教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場

生徒が主体的に意欲をもって学習に取り組むのは、「学ぶことへの自分の理由」 を持ったとき。将来の夢があってその実現を図りたいという気持ちも理由の一つでしょうが、そうした外にあるものとは別に、「興味という形で内から生まれる学びへの欲求」 こそが大切にすべきものではないでしょうか。

どこかで学んだことに刺激を受けて生まれた、「どうなっているのかもっと知りたい」「この先にはもっと面白いことがありそうだ」 という気持ちが、学びを続ける原動力になると考えます。


❏ 将来の夢が生まれるまで待っていられない

以前の記事「進路希望を作る指導[進路意識形成]」でも書きましたが、将来つきたいと思う職業などの目標を設定して、その実現を目指して今なすべきことを考えさせ頑張らせるという戦略には、いろんな落とし穴がありそうです。

その最たるものは、将来の夢が決まるまで頑張りを引き出せず、夢が生まれるのを待つ間に、叶えられそうな夢がどんどん減っていくというジレンマです。

様々なものにチャレンジしてこそ能力も視野も広がり、偶然との出会いが待っているわけで、夢を見つけたときに手が届くかどうかは、それまでの頑張り次第。でも、夢が見つからなければ…、というのでは堂々巡りです。


❏ 夢を叶えた先に、次がイメージできるか

将来の夢は、大きいほど叶えるのに時間がかかり、実現までの長きにわたってモチベーションを維持するのに、「夢」 という燃料だけでは事足りないこともあるでしょう。

また、夢が叶った時に、その先が見えているかどうかはまた別の話です。せっかく頑張って大学に進んだり、仕事に就いたりしても、そこで燃え尽きては何にもなりません。

ある職業に憧れ、頑張って実現しても理想と現実のはざまに苦しむこともあるでしょうし、その職業が人工頭脳やロボットに取って代わられたり、社会の変化の中で憧れにたる「輝き」 を保っているとは限りませんよね。

工夫と努力を重ねて達成した中に興味が生まれるということを、どこかで学習してきたかどうかが、手に入れた居場所の中で新たな目標を見出せるかどうかの分水嶺になりそうです。


❏ アメとムチも、外におかれた理由

頑張ったらご褒美で報いるというアメでつる作戦も、効果の持続性には疑いがあり、頼り過ぎては危険です。

短期的な効果はあげても、アメを手に入れるという欲求を土台にしていますから、アメが与えられなくなったり、褒美になれて「当たり前」 になったら、インセンティブとして働かなくなるのも当然でしょう。

逆に、頑張らないと罰(再テストや補習)が待っているよというムチも同様です。

ムチを避けたいという学びと直接関係のない理由ですから、卒業してしまいムチを振る人がいなくなった瞬間に学ぶ理由も失われます。


❏ 努力して達成した中に見出す興味

これに対して、「面白い」 という純粋な理由は、ちょっと違った働き方をします。

面白いと思って人の話を聞いたり、本を読んだりした場合には、その中に新しい別の興味との接点が見つかります。この繰り返しの中で、興味が更新され、学ぶ理由が次々に生まれることになります。

また、工夫や努力を経て何かを成し遂げたことは、充足感や達成感を伴う快体験であり、それを繰り返したいという欲求が生まれます。

チャレンジングなことに挑み頑張ることが快体験をもたらすということを、体験を通じて学習した生徒と、学習していない生徒とでは行動様式に大きな違いが生じるのは当然です。


❏ 教室の中での体験を通じて学ばせられること

外にある理由と違い、努力して達成した中に見出す興味は、日々更新され、常に新しく生まれ得るもの。

「学ぶことへの自分の理由」 として、生徒に抱かせるべきものとして相応しいのはこちらの方でしょう。

教室の中での学びを通じて新たな興味が自分の中に生まれる瞬間をどれだけ経験させられるかが、私たちに問われていることなのではないでしょうか。
  • 振り返りを通じた課題形成と次に向けた自分の目標を設定させること
  • 適切な課題を用意し、その達成を可能にする授業をデザインすること
  • 生徒自身に問いを立てさせ、それを解決する方法を考えさせること
先生方が普段の授業で行っていること自体が、達成感を与え、新たなモチベーションを抱かせる「体験学習」 なのかもしれません。


❏ 教える側の“論理”は、生徒にとって他人事

静かに話を聞かせたい、反応よく行動させたいというのは、教える側の気持ちではあるかもしれませんが、「主体的、意欲的に学ぶ姿勢を学習させる」 ことには必ずしもならないように思えます。

生徒の中には、先生の期待に応えたいという気持ちがどこかにあり、それが却ってマイナスに作用することもありそうです。

「学ぶことへの自分の理由」 とは別に、どうふるまうべきか空気を読んでくれたところで、そこに得るものはなさそうです。

私語や居眠り、内職、いたずら…。

目にすれば不愉快ですし、ガッカリもします。でも、そうした行動にも何らかの理由があるもの。

表層に現れた行動を改めさせるだけでなく、根っこの原因を考えるべきでしょう。「自らの中に興味が生まれる瞬間を体験させる」 ことにこそ力を入れるべきだと考えます。
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■ご参考記事:

 
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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