忘れます。
忘れることがわかっているのに無理に覚えさせることに「費用を超えた効果」があるとは思えません。
❏ 虫食い状態を作っておき受験期に埋めるほうが効率的
先にも触れたとおり、参照型教材は執筆者・編集者がデータに基づき頻度などから重要度を判断したものですから、受験本番を迎えるまでには仕上げきっておきたいもの。
しかしながら、導入期や拡充期にどれだけ苦労して詰め込んでみたところで、"学んでから経過した時間"と"記憶を想起できる割合"が反比例する以上、使う機会がなければ本番まで記憶が残る期待は薄そうです。
受験期を迎えた段階で、それまで学ぶ/覚える機会がなかったもの(=ひとつも印がついていないもの)を含めて、ページを追って全部覚え直す方が、トータルでの再記銘の回数は減らせるのではないでしょうか。
その頃までには、生徒も自分なりの覚え方を身につけていますので、覚えることの効率も高まっているはずです。
❏ 拡充期には、類似項目の比較を通じた整理を
その前に迎える拡充期においては、項目間の比較や、カテゴリーに分けた整理にも力を入れていくと、理解も深まりますし、記憶を繋ぎとめるアンカーも増え、記憶の保持が容易になります。
英語なら、接尾辞や接尾辞の機能、語幹から推測できること、互いに関連しあう文法知識の比較(共通部分と差分との切り分け)などを進めておけば、未習語の語義を類推する力も高められるはずです。
すでに使い倒して自分のものになった参照型教材が手元にあるはずです。問い掛けられたらページを開く習慣も身につけているでしょう。
そこに書かれている周辺知識にも意識を向けさせ、一緒に覚えておくべきことを確認していけば、いくつかをセットにした「まとめ覚え」で効率も上がるはずです。
その4に続く