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zoom RSS できることはどんどんやらせる〜生徒の邪魔をしない

<<   作成日時 : 2018/11/30 06:15   >>

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授業中は集中して話を聞かせたい、家庭学習にきちんと取り組ませたいと思うのは、教える立場にあれば当たり前かもしれません。その思いからか、先生方からのこんな発言を耳にすることがあります。
例題と同じ問題を使って説明すると、生徒は「教科書に丁寧な説明があるからそれを読めばいいや」と話を聞かなくなる。だから、少しアレンジした問題を使うようにしています。
調査をしてみたら家庭学習が短く、その対策として週末課題を与えたり、テスト前には対策プリントを配ったりしている。
どの学校でもとは言いませんが、それほど珍しい話ではないかと思いますが、冷静に考えてみると、この考え方には学習者の成長にマイナスの影響(弊害)を及ぼすリスクもありそうです。

あらゆる指導場面において、自ら学び続けられる生徒を育てることは優先目標です。生徒にやれることを先生が先回しては、主体的・積極的に学ぶ姿勢と方法を獲得するチャンスを生徒から奪ってしまいます。

2016/02/12 に公開した記事をアップデートしました。


❏ 読めばわかるのに教える必要があるのか

「教科書の解説を読めばわかる」という理由で先生の話を聞かないというなら、自力で読んで理解させれば良いだけの話ではないでしょうか。

きつい言い方になりますが、「話をきちんと聞いてもらいたい」というのは教える側の思いであって、学習者が目的を達することとは違う次元の話です。

先生の話を聞くのも、自分で解説を読むのも、その目的を達成する方法としてどちらも選択肢のひとつに過ぎません。

むしろ、解説を読んでわかった気になっているけど、実は見落としている/わかっていないところに気づかせるという先生方にしかできないことに意識を向けるべきです。

問い掛けやツッコミ(逆質問)がその主な手段ですが、ときには「誤答を引っ張り出してきて、ボケて見せる」 という奇手もありそうです。

不用意な“待て”をかけない(その2)で書いた通り、書かれたものを読んで理解できるようにすることも大切な指導目標の一つです。

もし本当に、理解させるのに「先生の話を聞かせる」という選択肢しかないというなら、自力で読めるようになるためのトレーニング機会をそれまで与えてこなかったことを大いに省みるべきだと思います。


❏ どの生徒にも無駄な時間を過ごさせない方法を考える

クラス内には、ひとりでは理解できない生徒もいれば、短時間に解説を理解してどんどん先に進める生徒もいるはずです。

どちらの生徒にも「やることがない時間」を作らせないようにするのが指導者の腕の見せ所です。

たとえば、例題の解説を各自で読ませ、理解できたら類題に進ませる場合、理解の早い生徒はあっという間に類題を解き終えて手持無沙汰、遅い生徒は例題の解説で立ち往生というのもよくある光景です。

早い生徒のために類題を解き終えた後のオプションを用意しておくことや、理解に躓く生徒のために、「わからなかったら周りに訊いてもかまわないよ」と付け加えておくだけでも状況は大きく変わりますよね。

静かに集中して一人で頑張るというルールでは、自力で理解できない/問題を解けない生徒にとって、あまり楽しくない時間です。

先生は机間指導に回っており、そばに来れば教えてもらえるとしても、自分に順番が回ってくるまでフリーズしているだけです。アシスタントが付こうが、少人数クラスであろうが同じことです。


❏ 周りに訊くという"選択肢"を封じることが学びを妨害

ちょっと訊ければ先に進めるのに、それすらできない雰囲気だとしたら…。何もできずに過ごすのはたとえ3分でも苦痛です。

誰かに訊ければ先に進めることができるにもかからず、それを許さなかったり、許されないような雰囲気にしてしまっては、生徒の学びを間接的に邪魔していることにならないでしょうか。

そんな窮地に追い込まれた生徒が、状況を抜け出そうと、どこからか正解を手に入れてズルをしたとしても、いたずらに生徒を責めるわけにもいかないように思います。

先の「わからなかったら質問しても良いし、周りに訊いてもかまわないよ」 というルールのもとであれば、状況は違いますよね。

周囲の友達に訊いて「なんだ、そういうことか」と止まっていた手が動き始めるかもしれませんし、先生が机間指導でフォローしなければならない生徒はだいぶ減り、しっかりと手が回るようにもなるはずです。


❏ さっさと理解してどんどん先に進める生徒には…

理解が早い/既にわかっている生徒は、さっさと類題をすませ、演習問題へ、さらには章末問題へとどんどん進ませましょう。

宿題を家に持って帰ることもなく、授業時間の中でこなすべき課題をすべてこなし、その単元の勉強は完了!――それで良いはずです。50分の中で学習目標の達成ができるのがベストです。

家庭学習時間の延伸を指導目標に据えている学校もありますが、家で勉強させることは目的ではなく、学習の目標を達成するための手段に過ぎません。

たとえ、家庭学習時間が短くても、目標を達成している以上、わかりきったことを機械的に繰り返させても得るものはありませんよね。

それくらいなら、探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問を与えて、単元や科目の枠を超えた学びに向かわせた方がよほど健全です。

また、わからないでいる周囲の生徒からの質問にも積極的に応じるようにさせましょう。

他人に教えるという行為は、理解の深化という自分のメリットにもなりますし、教えたことで相手が浮かべた笑顔や「ありがとう」 を通して、互恵というものに気づいてくれたら何よりですよね。


❏ 不安から先回りすることが、生徒の可能性を抑え込む

学ぶ姿勢や学習の方策を身につけることも、学ぶことの目的であり、それを肩代わりすることは、学習者を自立に向かわせることを妨げます。

定期試験前に対策プリントを配るのは、ちゃんと準備して試験に臨んで欲しいという「親心」かもしれませんが、生徒自身がやるべきことをピックアップして持ち時間の中に配列するタスク管理のスキルを身につけるのを邪魔しているリスクも念頭に置くべきです。

何をすべきかを自分で考えることをやめて、「言われたことだけやれば良い」という間違った考え方を植え付けては、学習者としての自立は遠のくばかりです。

材料は既に与えているはず。優先順位をつけながら、何をどのようなスケジュールで進めていくかを考えるのも、やらせてみればできることではないでしょうか。

多少の不安があっても、まずは生徒の可能性を信じてやらせてみる。そうした「指導者側の我慢」は、生徒ができることを増やしていく上でとても大切なことだと思います。

生徒のことを思う気持ちから出た指導者の行動が、生徒の成長を妨げる可能性があることは常に意識しておくべきことだと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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