夏休みの過ごさせ方を振り返って、来期の指導設計を

昨日のブログで、「自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?」と題して、夏休み中の宿題の代表格(?)である自由研究、課題研究について考えてみました。各教科で課した宿題・課題も含めて、所期の成果が得られたかどうか、2学期の初めにはきちんと検証をしたいもの。夏休み中の講習・補習も同様です。

夏の間に行った指導/取り組ませた課題の成果を検証しないことには、2学期からの指導の起点を正しく定めることもできませんし、来年度の指導計画を「今年の課題と成果を活かしたもの」にできなくなります。

2016/08/18 に公開した記事を再アップデートしました。
(前回更新:2018/08/28)

❏ 所期の成果は得られたか~効果測定はしっかりと

以前の記事「補習・講習の目的再確認~どんな変化を期待するのか」では、すべての補習・講習に共通する目的として、
 「学力の向上」
 「学習能力の向上(方策の獲得)」
 「学習意欲の向上」
を挙げ、志望校や志望学部などを同じくする生徒を対象とした場合は、
 「生徒が互いに知恵を出し合い、支え合うコミュニティの形成」
も目的の一つになり得ると申し上げました。

夏を終えた時点で「今期の講習・補習が、それぞれの観点でどのくらいの効果が得られたか」を検証する方法(いつ、どんな指標を使って)は実際の指導を始める前に(=今)ある程度まで考えておきたいところ。

評価の観点とそれぞれの評価規準を決めることは、到達目標を具体的に設定することにほかならず、このフェイズを飛ばしては、指導の目標もあいまいなままということです。指導方法も目的との整合性が十分に取れないものになる可能性があります。


❏ 休み明けに予定されている模試の答案には注目

おそらくは、先生方の意欲的な指導によって、多くの生徒が所期の目標を達成し、達成感を得るとともに自分の成長を感じ取ってくれるものと思いますが、それでも、次の指導の起点を定め、来年度に繋ぐ「指導の継続的改善」を図るために、検証はきちんとやるべきです。

夏休み明けに模擬試験などが用意されているなら、そこでの成績は検証の指標として外せませんが、漫然と「偏差値が上がった、下がった」 ではなく、講座を設置しようと考えたときに伸ばそうと思った学力要素に着目して答案をよく見るべきだと思います。

答案用紙を業者に返送する前に、注目する問題に絞り、ざっと目を通しておくだけでも得るものは小さくないはずです。そもそも教室での指導は模試成績が戻ってくるのを待ってくれません。

夏の指導の成果は、夏が終わるまでにきちんと確かめておきましょう。

なお、別稿「効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)」でも書きましたが、補習・講習に参加した生徒とそれ以外の生徒を分けてみたときに、答案から推し量れる「成長」の度合いにどんな差が見て取れるかにも注意を向けましょう。

宿題や課題でも同様ですが、効果を測る時には、積極的に取り組んだ/利用した生徒、利用したが積極性や主体性に欠けた生徒、利用しなかった生徒でデータ(標本)を分けないと、正しいところはつかめません。

生徒全体を母集団としたときに、明確な変化が現れていなかったとしても、積極的に利用した生徒には効果(前後での違い)が見られるなら、指導は有効なはず。逆に、全体では変化があっても、積極的利用群と非利用群とで有意差がなければ、他の要因が寄与したのかもしれません。


❏ 2学期の学びに足りないものを整えるのが夏の指導

休み明け(=2学期)の教室で生徒の学びを観察すれば、「夏が終わるまでにやらせておくべきだったこと」が浮かんでくるはずです。

既習内容の定着だけでなく、学び方(学習方策)や学ぶ意欲(学ぶことへの自分の理由)が期待される水準に達しているかどうか、足りないものがないか、生徒一人ひとりを観察しましょう。観察のためには、活動させる必要があるのは言うまでもありません。

 ■ 活動させるのは観察のため~「観察の窓」を開く

2学期の開始に際して不足が認められた事柄については、その補完策を次年度の指導設計に組み込む必要があるのは言うまでもありません。同じ轍は踏まないようにしたいものです。1学期の指導でカバーするのが筋ですが、どうしても足りない部分は夏の指導で補完を図ります。

夏の勉強は、受験が目の前に迫る高3生の冬休みとは違います。「仕上げ」よりも「次への接続」を優先すべきでしょう。繰り返しになりますが、2学期の学習を円滑で効果的なものにすることが夏の主眼です。


❏ 宿題の履行確認に「宿題テスト」?

夏休み中の宿題に取り組んだ成果を、「宿題テスト」で試しているケースも多いようですが、ここでも注意すべき点が一つあります。

まずは、そのテストが「宿題を通じて伸ばそうとした力」を測定できるような設問になっているかどうかです。「次のセリフはどの登場人物のものか」といった設問では、生徒が新たに獲得した能力は測れません。

宿題で課したのとまったく同じ問題を出題したところで、「やったかどうか(何を学習したか)」を測るのが精一杯ではないでしょうか。

生徒が「新たにできるようになったこと」がどれだけ増えたかを測るには、宿題を通じて学んだことを別の文脈で試すことが必要ですが、宿題テストの多くはそうした内容・作りになっていないように感じます。

PISA以降、パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルに学力観の転換が進んでいます。指定された宿題をこなしたかどうか確かめるだけの「宿題テスト」は、この流れの中に意義を見出しにくそうです。

宿題は既に与えてしまいましたが、効果測定のために実施するテストの問題なら、これからでもまだ手を入れられる/作り直せるはずです。

 ■ 指導目標と指導方法が変わったら定期考査の問題も


❏ 履行確認を超えて、生徒の相互啓発の場を作る

何らかの形で履行確認をしなければならないとしても、ただでさえ不足しがちな授業時間の中で、宿題テストの実施枠をこじ開けるのもあまり生産的とは言えないように思います。

そもそも、テストを課さないと確実な履行が期待できないのは、課題の中身に問題がある(=魅力がない)からではないでしょうか。

どうしても取り組んでもらう必要がある宿題なら、夏休みなどの管理が行き届きにくいときにやらせるのではなく、日々の授業の中で進行管理を行いながら進めた方が良いと思います。

日々の多忙を離れ、じっくり取り組んでもらいたいことこそが、夏休みに課すべき課題です。成果を測るのにテストは馴染まず、履行率アップは別の方法を考える必要がありますが、その一つが、取り組みの成果を発表する場を設けることです。

発表が控えているとなれば、意欲的な取り組みを促せますし、展示や発表の場では、互いの成果に触れた生徒同士の相互啓発も期待できます。

読書体験を積ませたいならビブリオバトルも良いでしょうし、自由/課題研究なら成果発表会やポスターセッションを相対化と振り返りの機会とすることになるはずです。(cf. 探究活動や課題研究と成果発表会


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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