目的意識/自分の理由をどう作らせるか(その2)

学ぶことへの自分の理由を持っているというのは、言うは易く、実現は想像以上にたいへんです。「こうありたい」 という目標状態を明確に認識していることと、それを他人からのお仕着せでなく自分が選んだものとして向き合っているという、それぞれ別である2つの条件を同時に満たさなければなりません。

当座の目標を達成した先にイメージできる何かがなければ、その目標を自分のものにすることはできません。「酸っぱい葡萄」 にしないためにどうするかも考えなければなりませんが、その前に「目標状態の認識」 について、もう少し補足をしておきたいと思います。


❏ 生活、学習、進路の各領域が互いに関わり合う中で

学校での活動の三大領域は「生活」「学習」「進路」です。当然ながら、それぞれの領域で目標をきっちり設けて、生徒が「自分の今と目標との距離」 を把握できる状態にしておく必要があります。

きちんと目を見て声を出して挨拶ができる、身だしなみを整える、始業のチャイムまでに教書・ノートを出す、私物はロッカーに入れるなど、学びの場における集団生活のルールなどは、「生活」 領域での目標でしょう。

基本的な部分は、初期の段階で指導を徹底して成果が固定したら徐々に手を放していかないと、いつまでも子ども扱いが続きます。幼いコミュニティからはできるだけ早く抜け出して、互いが啓発し合う学習者集団を作りたいものです。

与えられたルールを守るのと、自分たちが作り出したマナーに沿って行動するのはずいぶんちがいます。

相互刺激/相互啓発が働く学びのコミュニティをどう作っていくか、それを考える場面に生徒たちが主体的に関わってこそ、学びの空間での行動に「自分の理由」 が見出せるのではないでしょうか。

お時間が許すようであれば、「生徒に考えさせる授業規律」 も併せてお読みいただければ光栄です。


❏ 選択の結果に向き合えるかは進路意識形成の成否にかかる

進路についても同様です。生徒の進路希望の実現を後押しするのは大切な仕事だと思いますが、受験科目と偏差値だけをモノサシに選んだ進路では、合格という当座の目標を達成した先をイメージできるようになるとは思えません。

進路希望を形成する段階をきちんと踏まずに、消去法で選択した進路、とりあえずの選択を重ねて作っただけの進路希望では、頑張って実現への努力を重ねる理由は“自分のもの”になりにくいはずです。

嫌々ながら仕方なくという状態でパワーが出るほうが不思議なくらいではないでしょうか。

自分の理由がないだけに、眼前のハードルが高く見えただけであきらめてしまうのも無理からぬこと。「酸っぱい葡萄」 にほかなりません。

ハードルの先にある場所に自分がいる理由をきちんと見つけていれば、ハードルの向こうに行くために知恵も使うし、足りないものを補おうとする努力も生まれてきます。

ご参考記事:


❏ 学習の目標は、結果学力だけではない

学習については、教科内容の理解必要な知識の蓄積だけが目標ではありませんよね。

学力の三要素のうち「知識・理解」 と「思考力、判断力、表現力」 は、解を導き答えを整えるべき具体的な設問をもって目標を示せるケースが大半ですの、あまりややこしいことはないはずです。

この50分を経験/この単元を学習してできるようになっていることを、生徒が解決に挑む課題として提示し、実際にチャレンジさせるだけでも、明らかな効果が期待できます。正解を作り上げたという感覚は、達成感として次の学びへの動機になります。

これに対して、学力の三要素の3つめに並ぶ「協働性・多様性・主体性」 は、行動において充足すべき状態を言葉にして書き出しておかないと、生徒にとってはピンと来ません。先生方の間でも目線が合わないのではないでしょうか。

評価規準に並んだ文言に照らして、生徒ははじめて今の自分がいる位置を確認できます。自分の行動を振り返って現段階での達成を検証できれば、達成した喜びも得られますし、次に向けた課題形成にも進めるのは重ねて申し上げてきた通りです。

このほかにも、「」や「」 も獲得を目指すべきものとして、具体的に書き出されることを待っています。

予習・復習の方法やノートの取り方は、担当する先生の授業の進め方によっても異なりますが、ひとつの科目を学ぶ中で身につけたものは他の科目・教科の学びにも転用されていきます。

授業中にメモをしっかり起こし、不明点の解消や興味を持ったことを調べてみることを、タスクとしてきちんと履行していく方法と姿勢を学ばせることもまた、授業を通して目指すべき到達目標であるはずです。

ご参考記事:


その3に続く


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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  • 目的意識/自分の理由をどう作らせるか#INDEX

    Excerpt: 主体的な学びに向かわせるカギは、「学ぶことへの自分の理由」 を生徒自身が持つことにほかなりません。 Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2015-12-18 08:26
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