教科学習指導における数値目標のあり方(その1)

教科学習指導を通じて養うべき能力・資質には大きく分けて2つあります。達成検証にルーブリック評価を用いるべきものと、テストの結果をそのまま用いるものです。

「学習方策の獲得」 や「学ぶ姿勢・意欲」「自ら課題を設定して解決に向かう姿勢」「学びのコミュニティへの関わり方」 などは、定性的な目標であり、段階的に記述した達成規準に照らして到達人数の増加(割合の向上)をもって目標の達成管理を行うしかありません。

これに対して、教科固有の知識・技能、思考力や判断力は、それらを測定し得るテストが利用できるのであれば、点数によって達成度の把握ができます。

学習目標の達成度を正確に把握することは、目的に近づく工程をより着実なものに改める上でも欠かせません。

評価方法の改善が、達成度の把握を正確にするのは言うまでもありません。テストそのものの妥当性を測り、考査の精度を高めていくことにも、指導方法の改善以上に、エネルギーを注ぐ必要があるということです。

 ■ご参考記事: 考査問題の改善が授業も変える


❏ そもそも、目標達成管理はなぜ必要なのか?

「生徒の進路希望を実現させる」 というのは、表現には違いがあっても、多くの学校で目標のどこかに掲げています。

進路実績というと何となく学校側の都合のような感じも否めませんが、生徒募集に際して、「目標大学」 を掲げてその合格を目指した指導を謳っている以上、お題目で済ませるわけには行きません。約束した以上、守らないと…。

過去の進路実績を見て学校を選ぶ生徒・保護者がいる以上、学校側が約束したつもりはなくても、生徒・保護者はそんな期待を抱いているわけですから、できるだけ応える必要があり、それを確実なものにする手立てを講じたいもの。

スタートがうまくいかなかったり、中だるみが生じてしまったりしては、いつの間にか当初の希望は手を伸ばしても届かないことになりかねません。

指導期間全体をいくつかの期間に区切り、中間段階での目標を定めて点検を重ねて行けば、その時点での対策も打てるはずです。

「間に合わないからあきらめる」 という事態を避けられるようにすることが、目標達成管理が必要である理由ではないでしょうか。


❏ どの段階の希望をもって「希望進路」 と規定するのか

過年度の合格実績に照らして、国公立大学に○人、早慶上理に○人、難関私大に○人と「目安」 を立てるのはかまいませんが、生徒の希望は一人ひとり違いますし、集団としても年度ごとに違いますよね。

前年度のまでの受験人数上位大学を並べてみても、あくまでも「受験校」 であり「希望進路」 ではありません。

当たり前ですが、希望は本人に尋ねてみなければわかりません。

どの段階での希望をもって実現させるべき進路と捉えるか、校内での議論を経てしっかりコンセンサスを作った上で、進路希望調査を実施したいところです。

また、何の準備も経ずにいきなり聞いても、本人のうちに希望が形成されていなかったら意味がありませんよね。高校入学時には、名前を知っている大学がちらほらあるといったレベル、漠然とした憧れしかないのも普通です。

2年生の1学期に「大学・学問調べ」 を課し、夏休みに大学訪問を実施するという進路指導計画が実施されているのであれば、生徒は2学期の半ばにはある程度の具体性をもって希望の大学・学部を思い浮かべるはずです。

進路意識の形成・具体化が、すべての生徒について計画通りに進むとは限りませんし、選択した進路に向き合いそれを自分のものとして受け止めるにも一定の時間がかかります。

こうしたことを鑑みると、3学年に進級する時点の希望をもって「生徒の希望進路」とすることには、一定の合理性がありそうです。


❏ 進路希望調査は、間隔をあけながら幾度か実施

生徒の希望進路が把握できれば、その実現のためにどこに力点をおいた指導を展開するか計画しやすくなります。教える側での出題研究にも熱が入り、好適な教材・課題の収集も効率よく進むでしょう。

前述の通り、3年生の4月時点での希望をもって「希望進路」 とするのでは、前年度のうちに進めておくべき如上の準備が進められません。3年時の履修科目選択の際にも、希望進路を聞いておくのが好適です。

希望進路と履修科目のずれにも気づけますよね。3年生になってからの模擬試験で「科目不足」 が個人票に印字されているのではガッカリです。

入学時から定期的に、調査をしておけば「諦め」 がどこで発生しているかも把握でき、対応策もとれるはず。

但し、大学名を答えさせるのは、如上のタイミングまで待ち、それまでは「興味のある学問領域」 などを中心に尋ねた上で、「どんな大学で勉強したいか」 をついでに訊くぐらいで良いのではないでしょうか。


❏ 選択に臨むまで、目標に手が届く位置をキープさせる

進路希望を作る過程において、選択の機会は幾度も訪れますが、それぞれの段階で「手が届かない」 と感じたものは選択肢から外れていきます。

選択の範囲が狭くなるということは、自分の資質や嗜好に見合った進路と出会える可能性が小さくなるということです。

進路選択に当たり、自分の可能性を小さく見積もらせず、できるだけ広い範囲から自分いるべき場所を探せるようにさせたいものです。

そのためにも、定期的に成績を把握し、不足はその都度、後手を踏まずに補っていくことが大切ですよね。成績把握から、指導改善や個別対応に向けた課題形成を行う必要は言うまでもありません。


さて、前振りがだいぶ長くなってしまいました。次稿(その2)では、数値目標の立て方について、もう少し具体的に考えてみたいと思います。

その2に続く


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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