指導目標の達成を確かなものに~数値を用いた効果測定

学力の三要素は「知識・技能」「思考⼒・判断⼒・表現⼒」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」ですが、教科学習指導を通してこれらを着実に育んでいくために、きちんと行わなければならないのは「指導の効果測定」です。

効果があるはずと見込んで行った指導も、本当に狙った効果があったのかを確かめないことには、試行錯誤に生徒を巻き込んでしまいますし、生徒の状況を瞬間ごとにきちんと捉え、残りの期間で到達すべき所期のゴールとの距離を測らないと、その先の指導をどう進めていくか計画や見通しを立てることもできません。

2016年06月21日 公開の記事をアップデートしました。
(旧タイトル:教科学習指導における数値目標のあり方)

❏ テストの結果は平均点で丸めない

知識・技能の獲得状況なら、考査や模試の成績で把握するのが普通だと思いますが、クラスや学年の平均値を目標管理の指標にするのはあまり好適とは言えません。

平均値が同じでも、度数分布表を起こしてみれば、上位/下位の分布の様子はクラスごと/学年間で違っていたり、回次(学年・学期)を追うごとに変化していたりするはずです。

模試の成績を用いた目標管理なら、一定の水準以上(例えば、生徒が目標としている大学群を目指すのに必要と思われる最低線)に達している生徒の数(割合)を把握し、追跡したり比較したりするのが好適です。

クラス間の比較、あるいは過年度学年との比較を行ったり、これまでの推移を追ったりするには「箱ひげ図」が便利です。変化を直感的に捉えやすいことは大きなメリットの一つでしょう。

箱ひげ図_模試成績2.png
上位層が膨らんだ時期にはどんなことに力を入れて指導していたか、下位層が膨らんでしまったとき/クラスでは何が原因だったのか、指導の場面を振り返る中で、共有・継承すべきノウハウも見つかりそうです。

箱ひげ図を書くためのデータが整っていれば、2つのデータの間に有意差があるかどうかをt検定で確かめるのも簡単です。

定期考査でも同様の手法が取れますが、それには考査問題の出題内容や採点方式が合理的なものである必要があるのは言うまでもありません。



❏ 観点別の段階的評価規準で定性評価の結果を数値化

主体性・多様性・協働性など、定性的な評価を行う事柄については、観点別に設けた段階的な評価規準(ルーブリック)に照らして、各段階への到達人数を把握することで定量的な目標管理ができます。

評価規準の適用(採点)には、担当者間でのばらつきが問題になりますが、同じサンプルを用いて、担当者それぞれの採点結果を突き合わせることを繰り返す中で、ばらつきの解消が進められるはずです。

面倒な話ではありますが、今後「評価結果への説明責任」がこれまで以上に問われるシーンが多くなると見込まれる中、この面倒を避けて通るわけにはいかないと思います。

思考力や判断力、表現力をテストやレポートで評価するときも、単なる「印象点」をつけるのではなく、明確かつ合理的な採点ルーブリックに基づく「評価結果を説明できる評価/採点」が求められます。

ルーブリックを用いた採点結果であれば、効果測定も行えます。ある能力や姿勢を育むことを企図した講習を行った場合、ビフォア・アフターで同じ評価基準を適用した結果を集計表にすれば、カイ 2 乗検定で、講習の参加前と参加後の変化に有意差が生じたかを確かめられます。

ちなみに、下の例では、ビフォア・アフターに有意差はなく、講習会を行い、生徒を集めた効果は「?」です。もっと回数を重ねるか、内容を見直すかの必要がありそうです。

カイ2乗検定.png

❏ 生活指導や進路指導、探究活動の場面でも

教科学習指導の場に限らず、進路指導や生徒指導、総合的な探究の時間にも、当然のことながら、達成すべき目標があります。

先生方から一生懸命に働きかけをしていても、その成果を逐次確かめないことには、指導をタイムリーに最適化していくことは難しいのではないでしょうか。

生徒に期待する行動や考え方がどこまで実現しているかをルーブリックに落とし込んで評価に使えば、生徒自身の振り返り(内省)に活用しつつ、評価/採点結果を用いた指導の効果測定ができます。

進路希望を作る工程でも、調べるべきことや考えるべきことを生徒一人ひとりがクリアしているかをチェックリストで点検させた結果を数値にして、進捗状況を把握したり、直近の指導の力点を決めたりといった取り組みは必要かと思います。

クラスによっても指導の効果やその現れ方には違いがあるのが普通ですが、高い指導効果が見られた所には、それを実現しただけのノウハウが存在するはずです。優良実践の所在を特定するのにも、評価の機会を確保し、その結果を用いた効果測定は欠かせません。



それぞれの先生方が、開発に意欲的に取り組んだ指導法がうまく効果をあげるようになったら、それを発信して学年・教科、あるいは学校全体での知見と取り組みにしたいところですが、理解と共感を得て賛同者を増やすにも、効果測定の結果をエビデンスとして示す必要があります。

評価結果の数値化と、数値ベースでの目標管理は、そのための有力なアプローチの一つではないでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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