考査問題の改善が授業も変える(前編)

より良い授業を目指した工夫や取り組みは多々見られ、拝見するたびに先生方の熱意に頭が下がる思いを抱きます。しかしながら、指導の成果を試す考査問題の改善については、教室内での指導法と比較して、意識の下位に置かれているように感じます。


❏ 「教えたことを測るのがテスト」 との発想を離れる

教材が目の前にあり、それをどう教えるかを考えるのは、「教科書を教える」 という発想です。授業を進め、定期考査の時期を迎えて、教えたことがどれだけ定着したかを測る問題を作る――これを当たり前と考えるのはいただけません。

教えたことを考査に出題することできちんと復習させたい、授業を真面目に受ければ大丈夫と意識させたい――このようなお考えを全面的に否定するつもりはありませんが、習ったことをそのまま覚えるだけで、学習が完結するわけではありませんよね。

学習の習慣が確立していない時期には、如上のアプローチもある程度の効果は見込めると思いますが、ずっとこればかりでは「習ったことを覚えるのが勉強」 という誤った認識を持たせてしまいます。

「考査に出題するからやっておきなさい」 という指導は、できるだけ早い段階で通過・離脱したいもの。そのままでは学年が進んでから「受験でいらないから勉強しない」 という生徒からの逆襲にも耐えるしか手がなくなります。


❏ ゴールから逆算してイメージする「時期ごとの到達目標」

卒業するまでに獲得したい学力があるはずです。難関大学に合格する力かもしれませんし、学力の三要素についてバランスを整え、大学合格後に通用する力を考えているケースも増えてきているように感じます。

ゴールでの到達学力を起点に、時間を遡って逆算すれば、ある時期(学年・学期)で身につけさせておくべき学力像とその水準(その時点での到達目標)を定めることができます。

「教えたことをどこまで覚えたか」 というのとは明らかに何かが違いますよね。

ゴール逆算型の学力像は「何をできるようにするか」 というコンピテンスモデル(これから何ができるか)に基づくもの。これに対して、教えたことの確認を主眼とするのはパフォーマンスモデル(これまでに何を学んだか)、という区別を当てはめることができそうです。

教えたこと、生徒が学んだ(はずの)ことをどれだけ覚えているかを試す機会が定期考査である、という固定観念に囚われないようにしたいものです。

ちなみに、カッコ内に(はずの)とつけたのは、「副教材を与えておき、ちゃんとやっておいてね」という扱いをした場合、生徒がキッチリとやりきって「学んだ状態」 になっている保証はないことを意味してのものです。


❏ 到達目標の次に考えるのは「指導方法」ではなく「評価方法」

目標が決まっても、次に考えるべきは教材の扱い方・教え方ではありません。その前に評価方法を考えましょう。

言い換えれば、「どの教材をどう使って」「どんな活動を通じて」という指導手順を決めていくのは、どんな評価規準や検証方法で到達を測るか、明確にイメージを先行して描き出してからのことです。

どのような方法で、到達目標に達したことを検証できるかという問いに答えられないときは、到達目標そのものがあいまいであることを疑ってみてください。

蛇足ながら、目標が目標としてなり立つのは、{達成可能、かつ検証可能}という2要件を満たしている場合だけです。


❏ 到達目標に照らして行う授業設計がもたらす効果

ある学校では、評価方法の改善を図る取り組みの中で、考査問題の作り(構造や出題内容)をゼロから考え直しました。

既習内容の記憶・再現を試す部分と、それらを活用した課題解決力を試す部分の比率も見直され、初見材料を用いた応用力を試す問題も取り入れられるようになりました。

客観的に見てもテストの難易度は大きく跳ね上がっています。それなのに、採点結果を見ると得点分布は明らかに上方にシフトし、平均点も上がっています。

難易度が上がったのに、得点分布が上昇する。――よくよく考えてみれば十分にあり得る話です。


少々長くなりそうなので、その理由については後編で。

その2に続く


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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