正答率の予測ができれば授業設計も最適化

正答率を正しく予想できるということは、問題が要求する様々な学力に照らした生徒の状況把握が正確に行えているということです。指導は、目標学力と生徒の現況学力との差を埋めるために行うこと。…となれば、正答率の予測精度は指導設計の妥当性に直結することになりますよね。

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❏ まずは模試問題を使って力試し

正答率の予測力を確かめるには、公開模試の問題が好適な材料のひとつです。

模擬試験の資材が到着すると実施前に問題に目を通されていると思います。その際に「これは」 と思う良問を見つけたら、その問題に対する自分が担当しているクラスの生徒たちの正答率を予測してみましょう。

100点分のフルセットで予想をしても、様々な要素が入り混じるため、正答率予測の練習にはあまりお勧めできません。お手間も増えるばかりです。

思考や表現の要素を多く含む問題に絞って行うのがお奨めです。作業に慣れて負担を感じなくなって来たら、徐々に対象とする問題の割合を高めていけば良いと思います。


❏ 問題を構成する学力要素に照らして

正答率を予測するといっても、大学入試センター試験の平均点予想とは違い、問題の難易度を評価するだけではありません。

知識や手順への習熟、解法立案の発想など、問題が求めているものを学力要素に分けてみて、教えている生徒のそれぞれの充足度・定着度を予測することが肝要です。

クラス全体や上位群を形成する生徒が、問題の要求のそれぞれをどのくらい満たせるか、教室での顔を思い浮かべながら考えてみましょう。

「問題を構成している学力要素に照らした生徒の学力評価を行う」 と言い換えることも出来そうです。


❏ 正確な正答率予測は授業設計の妥当性を支える

模試の結果が戻ってきたら、予測しておいたものと照らし合わせてみましょう。

大きくずれがあるようなら、「生徒ができるようになっていること」 の見極めが十分でなかったということです。

生徒学力の見極めが誤っていたら、授業での目標設定や主眼の置き方にも好ましくない影響が出て当然です。

生徒がすでにできるようになっていたことを重ねていたり、見落としているところを素通りしていたりするかもしれません。

時には教科の先生方で集まってワイワイやってみるのも良いかも。予測精度の高い先生が普段の授業でどんな観察を心がけているかを聞けば、何かのヒントも得られそうです。


❏ 知識・技能と思考・判断・表現などを切り分けて

先ほどさらっと済ませましたが、問題を構成している学力要素の捉え方も大切です。

単に知識の有無を試すだけの問題なら、「教えたかどうか+生徒が覚えたかどうか」 で正答率が決まりますし、生徒の側でも不正解の問題を覚えれば「次に向けた備えもOK」 です。

でも、思考力や表現力を求める問題はそう簡単に片付けられませんよね。

普段の小テストと模擬試験の成績に必ずしも高い相関がないことには、覚えた後に忘れているということだけでなく、小テストが思考・表現要素を十分に含んでいないという「構造的な理由」 もあるはずです。

題意からどのようにポイントを拾い上げるか、何に着目してどんな知識を用いるかを判断するなど、様々な思考が正解までのプロセスに含まれます。

思考過程そのものを、客観的に捉える習慣がないと、問題を構成する要素を個々に切り出せず、同時に生徒の学力も把握できていないということです。


❏ 授業中の観察機会が作れていない可能性も

普段の授業でも、「単元内容を教え切って、生徒に覚えさせる」 ことに終始していたら、思考過程とそこに含まれる要素に照らした観察は行われていないことになります。

観察・評価の精度を高めるトレーニングのチャンスを持てていないということですね。以前の記事でも書きましたが、「活動させるのは観察のため」 です。

目標理解と活用機会を整える授業デザイン」 でご提案した通り、ターゲットとなる課題を与えて生徒自身に解決に挑ませることが必要です。



喩えが微妙で恐縮ですが…。本格的な料理を学びに来た生徒に、簡単な料理のレシピを渡して自分で考えた通りに作らせてみると、基本的な知識をどこまで備えているか、どのくらい手が動かせるかを確認できますよね。

その上で、初心者向けから、初級者用、中級・上級者用の課題からどれを与えるかを選択することもできれば、中途の説明をどこまで端折ってよいかの判断もつきます。

また、最初の課題に取り組ませる中、グループ内に「できる生徒」 を見つけておけば、先生役を引き受けさせることもできるはずです。上の記事の中でご紹介している、仮の答えを作らせるという局面と同じではないでしょうか。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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