積極的に学ぶ姿勢(記事まとめ)
如上の構成要素の想定(=問題の切り分け)には、生徒が学びに消極的になる場面とその要因を考えてみるという逆サイドからのアプローチが有用かもしれません。
- 頑張っても学力が伸びているという実感が持てず、科目の学びに自己効力感を欠いてしまった。
苦手意識が学びに消極的な姿勢を作り、取り組みが不十分なために学びの成果が積み上げられないという悪循環は、どこかで断ち切る必要があります。日々の学びを「酸っぱい葡萄」にしては積極的な学びの姿勢から遠ざかるばかりです。
課題を与えたら挑ませる前に必要な道具立て(知識や発想)を生徒が備えているかをきちんと確認することや、複線的なゴールで生徒一人ひとりが自分に合ったハードルに挑めるようにすること、さらには教え合い・学び合いで不足を互いに補えるようにしてあげることなどが、モチベーションの原資である達成感をより多くの生徒にもたらします。
■ 課題解決の場を整えたら、挑ませる前に理解の確認
■ ひとつの課題から複線的なハードルを作る
■ 活動性が苦手意識を抑制する機能とその限界 - 目の前の学習内容/課題を自分事として捉えられず、学ぶことへの自分の理由が持てない。
教える側は、ある単元で学ぶことがどんな意味を持ち、どこに繋がっているか分かっていますが、初めてその単元を学ぶ生徒には未踏の道の先にあるものなどイメージできません。
先生が用意した教材や課題に取り組むにしても、取り組むこと/学ぶことに自分の理由を持てないままでは、積極的な姿勢や行動は生まれないのではないでしょうか。学びを自分事として捉えられる仕掛けが必要です。
■ 学ぶことへの自分の理由(後編)
■ 解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える - やる気はあっても、正しいやり方/学び方が身に付いていないために、行動を間違う/継続しない。
やる気(学ぶ意欲)があっても、正しい学び方が身に付いていなければ、途中で立ち止まったり、転んだりするばかり。最初のやる気もどこかで失せてしまうのではないでしょうか。
日々の学びの中で、学び方そのものを学ばせていく必要がありますが、学習方策は課題解決を通して身に付いていくものです。参照型教材を使いこなせるようになることも、自学を進める土台を作る上では欠かせません。
■ 学び方そのものを学ばせる
■ 学習方策は課題解決を通して身につく
■ 自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手” - 与えられた課題にトライして失敗した/クリアできなかったときのことを恐れて踏み出せない。
与えられた課題に挑んで上手く行かなかった経験を重ねているうちに、挑戦することそのものが嫌になることがあります。うまくできない自分に向き合いたくない、笑われたり馬鹿にされたくないと思えば、最初からやらないことを選択するのも無理からぬところ。
上手に失敗せさせながら、間違いや失敗が学びに転じる場を経験させていく中で、失敗を肯定的なものと捉えさせたいものです。転んで立ち上がれた経験が転ぶことへの恐怖を軽くし、「失敗してもやり直せる」と考えられるようになるのではないでしょうか。大きな怪我の心配ないところで上手に転んでもらうことも必要です。
そうした場を逃さずに作るには、生徒に活動させながらしっかり観察することが大前提。また、失敗をそのままにしてはネガティブな記憶が残るばかりです。失敗の原因を明らかにした上で再チャレンジさせ、最終的に「成功」にもって行かせましょう。
■ 失敗を積極的に経験させる(全3編)
■ やりきらせる責任~仕上げ切らないことを習慣化させない - 準備をしなくても、あるいは適当にサボっても、叱られる以外に困ったことは特におきない。
宿題をやってこなかったり、取り組みに真剣みが足りなかったりすれば、先生に注意されたり叱られたりしますが、その場を我慢してやり過ごしさえすればどうにかなると「学習」してしまえば、さぼり方と謝り方がうまくなるばかりです。再テストや補習で絞られても、同じことではないでしょうか。
これに対して、授業準備(予習)の成果を持ち寄ってチーム/グループに貢献しなければならないといった状況におかれると話は違ってきます。個々の生徒が取り組むタスクに、パートナーやチームへの貢献という要素を組み入れると、そう簡単にはさぼれません。自分の頑張りで周囲に貢献できたという喜びは、次の機会でのより積極的な行動へのモチベーションにもなるのではないでしょうか。
■ 授業内での活動を通した達成感・充足感
■ 互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ - 言われたことをこなすことに終始し、自分で課題を見つけて取り組む習慣と方策が確立していない。
先生から具体的で達成可能な課題の指示があれば、それなりに取り組んでくれる生徒でも、具体的な指示のないところで自発的な行動を取れなかったり、何をしていいかわからないといって学びを止めてしまうことがあります。
実際、コロナ禍による臨時休校中には「休校が続いて、何をやればいいのかわからない?」という事態が方々で報告されています。
定期的に学びを振り返り、自分が何をすべきか、どうすれば次の機会により良いパフォーマンスが得られるかを考えることを習慣づけて行くこともまた、積極的で自立的な学習者に育ってもらうためには欠かせません。
■ 振り返りを経てこそ次への課題形成
■ 模試の結果を正しく振り返る(学習行動の改善)
■ 学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"(まとめ)
学びに対する消極的な姿勢を生み出している原因を切り分けて行くと、そこで出てきたものは、拙稿「原因から考える家庭学習時間の延伸策」で挙げた、家庭学習時間が伸びない原因とも共通項が多そうです。
課題をきちんとやらない生徒への厳しい叱責や注意といった外圧に頼っているばかりでは、その外圧がなくなっても学び続けてくれる期待は持てそうもありません。外圧は上手に使わないと生徒を自立から遠ざけるばかり、と考えるべきだと思います。
また、生徒から頑張り(積極的な学びの姿勢)を引き出そうと、卒業後の目標を早くに決めさせるというアプローチにも問題がありそうです。確かに目標が決まれば頑張りを見せてくれるでしょうが、背中合わせには「目標が決まらない限り、頑張りは引き出せない」という落とし穴が待っています。
選択までの十分なプロセスを踏ませないうちに目標を決め込ませては、とりあえずの選択を助長します。そうした選択の結果には中々向き合えないもの。隣の芝生をよけいに青く見せるだけかもしれません。
■ご参考記事:
お時間がゆるすようなら、こちらの記事も併せてお読みください。授業評価アンケートの集計結果を解析して、「主体的な学び」をどのように考え、授業改善を進めるべきか、データから考察してみた拙稿です。