振り返りを経てこそ次への課題形成

様々な学びを重ねる中で、より良いパフォーマンスを得る/目標の達成に近づくには、がむしゃらに頑張るだけでは足りないものがあるはず。根性だけの無策で壁に跳ね返されていては、頑張る意欲も維持できず、自信を失って対象に近づくことすら避けたくなってしまいそうです。

これに対して、どこに力を入れ、何をすればよいのか、自分の課題が明確になれば、後は課題を一つひとつクリアしていくだけ。多少の遠回りや足踏みはあっても着実に目標に近づいていけるはずです。

次に向けての課題形成には、まずはしっかりとそれまでの取り組みを振り返ることが肝要。冷静な振り返りなしに思い付きで作戦を考えたところで、上手くいかない場面を再び経験するばかりではないでしょうか。

2016/07/15 公開の記事をアップデートしました。

❏ まずはそれまでの進歩/成果のたな卸し

振り返りというと、否定的なところにばかり目を向けて、それまでの自分について「反省」をすることと思ってしまう生徒がいますが、最初にやるべきことは、以前の自分を基準とした成長や好ましい変化の確認/たな卸しだと思います。

対象が何であれ、懸命に取り組んだのであれば、方法の拙さで期待通りの結果にはなっていないかもしれませんが、努力は何らかの実を結んでいるはず。成果も成長もゼロということはないはずです。

よくよく振り返ってみることで「なるほど、ここには成果があったな」と認識を新たにできれば、次に向けてモチベーションも新たにできるのではないでしょうか。

これまでの作戦/アプローチではだめだな、という気づきさえ、やってみる前には知れなかったこと。別のアプローチを考えようと思うようになったこと自体が立派な進歩だと思います。

振り返りを行う中で、周囲の同級生たちの頑張りや工夫から刺激を受けて、先生からの助言などで新たなアプローチを考え出せれば、それまで塞がっているように見えた可能性だって開けてきます。

 ■ 先生方との相談で、周囲からの刺激を上手に消化


❏ 振り返りの成否を分けるのは自己の相対化

振り返りは、それまでの自分と向き合うことで行いますが、自分のことだけ見ていても解決すべき問題を見つけ出すのは容易ではありません。

内面に向き合うだけでは、発想は膨らみませんし、それまでにうまくいっていなかった部分では否定的な自己認識を強めるだけの結果にもなりかねません。

現状打破には新たな発想や取り組み方に関する知識が不可欠。先生方に助言をもらったり、周囲の生徒の取り組みやパフォーマンスを観察してみることで、より広い視野の中に自分を置いてみるべきです。

 ■ 言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」

そうした場面を用意するのは、生徒ではなく、先生方に期待される部分です。振り返りを行わせる前に相対化の機会をきちんと作っているか、先生方ご自身が日々の指導を振り返ってみるべきところだと思います。

当然ながら、振り返りを行う生徒も、自分の取り組みの成果を形にしてみないことには、自分の状況を正しく把握できませんので、いくら他を見ても、彼我の違いの確実な発見にはつながりません。

 ■ 自分の取り組みの成果を発表できる機会
 ■ 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)
 ■ 自己評価、相互評価を行わせるときの工夫

考えたことをアウトプットしたり、調べたり考えたりしたことを発表したりする機会を作るのは、先生方が評価を行う上でも不可欠ですが、生徒が自分を相対化して正しい振り返りをするためにも欠かせないものとの認識が必要です。


❏ 以前の自分と向き合える材料を整える

繰り返しになりますが、振り返りの入り口は「これまでの頑張りの成果をたな卸しすること」にありますが、基準となる「以前の自分」が明確に認識できていないと、進歩を正確に把握することができません。

ぼんやりした自己認識の中では、成果のたな卸しも曖昧にしかできないということです。繰り返し振り返りを行う中で、自己認識を明確にしていくこと、メタ認知を高めていくことを意識した指導が必要です。

ポートフォリオに残された様々な記録(特にリフレクション・ログ)は次の振り返りを行う際の「比較の基準」にもなるため、しっかり残しておくようにさせたいところ。出願書類として必要になるかとは別のところでログを残す(=ポートフォリオを作る)ことは大切です。

例えば、模試の結果を返却するときに振り返りを行わせたとしても、その場で「反省」させるだけでは、効果が持続しないばかりか、次の模試で同じ反省をする羽目にもなりかねません。

せっかくの振り返りをその場限りのものにしないためにも、考えたところをしっかりと言語化させ、文字に残させるようにしましょう。

 ■ 模試の結果を正しく振り返る(学習行動の改善)

そこでの決意に立ち戻る機会を定期的に持つことで、決意とそれに基づいて改善した行動を持続させることにもつながりますし、次の振り返りに際して、決意を守れたか/計画した行動をとれたかどうか(実行ミスがなかったか)、計画そのものは効果的で合理的なものであったか(作戦ミスはなかったか)の点検もできます。

実行ミスと作戦ミスの切り分けをしないと、問題解決に近づけないことは言うまでもありません。

実行ミスが生じた理由を解消するために何をすべきかを考えることも、作戦ミスを改めてより効果的な作戦を立て直すことも、より良い未来に向けた課題形成であり、そのためには、リフレクション・ログなどを介した過去の自分との対話も重要だと思います。


❏ 振り返りの効果:苦手意識の抑制、目標の認識

正しい振り返りを行えば、成果のたな卸しによる自己効力感の維持と、こうすればいけるんではないかという見通しの中で、不要な苦手意識を抱えることも少なくなります。

苦手意識の原因には、様々なものがありますが、その筆頭は「どうすれば良いかわからない」ですので、そこに立ち止まらないための振り返りと課題形成が、苦手意識を抑え込むのは当然の結果です。

下のグラフは、授業評価アンケートの集計結果(n=1,628)で作成したものです。小学校以来の積み重ねで、得意/苦手の意識の固定化が進んでいることが多い実技実習系の授業をサンプルにしました。

横軸と縦軸はそれぞれ、【振り返り】(振り返りや先生からの助言を通じ、次に向けた課題が意識できる)と【意識姿勢】(この科目は、あなたにとって、{とても得意~かなり苦手})の換算得点です。

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近似線を見ての通り、横軸方向に右に行くほど意識姿勢は得意寄りの分布を強めています。グラフは緩やかながらも右上がりです。

同じデータで箱ひげ図を作ってみると効果は一目瞭然。振り返りが75ポイント(否定的な回答が10%未満程度)以上なら、意識姿勢の箱の下端は、得意と苦手が拮抗する±0を超えてきます。

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振り返りを通じて、生徒は「自分が新たにできるようになったこと」 が何かを認識し、それを蓄積していく中で、苦手意識が自己効力感に上書きされ、やがて得意意識に転じていくのだと思われます。

目標理解が十分なクラス(上位25%)は、振り返りが一定以上の値となるエリアにしか存在しません。「授業を通じて目指すところは、生徒自身の振り返りによってのみ認識させることができる」と考えることで、この解析結果にも説明がつきます。

まさに、「振り返りを経てこそ次への課題形成」ではないでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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