思考させる授業(記事まとめ)

思考力の重要性は改めて申し上げるまでもありません。大学入試改革への対応という目先の必要もありますが、獲得した知識を活用した課題解決の力はどんな場合でも欠かすことができないもの。

思考力を養うには、思考するという経験を積むしかありません。そうした場を計画的、意図的に作り出せるのは授業を置いてほかにはなく、だからこそ、思考させる授業が求められています。

あまり定義されることもないまま使われている「思考」という言葉ですが、問題を“分解”し、解が求める形に“再構成”するために知識を利用することと仮定してみましょう。

授業終了前5分間でアウトプットを行ったり、本時に学んだことを使う活用機会としての課題を与えたりすることも、こうした分解と再構成の機会を担保する(=思考機会を与える)という意味で捉える必要があろうかと存じます。



これまでに書き起こしてきた拙稿のうち、「思考」 をキーワードにした記事をピックアップして、まとめページを作ってみました。まだまだ考察の足りない部分がありますが、校内での議論の場でのステップボードになれば幸いです。

思考力をはぐくみ評価する
思考は、課題を解決するプロセスで用いられるもの。育むにも、測定して評価するにも、考えるための課題を与えて生徒自身に取り組ませなければなりません。生徒の代わりに先生が考えて、その結果を伝えて覚えさせるだけでは何にもなりません。「考えさせるための問い」を用意することが教える側に求められる最初の一歩。適切な問いをを軸に学習活動を配列するのが、授業設計の根本です。

思考力を鍛えるのは、教える前が勝負
思考力を鍛えるには、答えや解き方を示すまでが勝負です。先生が正解や最適なアプローチを示してしまうと、その瞬間に生徒の意識は「考えること」 から「覚えること」 に切り替わりがちです。解き方を覚えて通用するのは「解内在型」の課題だけ。高大接続改革では、正解が1つに決まらない問題が登場し、どんな答えを導いたかに加えて、どのような思考を経て答えに至ったか、プロセスそのものが評価されます。正解を教える前が勝負です。

活動させるのは観察のため
生徒が黙って先生の聞いていても、真面目に考えている様子であっても、こちらの意図通りに思考が働いているとは限りません。外からじっと見つめているだけでは、頭の中で何が起きているかは探りようがありません。生徒がノートに答えを書いたり隣同士で話し合わせてみたりする場面を作れば、生徒の頭の中で起きていることを「外から観察できる」ようになります。

授業の中で思考力を鍛える
思考力を試す入試への転換が進められています。思考力には大きく分けて2つの要素が含まれており、それぞれを「分析的な思考力」 「統合的な思考力」 と呼びます。当ブログでも、「思考力とは題意を分解して解に再構成する力である」 と定義してきました。授業の中で思考力を育てるには、課題解決の機会を生徒に実地に経験させる必要があります。

自分の頭の中を覗かせる(思考の外在化)
問いに答えを導いたり、課題を解決したりする場合、きちんとロジックに沿って導き出されたものなら別の機会にも正解できますが、偶然の正解であったとしたら、似て非なる問題で正解できるとは限りません。両者の違いは「どうやって答えを導いたか」「どのように考えて着目すべき情報を選んだのか」 がきちんと言えるかどうかにあります。


授業展開においても、思考を促す仕組みが必要です。問題意識を刺激する前段階を踏まないと受動的に情報を受け取るだけになってしまいますし、結論を与えて授業を終えるとそれ以上の思考を展開させることができなくなるリスクが高まります。

問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)
意見と対立が想定される論点についてのディスカッションを導入フェイズに行うことで学びへの問題意識を作るという手法があります。問題意識がなければ、与えられた知識や正解を覚えれば良いという誤った学習観を持ちかねません。課題の存在を知ることで、習ったことに能動的に関わる姿勢を作らせる必要があります。

結論を出さずに終える授業
問いに答えを出してしまうと、生徒の側では「答えはこれね、あとはテストまでに覚えるだけ」 という意識が生まれ、それ以上考えることをやめてしまうことがあります。授業を通じて考えるために必要な材料をしっかり与えたら、生徒が解を導くべき問いを示し、「次の授業では、これについて考えてみよう」 とそのまま締めくってしまうのも、思考を継続させて学びの総量を増やすのに有効です。


思考を促す最も効果的で直接的な手段は問い掛け(発問)です。正しい答えが出せたかを確かめるのではなく、どう考えたかを言語化させるような問いが有効です。

問答を通じて論理性を養う
問答を通じ、学習者の活動を引き出すだけでなく、生徒の論理性や思考力を高めることが可能です。生徒の発言を汲みながら問いを繋いでいく、「即興で問いを立てるスキル」は必須の指導技術です。教師が発する問いを真似ることから、生徒は観察・思考の方法をも身につけていくのかもしれません。

問い掛けの多い授業が良い授業
教室で行う発問は、知識の有無を確認するだけのものではありません。発問を通じて、思考や行動が引きだされること、生徒の問題意識を刺激して情報を受け取る準備を整えさせます。しかし、問い掛けに生徒がまったくと言っていいほど反応できていないケースも。上手く機能させるための要点を考えてみます。

プロセスに焦点を当てた問い
教室で発している問いのうち、「結果」 を尋ねるときと、「過程(=プロセス)」 を訊ねるときの割合はどのくらいでしょうか。結果を覚えたところで、使える場面は限られます。正解を導きだしたときの思考を必要に応じて再現できれば、解決できる課題の範囲は大きく広がります。プロセスにフォーカスした質問を多用して、課題解決の工程を体験させながら、意識に上らせましょう。


また、板書やノートも「記録媒体」 として使うのではなく、思考を展開させる道具として使うことが大切ではないでしょうか。思考させることを目的として意識しておけば、道具の使い方も変わってくるはずです。

新しい道具は、思考法や行動様式も変える
デジタル機器の急速な進歩と普及で、書くことに大きな変化が生じています。方法や使う道具が変わるだけでなく、目的も変わってきているのかもしれません。目から入る情報を精緻に観察し、情報の整理や課題の解決を進めていく中、そのプロセスをチーム内で共有することも、書くことの重要な目的です。

黒板を写すと活動が低下?
先生が黒板に書いたものを、そのまま写すだけなら授業を聞いていなくてもできます。目で見て、話を聞いて、いちど理解したことを、改めてノートの上に描き出すのであれば、思い出しやすく忘れにくい記憶になります。考えながらノートを取るという習慣と技術をどうやって身につけさせるか。これこそが教える側での知恵の使いどころだと思います。



教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一





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