優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その3)

模試や考査での成績、行動評価の記録、授業評価アンケートの集計結果といった「指導効果や学びの状況に関するデータ」を使って優れた成果を残した実践の所在を特定し、そこでの手法を互いに学ぶことが、学校/教科全体での授業改善を確実でスピーディーなものにします。

前稿では、どのようにデータを使って優良実践の所在を知るか、その授業を担当する先生からどのように効率的に発信をしてもらうかに触れましたが、本稿はその次のフェイズについてです。

2016/03/03 公開の記事をアップデートしました。

❏ 実践メモを読んで、興味をもったら授業を参観

大きな指導成果(成績の向上、学習行動の改善、学びに対する自己効力感の増大など)を得ている授業を担当される先生から、その実践を言語化して伝えてもらうのが、学校/教科全体での授業改善の起点です。

効果の大きさがデータで示され、具体的なやり方に触れれば、もう少し詳しく知りたいとか、自分の授業でも試してみようかなといった意欲も喚起されるはず。これが授業改善に向けたモチベーションになります。

参観に目的意識と観察の焦点が得られ、わざわざ教室に足を運ぶことに割いた時間も、より建設的に使えるのではないでしょうか。

いきなり「学期中に3件以上の参観を行い、所定の書式で報告書を提出せよ」と言われて「よし、頑張るぞ」とは思えませんが、「自分が知りたいものがそこにある」ことを知れば、話は違ってくるはずです。

しかしながら、実践を伝えてもらう/メモに起こしたものを読ませてもらうだけで、取り組みのすべてがわかるはずもありません。

自分の授業にも取り入れられそうだと感じたら、実際の教室に足を運んで授業を参観し、そこでの様子をしっかり観察する必要があります。

メモを読んで想像したものと、実際に自分で見たものとを突き合わせ、指導の実際と具体的なやり方をより深く学ぶということです。

ちなみに、実践報告を聞いたりメモを読んだりしてから教室で参観するのと、事前に何も知らないでふらりと教室を覗くのとでは、参観を通じて得られる気づきに大きな違いが生じるのは言うまでもありません。


❏ 授業を見るときは、生徒の動きもしっかり観察

教室に足を運んで授業を参観していると、「こういう働きかけに生徒はこう反応するのか」という発見もあるはずです。

普段自分が担当しているクラスで他の教科や科目の先生が授業しているのを見ることにも、大きな発見が少なくないはずです。

自分の授業では反応が薄いと感じていたクラスが、やたらと元気に学習に集中していたり、建設的な議論ができていたりするのを目にすれば、それまでの自分とは違うやり方があることにも気づけます。

生徒は、先生からの働きかけに応じて行動しますので、自分の発想が及ばなかったところ(=させなかったところ)でどう生徒が動くか把握できていなかったはず。

生徒のポテンシャルを正しく知るためにも、担当クラスの他の先生の授業はときどき覗いてみるべきだと思います。

授業を参観するときに意識すべきは、「生徒を中心に授業を観る」ことです。指導者の発言や行動だけに注目していては、「学ばせ方」という視点での生徒の動かし方が学べません。


❏ できるだけ他の先生と一緒に授業を観る

授業を参観するときは、出来る限り他の先生と申し合わせて一緒に観るようにしましょう。

同じものを見ても、そこでの気づき/知見の切り取りは一人ひとり違います。普段の自分が考えていることやポジティブな捉え方をしているところにばかり目が行くのが「本能」です。

複数の目で同じものをみることは、対象を多面的に理解し、偏りなく、その良さを見つけ出し/改善点を正しく把握するのに欠かせません。

他の先生の所感に触れれば自分の気づきも膨らみますし、自分が気づいて言葉にしたことが、他の先生の意識を刺激し、理解をより広く、深いものにすることも多々あります。

気づきの交換で、どちらも思いつかなかった新たな発想を得ることがあれば、まさに「授業改善に向けた協働」の真価が発揮された瞬間です。

時間割の都合で、一緒に見に行くことができないときは、ビデオカメラを持参して(スマホでもいいですが)、録画しておき、手の空いた時に動画で観てもらうという方法だってあるはずです。


❏ 参観した結果は、文字に起こして振り返り(言語化)

授業を参観して得た気づきは、「他者の理解が得られる形」で言語化してみること、できれば文字に起こしてみることを強くお勧めします。

他者に伝えようとすれば、感覚で捉えていたところもじっくり考え、より深く、具体的に理解することができ、そこでの気づきを自分の実践とするときの躓きも減ります。

逆に言えば、言語化できないのは、本当のところを理解していないということであり、その状態では応用が利かず、表面上の行動を真似ることはできても、条件が変わったときに調整/適応できません。

参観しての気づきやそこで考えたとは、前稿で触れた「実践報告」のときと同様に、メモに起こして言語化しておきましょう。

参観した先生方が後で集まって議論や検討をする前に、メモを配布しておけば、予め互いの気づきをシェアできますので、やり取りはより深く実りの大きなものになるはずです。


❏ 気づきをシェアして、理解を深める場を確保

よく見かけるパターンに「参観を終えてすぐに集合、研究協議開始」というのがありますが、これでは、気づきを整理する余裕もありません。少し時間を空けて、改めて集まるのが好適ではないでしょうか。

もう一つのパターンに、研究協議のようなものは一切行わずに、参観後はそれぞれの先生が自分で工夫するだけというのもありますが、これでは参観からの学びが大きくならないのは、既に書いた通りです。

研究協議を行う時間が取れないなら、如上のメモの輪読がお勧めです。メモを「配布」するだけでは自分のメモに対するフィードバックやコメントが得られません。そもそも読んでもらえる保証もなしです。

回覧/輪読スタイルを取り、回ってきたメモ(他の先生の気づき)に対してコメントを添えて次に回すことにすれば、メモが一巡して手元に戻ってきたときには、自分の気づきに多くの補完が加えられています。

それを見て、「なるほど、こういう見方もあるのか」とさらに気づきを膨らませられることも少なくないと思います。

参観メモを「配布」するなら、授業参観に加わったすべての先生のメモが一巡して、各先生の手元に戻ってきてから改めて、という手順の方がよさそうに思いますが、いかがでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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