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zoom RSS 目標理解と活用機会を整える授業デザイン

<<   作成日時 : 2016/08/04 10:15   >>

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生徒が学習目標を正しく認識し、習ったことを課題解決に用いる機会が整えられていることで、生徒は学びの効果(=学力の向上や自分の成長)を実感し、これに十分な活動性が加われば学習効果がより確実になるのは別稿「活動性と学びの成果を繋ぐ鍵〜課題を通じた目標理解」でデータを用いてお示しした通りです。

話し方や板書、説明の組み立てなどの「確実な伝達」のためのスキルを磨くことはもちろん大切です。なにしろ、理解できないことには、できるようになる見込みは立ちません。

しかしながら、目標理解と活用機会をきちんと整える「授業デザイン」がなければ、せっかく身につけた伝達スキルも活かせないことは、当ブログでご紹介した様々なデータが示唆しています。


❏ 導入フェイズで問いを示し、仮の答えを作らせる

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新しい概念を導入し、知識を与え、体系化を図る前(=教え切ってしまう前)に、本時の学習目標を代表する問い(=学びを経て解を導くべき課題、導入設問)を与えてしまう、というのがここでの肝です。

問いを与えたら、手持ちの知識で「仮の答え」を作らせてみましょう。

答えを作ろうとする中で、わからないことの所在に気づかせ、疑問で頭を満たすことで、問題意識を刺激でき、学ぶことへの自分の理由も生まれますので、これまで以上に積極的な学習参加も期待できます。

答えが一つに決まらない問い、賛否が分かれるイシューを扱う場合なら、問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)に書いた通り、プレ討論を挟むことで問題点の所在に気付かせましょう。


❏ 生徒は、解くべき課題を通じて学習目標を理解する

生徒は、獲得した知識を活用して解決すべき課題が与えられてこそ学習目標を把握できるようです。

画像
箱の上端は第3四分位数(上位25%)、下端が第1四分位数(下位25%)を表します。
グレーの濃淡の境界が中央値です。※いずれもクラス単位の集計値に基づきます。
ひげの長さはIQRの1.5倍を上限とし、外れ値はひげの外に「×」で表示いたしました。

しかしながら、学習内容のすべてを先生が教えてから、解くべき課題を示すという従来の手順のままでは、先生の話を聞いている間、生徒は学びのゴールをイメージできないでいるかもしれません。

学びの本題に入る前に、問いを示しておくことが重要です。


❏ 課題解決に必要な知識は、調べ/尋ねさせる

問題意識を刺激し、学習目標を認識させたら、いよいよ学びの本番ですが、ここでも「話を聞かせて理解させる」という方法は必ずしも効率的でありません。

話を聞くより、自分で読んだ方が単位時間当たりの獲得情報は多い傾向がありますし、返り読みもできればマークアップもできることは、利点として決して小さくないはずです。

ラーニング・ピラミッドでも、聞くだけだと5%の定着率が、読めば2倍の10%。定着の向上も期待できるのではないでしょうか。

教科書や副教材は、基本的に「読めばわかる」ように書かれています。参照型教材を徹底して使い倒すなかで、調べる力や不明解消に向かす姿勢も養っていきましょう。

もし、わからないことがあっても、生徒同士で尋ね合ったり、教え合ったりすれば、たいていの不明は解消できるはず。

生徒だけではこなせないところこそが先生の出番です。できることはどんどんやらせる〜生徒の邪魔をしないよう、じっと我慢することも大切です。


❏ 学び終えて作り直した答えとの差分が「学びの成果」

最初に作った「仮の答え」と、先生の話を聞き、自分で調べ、友達と相談するなど、ひと通りの学びを経た後に作り直した「より良い答え」との差分は、まさにその日の学びの成果です。

この違いを認識する機会を持つことで、生徒は「新たにできるようなったこと」「学びを通じた自分の成長」を実感しますし、達成感や自己効力感が得られます。

達成感や自己効力感を得ることは快体験です。それを繰り返したいという欲求が生まれ、次に向けた学習意欲に転じます。

しかしながら、その差分に満足しているだけでは、更なる一歩を踏み出せません。振り返りを通して「より良くなるためにどうするべきか」を考えさせ、次に向けた課題形成を図らせましょう。

 ■ 勉強を好きにさせる学ばせ方


❏ 自分の答えを評価し、次に向けた課題形成を図る

友達の答案と見比べたり、採点基準に照らして自己添削してみたりすることで、足りなかったものに気づくことが、次に向けた課題形成のチャンスになります。

初期の段階では、答案を比較したり採点基準に照らしてみても、自分の答案を客観的に評価するのは、中々ハードルの高いものです。

答案の相対化の力を養っていくには、黒板を使った公開添削などの「支援」が必要です。

ポイントになるところを問い掛けながら、見るべき点を焦点化し、なぜ良いのか/悪いのかを言語化していく過程であり、表現力を高める指導の中でも欠かせないステップとお考え下さい。


❏ 課題解決で形成した理解を軸に、知識の拡充&体系化

課題解決を通じて、理解の軸ができても、周辺知識は十分ではありません。獲得した知識や理解は、その課題に直接関係する部分とその近隣に限られますので、まだ触れていない事柄が周辺には沢山残っています。

ここまでの学びで形成した「コアとなる理解」 を 軸にした知識の拡充や体系化を図る工程に進みましょう。知識の体系化には先生が行う講義、板書などが効果的であることは言うまでもありません。

理解の軸ができて、体系化のフレームが調えば、あとは個々の知識を参照して補っていくのは生徒にもできること。

教科書や副教材などを参照させながら、サブノート式のプリントで穴埋めをさせるなどのタスクを与えてみてください。

ただし、最大公約数的に全員に同じ範囲を求めるのでは合理性を欠きます。知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせてという発想で臨みましょう。


❏ まずは単元の山場に絞って新しいデザインを試してみる

本稿でご提案させていただいた授業デザインを、毎回の授業で取り入れていくには、時間的に余裕がないという場合は、単元ごとの要所に絞って行うこともできるはずです。

まずは、試しにやってみて、手応えを確かめながら進めましょう。生徒の反応の想像以上に大きな変化に驚かれることもあるはずです。

最初のうち、新しい方法に生徒も戸惑うでしょうし、先生側での不慣れもあるかもしれません。

試してみて思った結果が出なかったとしても、すぐにあきらめず、幾度かは繰り返していきましょう。生徒も慣れ、先生の側でも進め方に習熟するなかで、狙った効果が徐々に表れてくるはずです。

また、新たな取り組みを始めるときの鉄則として、新たな手法を取り入れる前と後とで、結果学力、学ぶ姿勢、学習方策などにどのような差が生じているか、その効果を確かめるようにしましょう。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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