教科学習指導の効果を高める土台

授業を通して各教科固有の知識・技能を学んでいく土台となるのが、様々な場面を通じて生徒が獲得する「学習方策」 であり、学びを後押しするエネルギーが、生徒自身が見つけた「学ぶことへの自分の理由」 です。

これらをできるだけ早い時期に作り上げることができれば、その後の学習は、その土台に立つことで効率を高め、学力形成を加速することも期待できるのではないでしょうか。


❏ 目標状態を明示できてこそ、学習方策の獲得が進む

様々な教科を学ぶ中、教材で与えられたものから必要な情報を拾い出し、整理し、構造化して、理解や意見を形成し、言語/非言語による表現を与えることを生徒は「経験」 しながら、その方法・スキルを身につけていきます。

以下のようなことができるようになっていないと、生徒は自力で学びを進めることができず、教えられるのを待つ状態を抜け出せません。学びに躓くことも多くなり、理解の形成にブレーキが掛かります。
  • 読んだり聞いたりしながら必要な情報を正しく拾い上げられる。(資料を読んでプリントの空所を埋められる、など)

  • 拾い上げた情報を、相互の関係性を捉えて、正しく構造化できる。(表組、アウトライン化などで整理できる。図に描き起こし、式に変換できるなど)

  • ポイントとなる箇所を見つけ、妥当性のある問いや仮説を立てることができる。(疑問を具体化し、解決すべき課題として認識できる、など)
しかし、そんな場面を経験しても、目指している状態を先生、生徒の双方が明確にイメージしていなかったら、漫然と時間を過ごすことになりかねません。

きちんと目標状態を示した上で、自己評価を行わせ、必要なフィードバックを与えることでこそ、学習者として成長・進歩していくと考えれば、行動評価の指標をルーブリックなどを用いて示す必要があるはずです。

 ■ルーブリック評価の作成と運用


❏ 協働場面でのふるまいを学ばせるにも、目標と規準を

また、相互啓発を働かせたり、互恵でコミュニティを結んだり、協働的・対話的な学習を進める上では、
  • 他の生徒の意見や答えの良い点、悪い点を合理的に捉えた上で、より良い考えに発展させられる。

  • 他者の考えに耳を傾け、且つ自ら積極的に発言し、チームでの目標達成に貢献しようとしている。
といったスキル・姿勢も必要ですよね。

学習に必要な、方策・姿勢のいずれにおいても、学び方における守破離 を、教える側は常に意識しておきたいものです。

段階的に目指す「到達状態をイメージした指導を展開していきましょう。


❏ 探究を通じた進路意識の形成が、学ぶ意欲を作り出す

何かを学びたい、より深く・広く知り、学んだことを通じて何かを成し遂げたいという気持ちが、学ぶ意欲の根底です。指示されたことをこなしているだけのルーチンに、そうした意欲は生まれません。

探究を通じて興味を深め、その先に広がる世界をイメージできるような学びのプログラムが必要ということです。

興味・関心を持つきっかけも、その後の展開を着実なものにしないと、それに閉じた体験となってしまいます。体験を通じて見出した興味を、調べ学習・課題研究等を通じて深化させる中で、
  1. 物事を深く・正しく知る方策を学ばせる
  2. チームで課題に取り組む協働の喜びを知らしめる
  3. そこで必要となる姿勢・スキルの獲得を促す
  4. 学んだことを通じ自分が社会とどんな接点を持ち得るか考えさせる
こうした場を、総体として備えたプログラムを学校が用意できるかどうかが問われます。総合的な学習の時間が、高校では「総合的な探究の時間」 に名称変更されるという方針は、このような考え方に立脚したものではないでしょうか。

 ■進路希望を作る指導[進路意識形成]
 ■総合的な探究の時間
 ■探究を軸に教科の学びをつなぐ
 ■考えさせ表現させた先に~当事者としての覚悟と行動

学習方策を育むのは、自教科の学習を通じでだけではありません。特に高い次元での学びには、課題研究や探求型学習の経験を通じて得るものが、大きな部分を占めるのではないでしょうか。


❏ 互恵意識が学習方策の不足を補い、対話的な学びを作る

「深い学び」「主体的な学び」「対話的な学び」 もまた、これからますます強く求められるもの。

深く学ぶには、その入り口で躓いているわけには行きません。学び合い・教え合いで個々の生徒の学習方策や理解力の不足を補完する必要があります。

また、主体的な学びは、多様なものに触れて自己を相対化して自分がなすべきことが何かを判断できることがその前提。対話的な学びは、個の限界を集団知で超えていくことを目指すものです。

これらを実現していくためには、生徒同士が互恵意識で結ばれた「学びのコミュニティ」 を形成しておく必要があります。

 ■互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ
 ■学力の三要素とは~もう一度考えてみました


❏ 進路希望を叶える学力形成に向けた目標達成管理

当たり前ですが、進路希望を作ったらそれを実現させなければなりません。思いを形にするには、大学などで研究を進める必要があり、その入り口ではじかれてしまっては…。

着実に学力形成を図るには、ゴールに至るプロセスを明確に描き、中間検証を重ねる必要があるのは言うまでもないこと。

 ■教科学習指導における数値目標のあり方

中間検証を行うからこそ、効果的な指導法を抽出して、共有・継承し、さらにブラッシュアップが重ねられます。指導法の優劣を主観で議論している場合ではありません。エビデンスに基づき、先生方の集団知をもってより良い方法を見出していくべきです。

 ■新たな取り組みを始めるときの鉄則
 ■指導案の優劣を論じるときも

当然ながら、定期考査の妥当性を不断の努力で高めていくことも不可欠です。また、せっかくの考査も答案返却後の指導が間違え直しだけでは意義は薄まります。明確な意図を込めて指導に当たる必要があろうかと存じます。

 ■考査問題の妥当性評価
 ■考査問題の改善が授業も変える
 ■模試や考査の事後学習~間違え直しだけでは不十分



教科学習指導の効果を高め、その成果を着実にするには、確固たる教える技術が不可欠ですが、周辺にも整えなければならないことは少なくありません。

むしろ、こうした環境整備をどれだけ進められるかが、教員個人の技術を超えた教育成果を得る上で、大きな意味を持ちそうです。

また、高大接続改革では「思考力」「表現力」 にこれまで以上に重きが置かれることになります。「思考させる授業」、「表現力を高める指導」 にも十分な関心を向けておく必要があるのは言うまでもありません。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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