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zoom RSS 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)

<<   作成日時 : 2016/11/02 07:05   >>

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高大接続改革と次期学習指導要領への対応では、授業デザインだけでなくカリキュラムや指導計画を含めた大きな変革が求められます。これまで作り上げてきた教育活動に「足し算」 だけで臨んでは、教育リソースがあっという間に枯渇することは火を見るより明らかです。


❏ エビデンスに基づく教育活動の取捨選択

以前の記事「指導方法の効果測定」 で書いたように、優良実践を共有・継承し、費用対効果に劣る取り組みを廃止・変更するには、これまでの指導についての効果測定が欠かせません。

スクラップ&ビルドと言葉にするのは簡単ですが、これまでやってきたことを廃止・縮小するのは大変です。

いずれも、現場の先生方がそれぞれの思いを込めて作り上げてきたものだけに、むげにはできません。どの教育活動を廃止・縮小の対象にするかは、誰もが納得できるだけの合理性を備える必要があります。

逆に、残すことになる指導についても、効果があることをきちんと示し、校内外の理解者と協力者を増やすようにしたいところです。

データをきちんと集めて検証し、エビデンスに基づく判断を示さなければなりません。


❏ 記録の中にあるデータを用いて統計的に検証

検証に用いるデータは、多くの場合、新たに実験やテストを行って集めなくても、様々な形で記録に残っています。

模試の成績、進路希望の具体化や変化などは、システムに保存されているのが普通ですし、学習時間調査も方法は様々であろうと全く行っていないのはむしろ珍しいのではないでしょうか。

あとは、統計的に有為性の検定をすれば良いだけの話です。特別なソフトウエアを用意しなくてもエクセルに実装されている分析ツールでもある程度までは用を足すことができます。

例えば、ある講座を受講したかどうかなど、検証の対象となる指導を経験した生徒と経験しなかった生徒で、その後の模試成績にどんな違いが生じているかも調べられますし、学習時間延伸策を講じたときにどんな効果があったかも確かめられるはずです。

「この指導は効果をあげているのか」 という単純な問いさえ立てれば、狙っている効果に照らして該当するどのデータを記録から掘り出せばよいかは自明であるのが普通です。


❏ 結果学力以外をターゲットにした指導については

添削指導に力を入れている場合、フィードバックを通じて書くことへの意欲を高めることもありそうです。多読指導とセットに意見記述の課題に取り組ませているうちに、表現意欲の高まりが転じて読むことへの意欲を高めることもあり得そうです。

読むことが好きになった、意見を文字に起こすことに興味を持った、といった意識変化がそこにはあるのではないでしょうか。

こうした、点数に現れない比較学力(意欲や取り組む姿勢など)は、アンケートやインタビューで本人に訊いてみないことには始まりません。

指導期間が始まるときと、中途のある時点、終了した後といった具合に、同じ質問でのアンケート調査を行っておけば、回答分布の変化を比べる検証用のデータが揃います。


❏ 記録の残し方、データの集め方に問題はないか

データを取得したときの調査方法が妥当性を欠いており、調査方法を改める必要があるケースも少なくありません。

例えば家庭学習時間であれば、「平均してどのくらいの時間勉強していますか」 と尋ね、30分刻みのスケールで答えさせても、本人の記憶も正確ではありませんし、尺度の誤差も小さくありません。

手帳などで学習生活の記録を取らせているのであれば、記録した数字をそのまま申告させた方がはるかに信頼できるデータが取れます。

また、進路意識を形成する指導についても第一志望の分布がどうなっているかという集団の傾向を捉えるだけでは効果の測定として十分とは言えないはずです。

ここでは、進路意識形成のプロセスを段階的に捉え、一つひとつのステップをクリアしているかどうかを確かめる必要があります。


❏ 複数の記録をクロスさせることで見えるもの

また、それぞれの教員組織が重点的に取り組んできた指導について効果を測る時には、積極的に活用した生徒、利用したが積極性や主体性に欠けた生徒、利用しなかった生徒でデータ(標本)を分けないと、正しいところはつかめません。

生徒全体を母集団としたときに、明確な変化が現れていなかったとしても、積極的に利用した生徒には効果(前後での違い)が見られるなら、指導そのものは有効であり、利用者を増やすことが改善を進める上での方針となるはずです。

逆に、全体としては変化が見られたとしても、積極的利用群と非利用群とで有意差がなければ、その指導以外の要因が寄与していると考えざるを得ません。


❏ スクラップ&ビルドに加え、教育活動どうしの関連付けも

限りある教育リソースで、高大接続改革と次期学習指導要領に対応するには、効果測定に基づくスクラップ&ビルドに加えて、学びの重なりを上手に利用する ことも重要です。

様々な教育活動が互いに関係づけられないまま、それぞれが独立して動いているようでは、効率が悪すぎますし、シナジー(相互作用)も期待できません。

各教科の学習指導、進路指導、学校行事などの体験型学習、課題研究などの探究型学習など、あらゆる教育機会について、共通部分(ベン図の重なりに相当)をいかに効率良く設計するかが状況打破の鍵になるはずです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一



「学力」の経済学
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015-06-18
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