副教材、こなしきれていますか?

生徒の進路希望を叶えることに熱心なほど、副教材が「これでもか!」 というぐらいに膨らんでいく傾向があります。

目標大学に合格させるには、これもやらなきゃ、あれも削れないと思えてきますが、その熱意のままに(あるいは不安に負けて?)、容量超過を常態化させていないでしょうか。


❏ 仕上げずに放置する悪習慣を「学習」させない

やるべきことを仕上げ切らずに放置することを習慣化(学習)させては一大事です。

容量超過が続いて仕上げ切れないものが積み上がるうちに、最初は何とか頑張ってついてきていた生徒も、ちゃんと取り組む気持ちをしだいに失っていくことがあります。

真面目に小テストの準備をして臨むより小テストで出たものだけに絞って勉強した方が効率的と、上手なさぼり方、手の抜き方を覚えてしまう生徒も出てきます。

上手にさぼりったり手を抜いたりできるようになることも、ある意味では成長のひとつかもしれませんが、少なくとも教科学習指導の目標達成から遠ざかることは間違いなさそうです。

やるべきことを仕上げ切らずに放置することを習慣にさせては、その後の学習にも大きな支障をきたします。

 ■ やりきらせる責任~仕上げ切らないことを習慣化させない


❏ 知識や学習方策の獲得が遅れる中で

最初は「やればできる子」だったとしても「やらないからできない子」として過ごす期間が長引くほどに、既習内容の習熟不足が重なります。学び方の獲得も遅れるはずです。

その結果、やがて「やろうと思ってもできない子」に逆進化(退化)してしまうことだってあり得ます。

これからは頑張ろうと気持ちを入れ替えたときに、既習であったはずの事柄が定着していなかったり、覚え方や学び方を身につけていなかったりすると、勉強は思った通りに進みません。

やる気はあっても、実行するだけのパワーやスキルが足りず、目標達成への勝算が描けないとなると、生徒の中にあきらめの気持ちが頭をもたげてくるのは当然です。

手を伸ばしても届かいない目標は、イソップ寓話に出てくる「酸っぱい葡萄」です。「そんなものいらない」と対象から遠ざかってしまう生徒が出てきたとしても責めることはできないのではないでしょうか。


❏ やり切れる量を見極めて、課題を取捨選択

こうなる前に採るべき対策は、今まで以上におしりをたたくことでも、目先にニンジンを吊るすことでもありません。

課題を増やしてさらに追い込むという方策では、仕上げ切れないものを増やすだけですから、逆効果しか期待できませんよね。

指導者の側で、生徒がきちんとやりきれる量を見極め、課題の取捨選択をしっかりと行うことが唯一の選択肢だ思います。

年度の途中で、「やっぱりこれはやらない」と引っ込めるわけにもいきませんから、事前の見通しと履行可能性を熟慮した計画があらかじめ必要ということになります。


❏ 課題の付与は、必須とプラスαの二段構えで

意欲と能力に余裕がある生徒には、プラスαの課題を用意して伸びこぼしを防ぐ必要はありますが、全員に課すハードルは、履行率を高く保つこと/達成可能性を担保することを旨に、その高さを設定すべきです。

挑戦課題に回すべきものまで、全員に与えた場合、一部の生徒をのぞき大半が「仕上げきれない状態」に置かれてしまいます。

周りを見渡して、叱られないように形だけ整える生徒、仕上げずに放り出している生徒が方々にいたら、へんな安心感を持ってしまうのも当たり前かもしれません。

たとえが古くて恐縮ですが、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」になってしまったら、教室の雰囲気は大きく崩れかねません。

 ■ 知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて


❏ 副教材は、主教材で作った流れの中で使う

副教材の利用には、「あくまでも主教材で流れを作っておき、場面ごとの目的に照らしながら、副教材の関連箇所を拾って使う」 という発想が好適です。

コアの理解も固められないうちに、周辺を膨らませても定着は図れません。理解できないことを覚えようとしたら、丸暗記に頼るしかなく、保持と想起が難しくなるばかりです。

"時間の経過とともに忘却の彼方"では、後になって学び直しの手間が増えるだけと考えるべきです。

本シリーズ「参照型教材を徹底して使い倒す」でお伝えしている通り、
主教材を使いながら、虫食い的に副教材の完了部分を増やしていき、残りがわずかになったところで、通しで学んで仕上げていく
というのが最善の戦略だと思います。


❏ 課題は与えた以上、達成させるのが教える側の責任

副教材を揃え、漏れを作らない大きな「網」をかけたくなるのも、生徒の進路希望を実現させてあげたいとの熱意からのものだと思います。

でも、こなしきれない状態が長く続くことが、学習者としての悪習慣の獲得、退化の引き金にもなり得ます。

"これまでもやらせていたので、ここで引っ込めるのは不安"という気持ちに負けて最大限の網をかけることが、生徒につけを回す可能性があることを忘れないようにしたいものです。

課題は与えた以上、達成させるのが教える側の責任です。指導の序盤から着実に達成を重ねることで、後半戦でより大きな負荷に耐えられる状態を作っていくという戦略で指導計画を立てましょう。

 ■ 荷物を増やしても、学びが膨らむとは限らない
 ■ その宿題、本当に必要ですか?

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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