授業の中で思考力を鍛える

思考力を試す入試への転換が進められています。思考力には大きく分けて2つの要素が含まれており、それぞれを「分析的な思考力」 「統合的な思考力」 と呼びます。

分析的な思考力与えられた問題を分析的に思考・判断する力
統合的な思考力複数の情報を統合し、構造化して新しい考えをまとめる思考・判断の能力

当ブログでも、これまで「思考力とは題意を分解して解に再構成する力である」 と定義してきました。

あまり定義されることもないまま使われている「思考」という言葉ですが、問題を“分解”し、解が求める形に“再構成”するために知識を利用することと仮定してみましょう。授業終了前5分間でアウトプットを行ったり、本時に学んだことを使う活用機会としての課題を与えたりすることは、こうした分解と再構成の機会を担保する(=思考機会を与える)という意味を持つものです。

5分間アウトプットも、宿題で取り組む活用機会も、授業設計において配列すべき活動の一種と考えることが大切です。

活動を配列するときに考えるべきこと(その4)


❏ 課題解決の工程を生徒が経験してこそ

授業の中で、思考力を育てるなら、課題解決の機会を生徒が実地に経験する必要がありますよね。

先生が予め作ってきた答えを、順序を追って提示して、生徒はそれを覚えれば済むようなら、そこには「思考を体験する場」 は存在しません。覚えているだけです。

ワンステップずつ先生が解説しているだけでは、生徒は、先生の解説を理解しているだけ。問題や本文に含まれる情報を分解して捉えるプロセスを経験していないことになりませんか。


❏ まずはやらせてみないことには

生徒が自力で何とかなりそうなら、まずはやらせてみましょう。やれせてみる前に、生徒の可能性を低く見積もってはいけません。

例えば、
  • 例題とその解説を読んで、理解できたら類題を解きなさい。
  • 教書と資料集を読んで、○○とは何か80字で説明しなさい。
という指示だけでも、思いのほか生徒は動けるものです。

英語や古文、現代文でも、教科書の本文に対して設問を立てて、本文をなぞる前にいきなり解答を起こさせるというやり方だってできますよね。

もちろん、わからなかったら隣同士で相談OKというルールにしておけば、わからなくて停滞している生徒は減らせます。

先生が机間指導で対応できるのは、一人ずつ。他の生徒を待たせているぐらいなら、答えを作れた生徒には積極的に教える側に回らせましょう。他人に教えるのって、こちらが考える以上に楽しいみたいです。


❏ 制限時間は厳守して、やり残しは宿題に

短めの時間制限で、ほどよく急がせるのがポイントです。様子を見ながら時間延長をする先生もいますが、あまりうまくっていないようです。変な習慣をつけて「ダラダラやってもおしりを伸ばしてもらえる」 と思わせたらアウトです。

制限時間が来たら手を止めさせて、どこまで行けたかを把握して、次のステップでの説明のスタートをどこに置くかを決めましょう。

説明で補足を終えたら、「仕上げ切れていない問題は宿題」 とすれば良いだけのこと。やりかけになっていて、且つ、解けそうだと思える問題にはちゃんと手を付けるものです。どうしてもわからなければ周りに訊くこともできますよね。


❏ 問題を解かせた後に、教えて拡充&体系化

如上のステップを経て、なにがしかを学んだ後こそ、教える好機です。

設問を軸に、理解のコアができていますので、枝葉をつけて拡張したり、教科書に立ち戻って知識の体系化を行える状態になっています。

問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)」 でも書きましたが、生徒の側で問題意識が希薄、つまり「学ぶことへの自分の理由」がないと、どんなに教えても「打てども響かず」「吹けども踊らず」 になりがちです。

設問は、学習内容の一部に焦点を当てたもの。仕上げた答えには「周辺的なことがら」 がこぼれています。このあたりを先生の説明で補い、板書やプリントで体系化を図ることで、単元全体の統合的理解が図られます。

全体を教えてから、設問や課題を与えるというのが、普通のやり方かもしれませんが、学びのウォーミングアップにも、生徒自身が「分解と再構成」 をきっちり体験するためにも、課題/設問から入るという方法もアリだと思います。



考えさせてこそ、考える力(思考力)が身につくのは当たりまえのこと。教えて身につくものではありません。

最初に教えて、あとで解かせる通常ルーティンでの授業でも、授業終了時に「問いを開いたまま残す」という手法を採れば、生徒が思考を続ける時間を延長することが可能です。お時間が許せば、「結論を出さずに終える授業」 をお読みいただければ幸いです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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