活動させるのは観察のため

授業の中では、生徒に様々な活動に取り組ませます。話を聞くだけでなく、実地に体験し、考えて行動し、理解したことを言語化することで、生徒は学びを深めていきます。

もちろん、知識の定着や手順への習熟を図るという目的もありますが、教える側にとっては「活動させることで、はじめて観察が可能になる」 ということこそ、大きな意味を持つと考えます。


❏ 書かせてみたり、話し合わせてみたり

大人しく座って話を聞いている姿を眺めているだけでは、どこまでわかっているのかも、どこに疑問があるのかも把握するのは困難です。

でも、問いを投げかけ、あるいは課題を与えてみれば状況は変わります。ノートに答えを書いたり、隣同士で話し合わせてみたりする様子を通して、生徒の頭の中で起きていることを「外から観察できる」 ようになりますよね。


❏ 動かしてみないと観察のチャンスは訪れない

こうした場面を作らないと、ただでさえ難しい生徒理解を手掛かりなしに行うしかなくなってしまいます。

発問や指示で生徒を動かしてこそ、観察のチャンスが得られます。

仕掛けてみないことには、内部で何がどう働いているかはわからないということですね。

対人競技では、フェイントをかけて相手の動きから狙っていることを探ることがありますが、もしかしたら似たようなことかもしれません。

なお、せっかく発問しても、間をおかずに一人を指名しては、他の生徒が反応を止めてしまいます。

誰かを当てるのは、クラス全体に問いを投げかけ、生徒を動かしてからにしましょう。


❏ 教えたり、話を聞かせる前にやらせてみることも

指導は、現時点での到達状態とゴールで目指すべき到達状態をつなぐために行うものです。

当然ながら、現時点で生徒が何をどこまで出来るのか、確かめないと指導の手順を考えることすらできないはずです。

先生が、これを忘れて前もって決めておいた手順を実施するのでは、生徒は「わかりきったことをなぞられるだけ」、あるいは「理解できていないことを前提に話が進んでいく」 というありがたくない状態に置かれかねません。

時には、本時のターゲットとなる設問をいきなり見せて、どこまで自力で考えられるのかを探ってみても良いかもしれません。

仮の答えを作らせて、隣同士で相談させてその様子を見ていれば、どこから説明を始めて、どこを補うべきかのあたりが取れます。


❏ 活動させているときは観察に集中

活動させているときは観察のチャンス。せっかくのチャンスをきちんと活かしたいものですよね。

授業を拝見しに教室を訪れてみると、せっかく生徒が活動しているのに先生は教卓で次の手順の準備に夢中という場面があり、もったいないなぁと思うことも少なくありません。

頭の中がどう働いているのかを捉えることに意識を集中させましょう。

その場で誰を指名するかを決める上でも、生徒同士のやり取りや手元に書いているものを観察するのは不可欠です。

お時間が許すようであれば、別稿「生徒を指名して発言させるとき」 も併せてご参照ください。


❏ 不規則発言で混乱させられることも減る

クラス全体に問いを投げかけてみると、得意な生徒(というか発言して目立ちたい生徒?)ばかりが発言を連発し、他の生徒は「お客さん」 になってしまうこともあるようです。

これでは、他の生徒の頭の中で何が起きているか掴みようがありません。かと言って、積極的に発言する生徒に「黙っておれ!」 というわけにもいかず、苦慮するばかりです。

そんな時こそ、隣同士で話し合わせたり、ノートやプリントに書かせることで、より多くの生徒を正しく観察できるようになるはずです。



生徒が黙って先生の話を聞いていても、真面目に考えている様子であっても、こちらの意図通りに思考が働いているとは限りません。外からじっと見つめているだけでは、頭の中で何が起きているかは探りようがなく、仕掛けて動かしてみる(活動させてみる)こと以外に、解決策はなさそうです。

将来、科学技術が進歩して、非接触型の脳波センサーみたいなやつで、相手の考えていることがそのまま伝わるような時代が来たら、それはそれで嫌な感じがしますが…。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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