現場で頑張る先生方を応援します!

アクセスカウンタ

zoom RSS 学力の三要素とは〜もう一度考えてみました

<<   作成日時 : 2016/05/18 07:22   >>

トラックバック 20 / コメント 0

文部科学大臣のメッセージ「教育の強靭化に向けて」 では、従来と変わらない時間枠の中に、思考・判断・表現の各要素を織り込み、主体性・多様性・協働性を身につける場を設けながら、学習内容は減らさないという方針が再確認されました。

知識・技能を整えてから、思考力・判断力・表現力を鍛えて、という段取りでは所定の指導時間には収まらないことになるのは容易に予想がつきますし、主体性・多様性・協働性を育む機会を別に設けると考えてしまっては、それこそ時間切れが確実ですよね。

学力の三要素が、互いにどのような関係を持ち、相互作用を持つかを捉え直さないと、指導計画の根本で間違えそうな気がします。


❏ 3つの要素が互いに及ぼす作用

さて、学力の三要素という用語もすっかり定着してきたように感じる昨今ですが、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・ 多様性・協働性」 を並列して記述することに何となく違和感も覚えます。

画像

3つの要素とも、学習者個人のうちに形成されるものですが、各要素間の関係、それぞれの要素が他の2要素にどのような役割を提供するのか、ちょっと考えてみたいと思います。


❏ 答えを作る工程と、そこで用いる道具・材料

知識・技能は、思考力・判断力・表現力を働かせるときに道具や材料となるものです。

だから、課題解決を図ろうとする思考・判断・表現の各工程で、道具や材料が足りないことに気づくことで、それらを手に入れるための「調べる、教わる」 といった必要を感じ取ることができます。

家を建てようとして、もし足りない建材があることに気づいたら、木材を調達し加工すれば、組み立ての作業が再開できるのと似ています。

何を建てるかも決まっていないのに、パーツを作って集めるのが延々と続いたら、それは嫌にもなるでしょう。

× 知識・技能の獲得を図ったのち、思考力・判断力・表現力の獲得に進む
○ 課題解決の中で思考・判断・表現を行いながら必要な知識・技能を獲得


❏ 能力を発揮する基盤が、第三要素

一方、主体性・多様性・協働性は、第二要素(思考力・判断力・表現力)に列記された能力群を十分に発揮するための基盤を形成するものではないでしょうか。

「思考力」 は、解決すべき課題があってはじめて発動し、協働の場での「気づきの交換」 で拡張を図ることができます。自分ひとりで考えていただけでは、思考の行き詰まりを突破する新たな発想はそうそう簡単には出て来ませんよね。

「判断力」 というのは、多様な価値と交わり、自己を相対化することでその軸を持てるもの。対立する意見が土台にしていることを知り、何に価値を置くかを考えることで正しい判断ができます。独善とか思い込みと真っ向にあるものではないでしょうか。

「表現力」 は、伝える相手と伝えたい意志・主張があってこそ必要となるものです。探求して明らかにしたものをコミュニティの共有知とする場面や、協働で課題解決を図るとき、多様性を獲得する場面でこそ必要になり、身につくものだと思います。


❏ 主体性・多様性・協働性はどう定義する?

そもそも、主体性・多様性・協働性という言葉自体、何を指すものかあまり深く考えないまま、独り歩きしているかような気がします。

これから先、指導を当たるとき、授業を設計するときには、しっかりと言葉で説明できないと、教員間での議論も空回りしかねませんし、生徒に話して聞かせる場面でも行き詰るようなことが出てくるかもしれません。

もちろん、言葉そのものの定義は辞書を引けば出ていますが、…。

数年後に迫る高大接続改革を前に、「学校の教育活動において獲得を目指す資質としての定義」 を自校内でもあらためてはっきりさせておいた方が良いかもしれません。


❏ 現段階での定義(暫定版)

私自身、まだ考え始めたばかりで「これは!」 という定義文が作れませんが、現段階での暫定解はこんな感じです。
主体性課題解決に向け、何をすればよいか決まっていない中でも、自分の役割を考え/引き受けようとするときの判断軸をもつこと
多様性様々な立場や価値観が存在することを理解(相対化)、許容し、参加するすべての人が受け入れられる解決策を目指す姿勢
協働性個人が持つ知識、経験、気づきだけで対処できない課題に対し、専門性や発想を互いに持ち寄ることで解決を図る姿勢・資質



❏ きちんとした定義は、目標提示、評価、効果測定の土台

きちんと定義をしておけば、それらを満たしたときに生徒がどのような行動をとるかをイメージして評価規準として書き出すときの土台にもなります。

語句から定義文・説明文というセンテンスの形に書き改めることが、生徒に対する目標提示や評価を行うときの土台になるとお考え下さい。



ご参考記事

 ルーブリック導入に向けて 2015.09.16
学力の三要素をキーワードに学習内容・指導内容の改革が謳われ、それに伴い、学習方法・指導方法も改革が求められています。ICTの活用、協働学習の拡充、アクティブラーニングへの転換に向けた研究が盛んです。ところが、「評価方法の改革」はあまり表に出てきません。意識からこぼれているのか、単に取り組みが遅れているだけなのか…。

 評価方法の再整備〜高大接続答申から  2015.02.20
高大接続答申を見ると、高校在学中に「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を獲得させなければならないのは、間違いないところ。育てるためには「評価」が欠かせません。卒業時に目指すゴールに向けて現段階で到達しておくべき状態に照らして個々の生徒の現在位置を相対的に捉える仕組み。これこそが、次の指導を正しく立案するための土台になります。

 マトリクス点検で指導主眼を適正配置 2014.08.06
マトリクス点検とは、「生徒に求めている学習方法」、「評価基準」、「テスト問題を通して試そうとしている学力」などを、教科・科目を縦軸に、学年・学期を横軸にずらりと並べて比較点検しようという試みを指す造語です。入学から卒業までを左から右に、教科・科目を上下に、それぞれの時期×科目で“学習活動において生徒に求めるもの”を配列してみて、段階性と整合性とを確認する作業です。

 考査問題の改善が授業も変える 2015.11.17
評価方法の改善を図ろうと定期考査の出題方針を大きく変えたある学校で、テストの難易度は跳ね上がったのに、得点分布は明らかに上方にシフトしました。事前に到達目標を明確にしたことで、授業の主眼の置き方が「教科書を教える」から「教科書で教える」への転換が図られたのが要因の一つです。授業を変えるには、まずテストを変えてみましょう。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(20件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ
一人ひとりが意欲をもって学び、生徒が互いを支えるようにまとまったクラス──学級を担任したら誰しもそんなクラスを目指しますよね。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/06/02 08:06
教科学習指導における数値目標のあり方#INDEX
大学進学後にも、意欲的に学びを続け、学びをともにするコミュニティに貢献するのに揃えておくべきものが、高大接続改革で盛んに登場している「学力の三要素」 や「学びの意欲」 です。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/06/23 06:51
教える技術#02 目標提示とアウトプット
【テーマ別記事インデックス】 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/06/24 05:48
指示を的確にこなす生徒〜それだけで良いのか?
どの生徒のノートを見てもきれいに板書を書き取っており、寸分の違いもない。あるいは、予習も完璧に行われており○をつけていくだけ、生徒を示しして期待した通りの答えがきっちり戻ってくる ── 表面的な現象だけを見れば「指導の成果」のように見えなくもありませんが、どこかに違和感を覚えませんか。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/07/04 06:17
教科学習指導の効果を高める土台
授業を通して各教科固有の知識・技能を学んでいく土台となるのが「学習方策」 であり、学びを後押しするエネルギーが「学ぶことへの自分の理由」 です。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/07/06 08:07
生徒意識アンケートG 異なる意見に耳を傾ける姿勢
生徒意識アンケートでは、好ましい資質を獲得しつつあるかを訊ねる項目を質問設計の中に組み込んでいます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/07/29 06:41
生徒意識アンケートH 将来を見据えた行動選択
目先の欲求を満たすことより、少し先を見越して今やっておかなければならないことを優先して考えられるようになった生徒の姿を見ると、「成長したなぁ」と感じるものです。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/08/01 05:54
次期学習指導要領改訂スケジュール
次期学習指導要領は、平成32年に小学校で、平成33年に中学校で全面導入され、高校では平成34年度から年次進行で実施予定とされています。平成32年度からはセンター試験に代わる新テストが実施されるなど、今後数年間は様々な変革への対応に迫られることになりそうです。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/08/29 04:48
教科固有の知識・技能を学ぶ中で
工業化社会では、正しい手順を正確に且つ効率的に再現できることが生産性を高めることに直結しました。個々の教科の内容を学ぶ中で身につけた「与えられた情報を素早く理解し、記憶する力」 はそれ自体で武器になったように思えます。テストで「覚える力」 を証明することが、次のステージへのパスポートになったように感じます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/10/12 06:00
PPDACサイクルを用いた課題研究(その2)
昨日の記事から引き続き、課題発見や課題解決を行う枠組みの一つである、「PPDACサイクルを用いた課題研究について考えます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/11/08 05:13
思考力と表現力を養うには
1 学力の三要素、高大接続改革に向けて1.1 学力の三要素とは〜もう一度考えてみました 1.1 高大接続改革に向けて今できる準備 1.2 高大接続改革に向けて今できる準備(その2) 1.3 評価方法の再整備〜高大接続答申から 2 思考力をはぐくみ評価する2.0 思考力をはぐくみ評価する(序) 2.1 思考力をはぐくみ評価する(その1) 2.2 思考力をはぐくみ評価する(その2) 2.3 思考力をはぐくみ評価する(その3) 2.4 思考力をはぐくみ評価する(その4) 3 ... ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/12/28 07:48
モデル問題(共通テスト)を見て #2数学
昨日に続き、共通テスト(仮称)のモデル問題を見て感じたところをまとめます。数学のモデルでも、「確かめる方法を数式を使って説明せよ」 など、協働での課題解決という「対話相手が存在する場面」 を想定しないと意図が見いだせない問い方が散見されます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/05/19 07:37
考察: 大学入学共通テスト&高大接続改革
2020年の高大接続改革もいよいよ近づいてきと感じます。新テストに最初に挑む世代もすでに中学3年生。来年は高校に入学してきます。高校の教育成果は3ヵ年の積み上げですから、本年度のうちに対応準備を進めたいところ。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/05/24 05:17
導入フェイズで仮の答えを作らせることの効果
学力や技能の向上を実感できなければ興味や関心は高まらないことは、以前の記事でご紹介した通りですが、学力や技能の向上を実感することとその科目に対する興味・関心の高まりとの相関には、学年が上がるごとに高まる傾向が見られます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/09/26 06:51
大学・学部選びに加え、入試選びも求められる時代
高大接続改革と並行して、本丸とされる高校教育改革に加え、大学教育改革も進められています。この中で大学には、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)という三つのポリシーの策定と運用が求められます。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/12/27 07:59
機械翻訳がここまで進歩すると…
連休中にスマホを新調したついでに、Google翻訳アプリをインストールしてみました。久しぶりに使ってみると、音声認識の性能も各段に改善されていますし、翻訳の精度も初期のバージョンとは雲泥の差です。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/05/08 07:17
授業評価項目H 授業内活動を通した達成感・充足感
思考力・判断力・表現力を養うために主体的、対話的で深い学びが求められています。後掲のデータも、練習や討論といった授業内での活動に充足を見出せる授業ほど学力向上感が高まる様子を示しています。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/06/25 06:51
対話が思考を育み、深い学びを実現する(まとめ)
2020年以降の新しい入試に初めて挑む学年がこの春に高校生となり、新課程で学ぶ生徒も来春には中学生となる中、新しい学力観にそった、教え方の転換を図るべく、各地の学校では様々な工夫がなされています。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/07/06 04:30
ルーブリック評価の導入はなぜ必要なのか
高大接続改革とその先の本丸である次期学習指導要領に向けて、学力の三要素をキーワードに、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が急速に進んでいます。各地で行われている研修会やセミナーでも、新課程の中身(学習内容)を研究するもの、AL、協働、反転といった指導方法をキーワードに含むものがとても多くなりました。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/07/11 06:16
論点(イシュー)を使った単元導入
学習目標を生徒に把握させるのに最も手早い方法は、一般的には「学び終えて解を導くべき課題を導入フェイズで与えること」ですが、科目の特性や単元の特性によっては"問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)"で書いた通り、賛否の分かれるイシュー(論点)から入る導入も効果的です。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/08/07 06:22

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
学力の三要素とは〜もう一度考えてみました 現場で頑張る先生方を応援します!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる