考査問題の改善が授業も変える(後編)

卒業させるまでに身につけさせたい学力から逆算して、現段階で到達させたい目標を設定し、その到達を測れるテストを作ろう――こうした取り組みの中で、問題の難易度は以前よりも高まったにもかかわらず、生徒の点数は上昇している。決して珍しくないケースですが、この現象にも十分な説明がつきます。


❏ 到達目標・指導主眼の最適化が、授業改善&成績向上に

事前に到達目標を明確にしたことで、授業の主眼の置き方が、「教科書を教える」から「教科書で教える」への転換が図られたものと思われます。

当然ながら、授業そのものが変わり、目標ありきでそれに近づく指導がより効果的になされたはずです。アウトプットや振り返りの機会が作られ、習ったことを活用する機会としての課題が整備されたのではないでしょうか。

活動も、ただ元気に口と手が動くというものから、頭の中を活発に動かすものに変わったかもしれません。

生徒の側でも、授業に参加しての達成感や手応えを感じ取り、学習への取り組みに正しい方向を得たはずです。達成感はモチベーションの原資、生徒にとって「取り組むことへの自分の理由」です。

生徒がやる気になってくれたことが、教える側での行動変化(授業改善)との相乗効果を得て、以前を超える学習効果が上がったと考えれば、相反するかのように見える先の現象にも説明がつきます。



ここまでお読みになって、「うちの生徒には無理だよ」 とお考えにならないでください。

やらせてみないうちから、出来ないと決めつけるのは、生徒の可能性を見限るようなものではないでしょうか。

「可能性を信じてあげるからこそ、教える側と学ぶ側の関係が成り立つ」とは、私自身が若いころに師匠と仰ぐ先生からいただいた言葉です。


❏ 採点結果の集計方法を変えることで、授業改善の課題形成も

作問そのものの改善に加え、採点方法にも変更を加えたケースでは、更なる授業改善に向けた課題形成が一段と精度を高めることができます。

大問ごとに測定項目を明確に設定すれば、大問の小計値がそのまま、その生徒・クラスの学力傾向を表します。

総合点だけを見ても、その生徒やクラスの課題は特定できません。

総合点で輪切りにして補習の対象者を選んでも、補習で扱う項目は十分に理解している生徒が混ざることがありますよね。その生徒にとっては無駄とは言いませんが、あまり益のないことに時間を奪われていることにほかなりません。

逆に、総合点でセーフでも補習であつかう内容について習熟が不足していた生徒は、必要な学び直しをさせてもらえません。キャッチアップは自己責任ですか?

ただでさえ忙しい考査の採点期間に余計なことはできないとの反論は十分に承知しておりますが、投じるコストを超えたメリットが得られます。大問ごとが困難であれば、基礎部分と応用部分の2ブロックに分けて小計を出すだけでもずいぶん違ってくるはずです。


❏ 総合問題形式でも、測定項目ごとの把握は可能

科目の特性上、総合問題形式であるため、大問ごとの測定項目設定は難しいとおっしゃる先生もいらっしゃいますが、下図のような仕組みはどうでしょうか。

画像


出題は、総合問題形式の大問を並べる形であっても、個々の設問(小問や枝問)は何らかの測定項目に応じて作成されているはず。それらを串刺しにする採点方法です。

模範解答にマーカーで色を塗っておき、まずは緑色の測定項目Aについて、続いて黄色の測定項目Bを、と採点を進めていきます。○×をつける回数は増えませんよね。

小計の算出も、大問で行うところをA~Dの測定項目ごとに換えるだけですから、計算の回数も一緒です。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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